【藝術日記2023】クラフトピクニックレビュー
10月15日日曜日、クラフトピクニックにてワークショップに参加するべくあがたの森公園に足を踏み入れた。クラフトピクニックはさまざまな工房・作家の方々の展示や実演、来場者向けのワークショップを主としたイベントであり、14日から15日にかけて開催された。
会場を訪れた私は、まずぐるりと道沿いに広場を一周してみた。クラフトピクニックを訪れるのは初めてだったため、どのような雰囲気でそれが行われているのかを見て回りたかったのである。広場の道に沿う形でたくさんのテントが立ち並んでおり、ワークショップが行われていたり作品がずらりと並んでいたりした。また日曜日であるためか親子連れの参加者が多く、会場のあちこちから子どもたちの笑い声が聞こえていた。時に真剣に、時に笑い合いつつ制作に取り組む雰囲気がそれぞれの場所から感じられた。朝まで降っていた雨によって水気を含んだ空気が、ひんやりと涼しかった。
はじめに訪れたのは、「こぶたの森」の「木のくるまの組立」ワークショップであった。ショップのテントの正面には大きな机があり、上に木製の小さな車やからくりたちが並んでいた。ころりとした丸みのある木の車は、触れてみるとすべすべしていた。車輪は赤や黄、青色に塗られていて、目にも鮮やかだ。こちらのワークショップでは、このような木製の車をいくつかのデザインの中から選び、自分の手で組み立てることができた。
大学生になってしばらく工作から離れていた私は、久々のボンドや金槌の感触に四苦八苦しつつも組立を楽しんだ。細かい部分にボンドを塗りつけたり、乾くまで接着面を強く押さえつけたりするのは一体何年ぶりだっただろうか。微かな記憶に思いを馳せながらも、手元の車に集中して組み立てていった。皆さんと天気や学校などの話をしつつ、また車を組み立てる子どもたちの声を聞きながら流れる時間は、とても緩やかだった。特に印象に残っているのは、工房の方が車輪の木目や僅かな色合いの違いを一緒に悩み続けてくださった時間である。結局前輪は赤、後輪を黄色のものにして、木目の雰囲気は全て分かりやすく異なるものを選んだ。
完成した車は両手の平に収まる程度の大きさで、眺めているとミニカーを走らせて遊んでいた子どもの頃が何となく思い出された。スポーツカー風の直線的なデザインのものを選んでいたが、手の中にある車からは確かに木の温もりが感じられた。そしてなんとテントの裏には木の板でできた簡易的な斜面があり、車の試走をすることができた。
早速わくわくしながら車を転がしてみると、僅かにその進路を左に偏らせながらも、つっかえることなくスムーズに走って行った。その姿に何とも言えない嬉しさと愛しさを感じ、もう3回は車を板の上から滑らせた。
次に訪れたのは、「佐藤装身具」の「シルバーリング制作!1日先着200名!」ワークショップであった。ショップからしばらく離れた先まで響いていた心地よい金属の音に導かれてきたのだが、そこで先着200名という言葉につい惹かれてしまったのは許していただきたいと思う。こちらでは、自分でリングの太さやサイズを選んでシルバーリングを作ることができた。
このタイミングで友人と合流した私は、それぞれ違った太さのリングを作ってみることに決めた。私が中くらいの太さとしたら、友人は小といった具合である。金属製の棒に予め成形されたリングを通し、金槌で叩いて任意のサイズまで広げていく。この制作にはつちめ模様という金属工芸の伝統技法が使われている。専用の金槌をリングの表面に打ち付けることで、槌の跡を施すものである。金槌を何度も打ち続ける作業は、単調に鳴り響く音も相まって、心が落ち着いてくるようなものであった。下にその時の動画を添付しているので、ぜひご覧いただければと思う。
そして数分の後、リングは完成した。表面がでこぼこしたややマットな質感のリングは、日に照らされてじんわりと優しい光を放っていた。一方友人の作ったリングは、同じようにでこぼこの跡が付いているものの、私のリングよりも輝きが強かった。これは、私とは金槌の向きを変えて叩き、つやを出していたためである。きらりと光る華奢なシルバーリングが、彼女のきれいな手によく似合っていた。
最後に訪れたのは、「KAERU」の「カリンバ作りワークショップ」であった。カリンバとは、箱や板などに固定された細い金属の棒を指で弾いて演奏する楽器である。楽器を自分の手で作るとはなんと夢のあることだろうと思った私は、ロマンを抱きつつショップのテントを覗いた。
ワークショップの内容は、既にキットにしてあるカリンバを組み立てるという気軽なものであった。金属を差し込んだり、ペンチでねじったり、ビーズを通したりと、普段の生活ではしないような手作業に黙々と取り組むのが新鮮だった。特に印象に残っているのは、細い金属の棒(ピアノで例えるならば鍵盤)を差し込み、固定する作業である。固定した段階では、その音階は全くもってバラバラであった。もちろんその状態でも、自由な楽器であるカリンバとしての姿に不足はない。しかし、せっかくなので「ドレミファソラシド」の音が出るように調整していただくことになった。少し弾いては位置を整え、また弾いては整えとしていくうちに、みるみると音が並んでいく様子が面白かった。あっという間に聞き知った音階に整い、非常に驚いたのを覚えている。試しに自分でも弾いてみると、明るく、優しい音が響いた。
カリンバはアフリカ生まれの楽器であるが、私が作ったものはどちらかと言うとアジア寄りのカリンバだそうだ。カリンバについて、アフリカでは太鼓のような響き・リズムを重視するのに対し、アジアではメロディーを重視する。試しにいくつかの種類のカリンバを触らせていただいたのだが、私がより惹かれたのはメロディー的な要素の強いカリンバのほうであった。明らかにアジア寄りのものを耳触り良く感じた自分に、思いがけず自分が育ってきた環境や文化の影響を感じさせられた。また、中には箱状のカリンバの中に小石が入っているものや、貝殻が付いているものもあった。これらによって音の響きが異なってくるのもまた面白い。そして、私が家に帰ってから、カリンバに夢中になって2時間ほど演奏し続けたことは言うまでもない。
さて、これは個人的な考えなのだが、普段そこまで物作りと関わりを持たない人・物作りが特別の趣味でない人にとって、ワークショップというのはハードルが高いものではないだろうか。挑戦してみようにも、細かく調べて予約をするのは少し面倒だと感じたり、「普段ものを作らない自分がこのような場に参加して良いのか」という思いが頭をよぎったりするかもしれない。しかし、このクラフトピクニックはそんなハードルを下げてくれるものではないかと感じる。広場を訪れればたくさんのテントが立ち並び、人々が思い思いに作ったり、見たり、話したりしている。その光景は、「自分もここにいて良いのだ」というような安心感を心に抱かせてくれる気がする。そして気になるものを見つけたら、(予約が必要な場合もあるが)たいていその場でワークショップに申し込むことができる。ふらっと訪れ、ふらっと覗くことのできるこのイベントは、とても価値あるものだと感じる。さらに、自分の手で作ったものが、家に帰ってからも自分と共にいてくれる。目に見える形で体験が残ることで、新たな挑戦に一歩踏み出そうという気持ちにさせてくれるのではないか。今回クラフトピクニックを訪れてみて、とても良い体験をすることができた。このレビューを読んでくださっている方々も、ぜひ次のクラフトピクニックを訪れてみてほしい。(神戸美咲)
2023年もあがたの森公園で開催されたクラフトピクニックに行ってきました。前日までは天気があまり芳しくない予報だったのですが、当日は雨が降ることもなく快晴の中、あがたの森公園を巡ることが出来ました。
園内は沢山の人であふれ、道に沿って並べられたテントの中で子供たちが夢中になってモノづくりを楽しんでいました。ろくろで陶芸作品を作ったり、金属を加工してアクセサリーを作ったりと、作家さんたちと子供たちがとても近い距離でお話していたことがとても印象的でした。
そんな幾つも立ち並んだ工芸体験の中で、私と友人は佐川とも子さんの「羊毛フェルトで作る刺繍枠クラフト」を行いました。それは丸い小さな生地の中にフェルトを使ってオリジナルのデザインを差し込みながら刺繍するというものでした。選んだのは見本として並べられた作品がとてもかわいらしく、また不器用な自分でも簡単にできそうという理由からでした。
しかし机に座って案内を受けいざ縫い付けてみようとしてみると、これがとても繊細な作業で、自分のイメージしていた形を縫い付けるのにとても苦労しました。鳥の目や輪郭を上手く表現しようとしてもどうしても思っている形と違う形になってしまいました。
そんなこんなで小一時間ほどお互い無言で集中しながら針を刺し続けて何とか作品が完成しました。出来上がったものを渡すと木枠にはめ、立てかけて飾れるように木の板に固定してくださいました。不器用ながらもなんとか鳥の形を保った刺繍は大事な思い出になりました。
当日は、時間もなく、体験ができたのはこの1つだけだったのですが、いろいろな体験の場を見て回るだけでもとても楽しく素敵な一日でした。(後藤湧力)
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