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「もっくり」「ほんのき」

「もっくり」「ほんのき」とは湧き水のことである。白山の伏流水が地中を長年かけて流れてきて金石で自噴する。
金石街道は金沢市有数の自噴地帯であり、昔は海水浴や相撲大会見物に歩いて金石に向かう人々は道の脇からもくもくと出続ける冷たい湧き水で一息ついた。金石街道の終点、今の金石分団の隣にあった水場に枡がきってあって来た人々の喉を潤したという。

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松任方面からの往来の入り口は旧冬瓜町(金石西1丁目の一部)の久昌庵付近である。そこに水場があり、本堂前の「南無阿弥陀仏」の石碑には「諸人供養水」の文字も見える。隣に茶屋もあったそうで、はるばるやってきた旅人を大いに労ったことであろう。

共同の水場は上から下に三層に枡が分かれており、一番上の枡の水は飲料用、その水が流れる真ん中の枡は野菜や果物を冷やす層、一番下は洗濯する層として湧水を余すことなく利用した。
夏に冷やすものといえばキュウリやトマトなどの夏野菜に、マクワウリに青リンゴが定番であった。青リンゴは最近すっかり見なくなったが、昔本龍寺で行われていた盆踊りや海水浴のお供として親しまれ、塩をつけたり海水につけたりして酸味の強い味を楽しんだ。

魚屋の中には、木で作った生け簀があるところもあり”もっくりの”清らかな水にウナギやドジョウ、鯉やフナなどを泳がせ、注文を受けタレを漬けて焼いて色付けにして販売した。ともすれば泥臭いこれらの川魚は古老に言わせると「もっくりのおかげで、なんも臭くなかった。」とのことである。

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工業用水として大量の地下水が使われるようになって、枯れてしまったところもあるが、現在も要川周辺や船見団地を中心に冷たくて浄らかな水がもくもくと湧き続けている。

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