お気に入りの作品—folded lines-6

 私のお気に入りの作品は『folded lines-6』です。2021年6月20日の信濃毎日新聞〈思索のノート〉の挿絵として制作されました。
 様々な長さの四色の線が折れ曲がりながら繋がっていて、その背景は塗った際の筆跡を見て取れるまだらなピンク色です。

 この色は何の色に見えるでしょうか。夕方の空でしょうか、暖かな春の大気でしょうか、せわしい年末の街中でしょうか。勢いのある背景に、折れ曲がった複数の線が私には昼間の道を行き交う人々の動線の様に見えました。それぞれの目的地に向かって脇目も振らず、足早に歩いて行きます。猫背気味の姿勢から少し顔を上げると静かで賑やかな街の様子が目に入るかもしれません。

 常田さんの作品は身近なものの形から生まれていることが多いそうです。作品を見て、自分の生活に戻ってから「あ、あの作品はこの瞬間だったのかな」と感じることがあります。他の方のコラムにもありましたが、人によって様々な見方ができる作品です。きっと、作品とあなたの生活の光景が結びつく楽しい鑑賞体験が待っています。(T.R)

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