あいだに17ツバメ観察日記4

2月12日 イケメン一本釣り?

この日の月(つき)は休日だったことを利用して、諸々の用事を済ませて喫茶店で軽食とコーヒーを頼んだところだった。

そこに着信、例の店舗からだった。
期待して待ってはいたものの、月は飛び上がる勢いで喫茶店の外に出て電話に出た。

事務的な声とトーンの待ちかねたイケメン店長からの電話で間違いなかった。
心臓が大きく脈打つ感じを抑えて、月もまた淡々と折り返しへの礼を事務的に行い、会話を開始した。
まずは、用意してあった表向きの用事(仕様上の質問や後日必要になるであろう対応の仕方などの質問)を済ませる。

「……と、ここまでが表向きの用ですが、今回のお電話の本当の要件は、お約束したデートの件ですw」
ついに月は切り込んだ。
「ご迷惑でないならば、個人的にご連絡を頂きたいです。私の電話番号からLINE追加が自動でできるようになっております。」
そして、手段を伝えた。
仕事中の相手は、ただ相槌を打てばいいように、何も返答する必要がないよう最低限の配慮はしたつもりだ。
「ご連絡、お待ちしておりますね」

月にできることはした、後は相手次第になった。
ただの社交辞令や、端から興味がないのなら、連絡は来ないだろう。
それならここまでだし、それでもまぁ……

来た!!
うそ!ほんと!?うわぁ!

電話を切ったすぐ直後、四の五の考える間もなくだった。

月は飛び上がってガッツポーズをした。
まさに送り返したスタンプと同じだった。

この日の月は、文字通り舞い上がった。
浮つく、というように、実際に10cmくらいは宙に浮いていただろう。

ノリでデート誘ったら、イケメンが釣れた!
この後、プロフィール画像を何度見返し、何度うっとりとため息を吐くことになるのか。
メッセージの数回のラリーだけで、この日の月が無自覚のままどれほどニコニコ、いやニヤニヤしていたか。
浮かれて浮ついた今この時を迎えられただけでも、ナンパをした甲斐があったと月は思った。

誤解のないように言っておくが、月は別に面食いではないし、普段から若いイケメンに声をかけるわけでもない。
むしろ、普段であれば避けて通る。
若いイケメンは観賞用の美術品と同じくらいの認識だった。

しかし、ここ数日の月にとっては、月が見つけてナンパしたイケメンは、無条件で月の正義となっていた。

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