VRChatにおける日本人ユーザーの声に関する調査と考察(1)

 はじめまして、風見鼎です。

 4/15~5/1にかけて『VRChat民の声に関する現況調査』を実施いたしました。この記事はそれに対する分析と考察に関して記載しています。
分析に関しましては専門分野ではない為、曖昧になってしまっているところがありますがご了承ください。また、Twitter経由でアンケートの回答者を募った為、回答に若干の偏りがございます。

今回行ったアンケートの結果は
  ・動機と内容、目的及び調査方法
  ・VRChatをプレイする環境とアンケートによって見えた問題点
  ・ボイスチェンジャーと両声類について
  ・アンケート全体を通した結論と考察
の項目に分けて記載していきます。
 本記事では概要と注目すべき点に重点を置いてまとめ、各項目における相関と外国人ユーザーの現況に関しては機会があれば別の記事で記載します。

動機と内容、目的及び調査方法

 まずはじめに、この調査の動機と内容、目的についてです。
 この調査を行うきっかけとなったのはVRC内での集会や会話において""に関する話題をよく耳にする為です。とりわけ日本のVRCユーザーにおいてはボイスチェンジャーや両生類といった、プレイしているユーザー自身と異なる性別の声でプレイされている方が多くいらっしゃいます。
その中でもよく耳にする話題としては『ボイスチェンジャーの構成と設定』『声がどんな感じで聞こえているか』『声の出し方』です。そこで、VRCをプレイする環境と声にはどのような関係があるのか、またユーザー自身とその周辺においてどのような事を思っているのか疑問に思い調査を行いました。また、上記内容に加え、VRChatをプレイするにあたって声に関する問題や課題についても調査を行いました。

続いて調査方法です。
 今回調査を行うにあたりグーグルフォームを用いたアンケートを作成し、VRChatをプレイするユーザーに回答していただきました。日本人向けのアンケートではユーザーが
  ・VRChatをプレイする環境
  ・自身の声に関する現況
  ・ボイスチェンジャーや両声類に関する現況
  ・周囲のプレイヤーに関する現況
の調査を行いました。
外国人向けのアンケートにおいては日本人向けのアンケートから項目を絞った中で
  ・VRChatをプレイする環境
  ・自身の声に関する現況
  ・周囲のプレイヤーに関する現況
  ・外国から見た日本の印象
について調査を行いました。
 また、VRChat内において声に関心のある方を募り、インタビューを兼ねて現況調査を実施しました。

 今回の調査において得られた回答(サンプル数)は以下のとおりです。
日本語圏ユーザーからの回答:527
韓国語圏ユーザーからの回答:51
中国語圏ユーザーからの回答:7
英語圏ユーザーからの回答:5

VRChatをプレイする環境

 調査を行うにあたり、日本人ユーザーの現況とどのような環境でVRChatをプレイしているのか確認しました。
まずはじめに、今回のアンケートの回答者の男女年齢比です。

男女比

 次に、VRChatをプレイする際にVR機器を使用しているのかどうか、使用している場合は何を使用しているのかです。

VR機器を使用していますか?

画像3

今回のアンケートにおいて回答者が比較的ヘビーユーザー寄りであった為、VR機器の使用率が高いですがVRChat内を覗いているとVisitorやNewUserにおいてはデスクトップモード率が高く感じられます。
VR機器の使用者においては比較的手の届きやすいHTC VIVE CEやOculusRiftシリーズの使用率が高い傾向にあるとともに、VRをより楽しもうとする傾向が強いためかVIVE ProやVALVE INDEXの使用率も比較的高い傾向にあります。

続いてメインで使用しているアバターについてです。

画像4

 多くのユーザーが女性アバターでプレイをしている事がわかります。その理由としては可愛いものが好き、可愛くなりたいという感情によるものが大きいと考えられます。また、この現状によってBOOTH等の市場でも女性アバターが多くなる傾向となり、更に加速させている事も考えられます。

 続いてVRChatをプレイする際に使っている声についてです。
まとめたアンケート結果は次のようになっています。

どのような声でVRChatをプレイされていますか?

男性女性ともに地声でプレイしている方が約3/4を締めていますが男性においてはボイスチェンジャーや自身の声で女声を出されてる方が多くいます。
地声でプレイする方で異性の声でプレイしてみたいかという問いに対しては男女ともに半数以上居る事がわかりました。

異性の声でプレイしてみたいと思いますか?

アンケートから見えた問題点

 本アンケートを行った中で2つの大きな問題が目立つ結果となりました。
 1つ目の大きな問題としてはVRChatをプレイするユーザーの90%近くが相手の声が聞き取りづらいと感じる事があるという点です。アンケート結果に対する対策については現状を把握したあとにまとめて記述しています。

VRChat内で会話をする中で相手の声が聞き取りづらい事がありますか?

何故声が聞き取りづらいかという設問に対し得られた回答は次のとおりとなっています。

相手の声が聞き取りづらい原因

 アンケート結果から「雑音」「音量」「声質」による聞き取りづらさが大半を占めている事がわかります。
雑音については
  ・マイクのゲインを上げている事によるノイズ
  ・体の動作に伴う物音
  ・ゲーム側の音声の回り込み
など生活環境によるものや機器によるものが多くの原因と考えられます。
 機器の問題としてよく話に出てくるものとしては、VIVE CEのマイクの音質の悪さやOculusRiftの熱問題による音の破綻、OculusQuestのゲーム側の音声の回り込みが大きい等があると思います。

次に「相手から自分の声が聞きづらいと言われた」割合です。

VRChat内で会話をする中で声が聞き取りづらいと言われる事はありますか?

アンケート結果として4割弱の人が聞き取りづらいと言われた事があるという事がわかりました。
原因については

聞き取りづらいと言われた原因

聞き取りにくい原因と同様に「声が小さい」「雑音が混じっている」が大きな要因となっています。

 以上2つのアンケートから見える問題点として"9割近い人が声が聞き取りづらいと思っているにも関わらず、その事を伝えられているのが4割弱にとどまっている"という事です。
また、アンケートで得られた原因から根本的な原因を考えていくと
声が小さい
  ・マイクの入力音量が小さい
  ・VRC上でのマイクアイコンが小さい音量でも反応してしまうので音が
   小さい事が分かりづらい
雑音が混じっている
  ・マイクのゲインを大きく上げている
  ・周囲に大きな音がする物がある
  ・体の動きによってマイクにものがぶつかっている
声がこもっている、かすれている
  ・マイクの性能が悪い
  ・声が出しづらい環境にいる
  ・ボイスチェンジャーの設定があっていない
などが上げらます。

 2つ目の問題点としては特にボイスチェンジャーを使っている人に見られますが、"男性で女性ボイスを使っている人の声が高くて聞き取りづらい"という点です。この問題に関してはこの後のボイスチェンジャーと両声類の項目で記述します。

ボイスチェンジャーと両声類

 アンケートをとったユーザーのうち約22%のユーザーが異性の声でプレイしているという結果になっています。
 まずはじめに異性の声でプレイするユーザーに対して違和感を感じているかどうかです。

異性の声でプレイする人に違和感を感じますか?

アンケート結果は上記の用になっています。
 8割強のユーザーはあまり違和感を感じておらず異性の声でプレイするユーザーに対して「声がかわいい」「技術的にすごいと感じる」「アバターに合わせて努力をしていて良い」といった声が見られます。
 対して2割弱の違和感を感じるユーザーからは「中途半端なクオリティに対して不快感を覚える」「会話がしづらい」「無理なボイチェンによって高音が強かったり声がかすれていて耳に障る」といった声があげられています。

 VRChatをプレイするにあたって"何故異性の声を使っているのか"という問に対しては「アバターに声を合わせたい」「女性アバターから男性の声がするのが嫌だから」といった声が多く見られました。アバターと声を合わせる事によって没入感を高めたいという傾向が強く見られると思います。
 次に多く見られた傾向としては「地声がもともと高かったため」「自身の声があまり好きでない」「(身バレ防止を含め)自身の声を隠したい」といった地声に起因するものがありました。
 全体として異性の声を使用する方は現実とバーチャルの住み分けを行いたいと思っているユーザーが多い傾向にあるのではないかと思います。


 アンケートにおける2割弱の違和感に対して「会話がしづらい」等の大きな原因は声が高すぎる事に起因するものが多くあるように感じられます。
この事に対し実際にVRChat内でボイチェンを使っている人の声を周波数解析させて頂いたところ、傾向としてボイチェン後の声の基音(声の中で一番主となる音)が400Hz近い事がわかりました。対してVRChat上で女性の方の声を周波数解析させて頂いたところ基音は260Hz~330Hz程度でした。また、男性が裏声でボイチェンのみを通している場合、声の倍音やフォルマントが足りずこもり気味な声となってるパターンが一定数ありました。
 アバターに合わせ声を高めに設定をする際に気をつけなければいけない事としては、ピッチシフトによって上げる量はできるだけ抑え、本人の可能な範囲でなるべく高く声を出す事です。ボイチェン後の周波数と元の声の周波数の乖離をなるべく小さくする事で声が聞きやすくなり、会話がしにくいという状況を改善する事に繋がります。ただし、男性においては「ピッチシフトなしだとおじさんが出やすくなる」といった意見もあったため、若干のピッチシフトはしつつも聞き取りづらくない点を探すほうが良いかもしれません。
 倍音やフォルマントに関してはエンハンサー等を用いることである程度補完をする事が可能ですが、設定が複雑になってきますので詳細は割愛させていただきます。詳細を知りたい方は「VST プラグイン エンハンサー」等で検索してみてください。

考察

VRChatは声でコミュニケーションを取る部分がかなり大きいVRSNSです。
本アンケートを通した中で各個人が改めて自身の声について見直す必要があると感じました。
まず、プレイするすべてのプレイヤーにおいて
  ・入力されてる声の音量が十分であるか
  ・会話をする上で妨げとなるレベルで雑音が混じってしまっていないか
の確認が必要であると思います。これを行うにあたってはフレンド同士でチェックする場を設ける事が必要となります。
ボイスチェンジャーを使用されている方に関しては
  ・無理に声を変える設定となってしまっていないか
  ・極端な高音になってしまっていないか
  ・自身の声の出し方はボイスチェンジャーを使う上で適切か
についても一度見直して見る必要があると思います。

 声が小さいという問題の調査を行う中で”VRChat上でマイクアイコンが反応しいるが実際の入力音量がかなり小さい”という問題点が浮上しました。
 VRC内でインタビューを行った際、各ユーザーにマイクアイコンが反応するギリギリの音量で喋ってもらったところ、複数人いる場所ではほぼ会話ができないレベルの音量となりました。この問題について話していたところmeronさんが下記のようなソフトを制作してくださいました。

 環境に依存するところもありすべての場合において正確に表示はできませんがWindowsがシステム上で認識している音量をプレイ中にオーバーレイ表示させる事ができます。オーバーレイによる表示と合わせて周囲の方に音量を確認してもらうことで音量に関する問題点を解決する一つの手段となるのではないでしょうか?

 次に雑音が大きいという問題に関してです。前に述べましたが"雑音"を分類すると
  ・マイクのゲインの上げすぎによるノイズ
  ・周囲の環境音によるノイズ
  ・マイクコード等が他のものに接触して出るノイズ
  ・VRChat側の音声の回り込み
  ・使用するマイクの性能によるもの
とざまざまな原因があります。
 マイクの性能の問題に関しては外部マイクを使用する方法が解決する手段となります。VIVE CEやVIVE ProにおいてはHMDに空きのUSB端子があるためUSB接続型のサウンドブラスターとマイクをHMDに装着してプレイする事も可能です。(Oculusに関しては自身が所持してないため割愛させてください)
 環境音や回り込みに関するノイズに関してはNVIDIA様よりRTX Voiceというソフトが提供されております。この記事を書いているタイミングではまだβ版ではありますがノイズ除去に関してかなり強力なツールとなっております。しかしながら、ノイズ除去にそこそこグラフィックボードのリソースを割くようなので、VRと併用しての使用はVRChat側の動作が重くなる可能性があるので注意して頂きたいです。デスクトップモードでの併用はそれなりのグラフィック性能があれば可能であると思います。特にデスクトップモードにおいては打鍵音がマイクに入り込みやすいため対策の一つの手段になり得ます。

所感

 このアンケートを通し、多くの方が声に対して様々な意見を持っている事が明確になりました。
 中でも相手に対し声が聞き取りづらい事が言いにくいといった点においては日本人特有の空気感といったものが感じられます。しかし、声を主体にコミュニケーションを取るSNSであるため、相手に対し正直に伝えるべき所は伝える事が必要だと思います。私自身、初心者の方を案内する際には声の大小程度ではありますがチュートリアルワールドの一連の説明+α程度でこの話題について説明しております。ひとりひとりの助言によってより快適なコミュニケーションに繋がっていければ幸いです。

謝辞
外国人向けのアンケートを作成するにあたり、翻訳にご協力くださったbd_さん,myzさん,Yamerundaさん,shine trickさん,アミヤ_リンさん,Nekosubsさんありがとうございました。


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