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【藝術日記2023】「紙博」&「山田文具店」「Old Goods」レビュー

先日藝術日記のレビューが公開された「クラフトピクニック」の関連記事である。クラフトピクニックと同日(10月14日、15日)に、松本PARCOでは「紙博 in 松本 vol.2」の開催、「山田文具店」「Old Goods」の限定出店があった。
参加してみると、思いがけずクラフトの第一歩を体験することができた。

紙博in 松本 vol.2

まず訪れたのが、松本PARCO6Fでの「紙博」である。

文具メーカー、印刷会社、イラストレーターなど、“紙“の魅力を最大限に引き出す珠玉の紙もの作家たちの作品が集う「紙博」。会場に並ぶのは、マステやシール、はんこに活版作品、かわいいイラストがデザインされた紙雑貨や文房具など、紙もの好きの心を掴む作品・商品の数々。

紙博HP(https://kamihaku.jp/202310matsumoto/)

エスカレーターを昇って少しずつ見えてきた6階の会場は、驚くほど熱気で溢れていた。20代から40代くらいの女性が多かったように思う。

「紙とイラストを愛する人のためのフェスティバル」と銘打たれたイベントだ。私は訪れるまで、手帳やノートや本など、すでに「完成された」製品が色々並んでいるのだろうとなんとなく想像していた。実際所狭しとならんだ紙製品を、人々の目線を辿るようにひとつひとつ見ていくと、買ってすぐに日用品として使えるようなグッズも多く販売されており、見たことない素敵なデザインの手帳を使う自分を想像させて、わくわくした。
ただし、醍醐味はそれだけにとどまらず、種類豊富で売り手の個性が出たシールやポストカード、マスキングテープは、買ってから何かを書き足し、組み合わせ、貼り合わせ、形にされることを前提としている。異なる出展者のもとを巡り、自分だけの組み合わせで紙ものを選び取る一瞬一瞬のひらめきやときめきを、無制限に楽しめる喜びが、会場全体を包んでいた。その場で自分のものを自分らしくアレンジできるブースもあり、例えば、「はんこ押し放題スポット」では、自分の手帳にさまざまなはんこを好きなだけ押してみることができた。
自分だけの形に作ることを思う存分楽しむ。そんな空気を珍しく思うのは、私自身が、買った物をお店で包んでもらうことや、既に包まれたプレゼントを購入することが多く、あまり自分で作ったり包装したりすることに触れてこなかったからかもしれない。それでも共に訪れていた友人につられて買った、ウサギと卵とクローバーが描かれた北欧のイースターを思わせる包装紙をじっくりと眺めてみる。誰にどんなものを入れて贈ろうか、自然とイメージが浮かんで、いつのまにか顔がにやけてしまう。贈った相手の笑顔を思うと肩の力が抜けて、自分で包んでみたら楽しいかもしれない、と気楽に思えた。自分で包んでみる、形にしてみることのワクワク感は、ひとつの素材を、とりあえず、手にしてみると、とめどなくあふれてくるものだと知った。

「山田文具店」「Old Goods」

松本PARCOの1階ではその日、雑貨セレクトショップ「山田文具店」と古道具や生活雑貨を扱う「Old Goods」もひとつのブースとして限定OPENしていた。

山田文具店:https://yamadastationery.jp/
Old Goods:https://old-goods.jp/

「紙博」の余韻に浸りながら立ち寄ると、子どもの頃使ったような文具や、それをアレンジしたような味のある日用品、畳の部屋に似合う大小様々の古道具が販売されている。「紙博」や他の店舗とはまた違う、そのショップだけのゆったりとした時間が流れていた。
商品を見ながらも一息つける雰囲気が心地よかったからか、ぼんやりと、祖父の誕生日が近いことを思い出した。ちょうど目に入ったのは、メジロのような小鳥の絵が描かれた、醤油を入れるのにちょうどよい小皿で、皿によって鳥の色が違う。祖母と色違いにしてプレゼントしようと手に取る。ちょうど、「紙博」で買った包装紙は、祖父母の好みそうな柄だった。お店で包んでもらったものではなく、包装紙で自分が包んだものを初めて、祖父母にプレゼントしてみようと心が躍った。「紙博」で紙を買った時には想像していなかった、中に包むもの、包んで贈る相手が思いがけず立ち現れたのに驚いた。
一枚の紙をどのように使うのか。何をどうやって包むのか。自分で吟味することの楽しさを感じることができた。包装をクラフトとは呼ばないかもしれないけれど、なんとなく一枚の包装紙を手に取って、不格好でも自分で包んでみようと決めたことは、クラフトすることによって生まれる試行錯誤の楽しさを、感じさせてくれたように思う。(小古井遥香)



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