見出し画像

塩ダラのザンで三平汁

金沢の港町で北前船の寄港地として栄えた金石には30を超える「塩もんや」があった。「塩もん」とは魚介や海藻などを干物や塩漬け・ぬか漬けなどにしたもので、それを製造・販売するのが「塩もんや」である。イワシやニシンなどの青魚は”こんか漬け”と金石で呼ぶぬか漬けにする。

フグは余すことなく活用し、身や”ほうら”と呼ばれる顎に猛毒の卵巣などはこんか漬けにする。卵巣の毒は地域の伝統の製法で作ると失われるが、その仕組みはハッキリとしないらしい。ふぐの卵巣のぬか漬けは全国でもこの金石と隣の大野、白山市の美川ぐらいでしか製造していないそうである。
こんか漬けの際に余る腹の部分は乾燥させてふぐみみに。剥いだ皮は洗濯板に張り付けてこれも干す。皮を干す光景は金石の春の風物詩だった。
白子は干物にしていたという証言もあるが塩もんとしてはあまり使われなかったらしい。両手に余るほどの立派な白子は近所におすそ分けされ、各家庭でアツアツの醤油の澄まし汁などにして消費された。


またタラの皮や骨を除いて塩漬けして干した身などは、水で戻しておろし生姜に醤油をかけてひやひやっと食べるのが夏の定番だったが、その取り除いた皮や骨などのザン(この辺りの方言で魚のアラのこと)を塩にして干したものが格安で販売されて庶民の胃袋を大いに満足させた。骨といっても薄っすら身もある。また骨から良いだしが出るので甘辛く煮たり、軽く炙っておつゆにして食べた。今回はその中で三平汁を紹介する。材料が手に入らないので塩ダラの骨をストックしておいてそれを使用してみた。

画像1

塩ダラのザンの三平汁
①塩ダラのザンはオーブンで薄っすら焼き目をつける(上記写真)。
②水にとって塩出しをする。半日~1日ほど。塩を全部抜くと味も薄くなるので少し塩が残る程度に。
③ジャガイモは1センチ四方のサイコロ切りにして水にさらす。
④鍋におつゆにするぐらいの水を入れ、塩出しした塩ダラのザンと切ったジャガイモを入れて水から煮ていく。
⑤ジャガイモが軟らかくなったところで醤油で味付けして完成。お好みで刻みネギや唐辛子をかけて食べる。

タラのザンのおつゆ

この塩ダラのザンという食材の話は金石の中の一部のエリア(旧町名でいうと冬瓜町、達磨町あたり)でしか聞かれなかった。他のエリアの人に聞いても「そんなもん知らん」といった具合だ。
金石の中はさらに44もの町会に分かれるが各々文化も違えばアイデンティティーもそれぞれなのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?