[工芸の五月]「3人展 植物譚」ギャラリー石榴

「工芸の五月」イヴェントガイドに掲載されていた山岸紗綾さんの素敵な作品画像に惹かれて、ギャラリー石榴(せきりゅう)にでかけました。同ギャラリーは1995年のオープン。松本市内でコンテンポラリーアートを丁寧に扱ってくださる数少ないギャラリーのひとつです。「植物譚」と名付けられた今回の展示は三人展。福井良之助(1923-1986)の版画は比較的馴染みのあるものですが、そこにアストリッド・コッペ(1974-)のドローイングと、山岸紗綾(1981-)の立体が加わって、どんな空間になるかと興味津々でしたが、会場では作品のコントラストとヴァリエーションのうちにすぐれた調和も感じられて、とても魅力的な展示になっていました。
通常であれば、福井の版の密度とコッペの線・色の軽やかさ、そして山岸の工芸的な親密さは、かなり別物に見えるでしょう。しかし、本展では植物への形態学的な関心が三者の世界をよくつないでいました。また、展示そのものも、福井作品の線的な比較的均質な配置がコッペのコーナーでは大きくリズミカルに開かれ、その流れが空間中央の山岸の場所へと定まるというように、ひとつの動性のうちに見事にまとめられていました。あたかも蕾から開花、実りまでの発生論を螺旋状に描くかのようで、三人展の必然を強く感じたところです。
コンパクトな空間ですが、個々の作品の質に加えて、展示の妙もしっかり感じていただける内容です。クラフトフェアの会場、あがたの森からも近いギャラリーですので、一歩足を伸ばしていただければと思います。5月29日まで。(T.K.)

https://g-sekiryu.com/exhibitions/


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