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金沢×祭×北前船=

5月15,16日は大野湊神社の祭りである。神事能が奉納されるなど文化が感じられるこの祭は、昭和の半ばごろまでは金石往還にぼんぼりが並び、若い女の子が振袖を着て参詣してそれは華やかなものだったという。金沢市街からもたくさんの参詣があり、大野湊神社がある寺中への道は大行列で足の踏み場をなかった。夜中には金石街道の入り口である中橋あたりに大勢集まって夜を明かしたとあり大変な狂騒だったのだろう。

金沢近郊で祭の料理と言えば押し寿司だ。専用の木枠に魚と酢飯の層を3~4段に重ねて作るが層の間の仕切りに薄板や笹、白板昆布を使うのが一般的だが、出汁昆布を使うのが金石流で他地域の人はその肉厚の存在感に驚く。


出汁昆布を使うのは北前船の影響が考えられる。北前船の寄港地にはおぼろ昆布や昆布巻き、昆布締めといった昆布を使った食文化が発展した。もちろん金石も例外ではない。明治の中ごろ北前船が衰退したあとも、金石の材木商は青森の三厩などからヒバ材とともに特上の昆布を貨物列車で取り寄せ(当時は金沢駅から金石に鉄道が走っていた。貨物列車の引き込み線があった現金石バスターミナルから金石中あたりまでは材木商の倉庫が並んでいた)、蔵に保管し自家用にも贈答品として用いたという。また昆布を扱う店も多数あり、職人が昆布をシュッシュッと削っておぼろ昆布にしていく姿が見られた。


現在では乾物を扱う店も少なくなり、材木・昆布を北海道・東北から直接買い付けることもほとんど無くなったが、北前船で栄えた町の面影は、今なお脈々と受け継がれている料理にその名残をとどめている。

”押し寿司金石流”
作り方
魚の準備
①魚はサバ・イワシ・小鯛など好みのものを使う。三枚におろして身が隠れるくらい強く塩をして一晩置く。
②翌日①を酢に漬けて塩抜きする。塩抜きしたあとの漬け汁は残しておく。
③よく水気を切り、一口大に切っておく。
酢飯の準備
①ごはんを一升硬めに炊く。
②酢と塩と砂糖を合わせて①と混ぜ酢飯を用意する。
その他準備
①昆布や紺ノリを酢で戻しておく。
②木枠に魚を塩抜きにしたとき出た漬け汁を塗る。以降木枠が乾いたと感じるごとにマメに塗っておくと米が引っ付かない。

①木枠に収まるように昆布を敷く。
②魚の切り身を皮を下に並べていく。
③酢飯を2~3センチ盛る。酢飯にも木枠同様、塩抜きの漬け汁を塗りまぶすと魚のうま味がどんどん酢飯に染みていく。
④戻した紺ノリを散らす。
⑤以降①から繰り返し3~4層にして重石をかけて半日おけば完成!

*層ごとに魚を変えると色んな味が楽しめる。魚以外に甘くどく炊いたシイタケやタケノコを使ったりと各家庭ごとの味がある。
*生姜の千切り、金柑、レモン、桜エビ、5月だと山椒の新芽なども好みで使用する。

以下美味しさのポイント
1.昆布に糸目はつけるな。肉厚で糸引くぐらいのものを使う。
2.塩抜きしたときの戻し汁を何度でも塗りつけろ。その数だけうま味がアップする。

3.押しすぎるな。米がまずくなる。強すぎず弱すぎず。
4.1~3までと全く逆のやり方の人もいる。結局は自分の好みを追求すること。


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