「緊縛」をめぐる条例と考察
艶縛画報社の活動と特に関連の深い条例として、「静岡県青少年のための良好な環境整備に関する条例」、いわゆる青少年条例があります。
活動に関連するものを抜粋して整理します。
条例における各「定義」
まず条例における各「定義」を確認します。第3条です。
■青少年:満18歳に達するまでの者(婚姻によつて成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。
■興行:映画、演劇、音楽、演芸、紙芝居、見せ物その他これらに類するものを公衆に見せ、又は聴かせることをいう。
■図書類:書籍、雑誌その他の刊行物、絵画、写真、映写用の映画フィルム及びスライドフィルム並びにビデオディスク、録画テープ、録音盤、録音テープ、フロッピーディスク、シー・ディー・ロム、ディー・ブイ・ディーその他の電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつては認識することができない方法をいう。)による記録に係る記録媒体をいう。
■広告物:屋外又は屋内で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されるもの並びにこれらに類するものをいう。
つまり本条例では、「青少年」への「興行」「図書類」「広告物」が対象となります。
興行・図書類
次に規定を見ていきましょう。特に関連が深いものは、第9条と第12条、別表です。
第9条に「有害興行」「有害図書類」の定義があります。
(有害興行を行う興行場への入場の制限及び有害図書類の販売等の禁止)
第9条 知事は、興行又は図書類の内容が著しく性的感情を刺激し、著しく粗暴性若しくは残虐性を助長し、著しく犯罪若しくは自殺を誘発し、若しくは助長し、又は著しく道義心を傷つけるため、これを青少年に観覧させ、又は閲覧させ、視聴させ、若しくは聴取させることがその健全な育成を阻害すると認めるときは、当該興行又は図書類を有害な興行又は有害な図書類として指定することができる。
―有害図書類
4 第1項の規定にかかわらず、次に掲げるものは、有害な図書類とする。
とあり、前記(第1項)に加えて「有害図書類」にはさらに定義があります。該当するのは「書籍」又は「雑誌」です。
4 (1) 書籍又は雑誌であつて、別表に掲げる姿態若しくは行為を、被写体とした写真(陰部を覆い、ぼかし、又は塗りつぶしているものを含む。以下同じ。)若しくはその複製物又は描写した絵を掲載するページ(表紙を含む。以下この号において同じ。)の数が、20ページ以上であるもの又は当該書籍若しくは雑誌のページの総数(第7項又は第10条の7第1項若しくは第2項の規定による規制を免れる目的で、既に発行されている書籍又は雑誌に他の印刷物又は白紙を合わせて編てつしていると認められる場合は、当該印刷物又は白紙のページの数を除くものとする。)の5分の1以上を占めるもの。
「別表に掲げる姿態若しくは行為」とは下記。
別表(第9条、第12条の2関係)
(追加〔平成8年条例39号〕)
(1) 姿態※
全裸、半裸又はこれらに近い状態での卑わい※な姿態で、次のいずれかに該当するもの
ア 女性の大たい部(もも)を開いた姿態
イ 陰部、でん部(お尻)又は乳房を誇示した姿態
ウ 男女の愛ぶの姿態
エ 自慰の姿態
オ 女性の排せつの姿態
カ 緊縛の姿態
(2) 行為
性交又は性交類似行為で、次のいずれかに該当するもの
ア 男女の性交又はこれを連想させる行為
イ ごうかんその他のりよう辱行為
ウ 同性間の行為
エ 変態性欲に基づく行為
※姿態:(動きを含む)すがた。かたち。からだつき。(広辞苑)
※卑わい:いやしくてみだらなこと。下品でけがらわしいこと。(広辞苑)
以上、感覚によって判断されるとみられるところが多々あるように思いますが、明確に記載があるものは「全裸、半裸又はこれらに近い状態での卑わいな」「緊縛の姿態」です。該当するのは「図書」のうち「書籍」と「雑誌」です。書籍と雑誌の違いは定期刊行物かどうか。艶縛画報社としては、写真集『艶縛画報』が書籍として該当するものと思います。
―有害興行
5 興行場を経営する者又は興行を主催する者(以下「興行場経営者等」という。)は、第1項の規定により指定された有害な興行(以下「有害興行」という。)を行つている場所に青少年を入場させてはならない。
また、「興行」に関しては姿態について直接的な明示がありませんが、9条冒頭で「興行又は図書類」と並列されてるので、図書類の規定が準用されるのではないかと思います。艶縛画報社では、6月25日~27日に行うイベント「緊縛茶論」のうち、6月26日に行うショー(昼の部・夜の部)については、18歳未満参加不可としています。
有害広告
「有害広告物」の定義を確認します。
該当するのは「屋外又は屋内で公衆に表示された広告物」です。
(有害広告物の表示の禁止)
第12条 知事は、屋外又は屋内で公衆に表示された広告物の内容が著しく性的感情を刺激し、著しく粗暴性若しくは残虐性を助長し、又は著しく道義心を傷つけるため、青少年の健全な育成を阻害すると認めるときは、当該内容の広告物を有害な広告物として指定することができる。
4 広告主又は広告物の管理者は、第1項の規定により指定された有害な広告物(以下「有害広告物」という。)を公衆に表示してはならない。
有害広告ビラ(チラシ・フライヤー)
「有害広告ビラ」の定義です。
該当するのは「図書類又はがん具類等の販売又は貸付けを業とする※者」が、「青少年に対し、図書類又はがん具類等に係る広告を目的とするビラその他これに類するもの」です。
(有害広告ビラの頒布の制限)
第12条の2 図書類又はがん具類等の販売又は貸付けを業とする者は、青少年に対し、図書類又はがん具類等に係る広告を目的とするビラその他これに類するものであつて、別表に掲げる姿態若しくは行為を被写体とした写真又はその複製物を掲載するもの(以下「有害広告ビラ」という。)を頒布し、又は頒布させてはならない。
※「業とする」とは、一般に、反復継続し、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度のものをいうとされる
「緊縛の姿態」について
ちなみに「緊縛の姿態」という文言が入っている条例は、こちらで調べることができます。
条例Webアーカイブデータベース「緊縛の姿態」
疑問点
個人的に、別表についてはなかなか突っ込みどころがあるように思います。
(1) 姿態
ア 女性の大たい部を開いた姿態
オ 女性の排せつの姿態
→男性はいいのか?
ウ 男女の愛ぶの姿態
→男女限定なのね?
(2) 行為
ア 男女の性交又はこれを連想させる行為
→男女限定なのね?
エ 変態性欲に基づく行為
→そもそも「変態」の定義って…?
※岡山県については、岡山県広報へのリンクに、『「女性が」を削り、同号ロ中「女性が」を削. り、「胸部」を「乳房」に改め、同号二中「男女間の」を削り、同号ホ中「女性の」. を削り、同号へ中「緊縛姿態」を「緊縛の姿態」に改め』とありました。
何が「変態」行為であるか、判断基準をお聞きしたいですね。その他、条文が現状に追い付いていない感が否めないように思います。
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