大人がセミの取り合いをしているところを見た

家から駅まで15分歩いたらもうこれだけで熱中症になるのではないかと思うくらい暑すぎる。
冷房車よ、早く来い!
やっとの思いで列車に乗った。

ちょうどよく涼しい。
しばらくぼーっとXに投稿されていくみんなのポストでも読もう。
そう思った瞬間、視界の右側になんかいる。
セミではないか。
ひぇ!
セミと認識した瞬間、自分の手で自分の右肩を払った。

ぽとん。
車内の床にセミが落ちた。

セミは、ただただひっくり返ってジタバタしている。

持ち込んだのは、他でもない、私に違いない。

ジタバタしている蝉を見ながら、少しばかりの責任を感じていた。
ただ、私は虫が大の苦手なので、退治役などとてもできない。
「すみません」みたいな雰囲気を出しながらジーッとジタバタしている蝉を見つめることしかできなかった。

もう忘れよう、第一、私が持ち込んだのかわからないではないか、もともと車内には蝉がいて、私が乗り込んだ後に、私の肩に止まった可能性だって否定できないのだから、もう忘れよう。
なんて事を考えていたら、次の駅に着いた。
ドアが開いた。

その瞬間である。

私の右側にぽとんと落ちている蝉に向かって素早く手を伸ばす男女が2人。

「あっっ、あっ」

となっていた。
よくある、本屋での運命の出会いと状況ほぼ同じなのではないか。
結局、女性が蝉を持ち、車内に連れ出した。

(多分)わたしのせいで、蝉の取り合いが起きてしまいました。

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