「大地の芸術祭」写真日記2日目

 2022年11月、大地の芸術祭の2日目。


 朝から宿の周りを散歩しました。こういう何気ない宿の周囲を散歩するのがとても好きです。観光地ではない、その土地の「日常」が少し垣間見えるような気がしますね。

 その後、支度をして3人で清津峡のトンネル「Tunnel of Light」へ。ここはツイートするのを忘れてたので写真なし(気が向いたら後で追加するかも)。

 その後少し移動して、「日本に向けて北を定めよ」。

 この作品は「ロンドンにある作家の自宅をもとに、実物大の構造だけ、方位を保ったまま妻有に移動させた」作品ということで、空間感覚をとても刺激されました。想像をすることによって、地球の大きさや、地球は丸いんだということを改めて実感をさせてくれる作品です。ロンドンとの距離の遠さも感じつつ、にも関わらずロンドンと新潟が空間的に繋がっているんだなということを同時に思います。
 どれも言葉にすると当たり前のことではありますが、ただの知識ではなく、「想像する」ことを通してそうしたことを改めて体感できる作品でした。

 それからこれも個人的にはぜひ見たかった作品、「たくさんの失われた窓のために」。

 まずタイトルが詩的で、とても惹かれました。
 かつて明治時代、新潟の人口は東京より多かったと言われるように、きっとこの辺りももっと賑わっていた時期があったことでしょう。先ほどの「日本に向けて北を定めよ」が空間的な想像力をかき立てる作品だったのに対して、「たくさんの失われた窓のために」は時間的な想像力をかき立てられます。かつて存在した家々の窓からは、どんな景色が見えていたのだろう、とか……。
 あとまた別の切り口で言えば、この作品はよく「大地の芸術祭」の写真や映像でも使われていて、いわばこの大地の芸術祭の「窓」のような役割をしているようにも見受けられます。おそらく制作当時はそれほど意図されてなかったのではないかと思いますが、そういう意味でも興味深い作品です。

 次に訪れたのが、ボルタンスキー「最後の教室」。
 クリスチャン・ボルタンスキーはこの大地の芸術祭に出展しているアーティストの中でも、というか現代アートの中でも僕が一番好きなアーティストで、「最後の教室」は大地の芸術祭で最も訪れたい作品でした。

 入ってすぐ、藁が敷き詰められた暗闇の中に扇風機で揺れ動く電灯の空間から、ボルタンスキーの世界が広がっていました。ここの照明のギミックがめちゃくちゃ素晴らしかったので、ぜひ生で体験してみてほしいです。
 全体的に生と死、「実存」を強く感じさせるような作品群は人を選ぶところがありますが、ボルタンスキーが亡くなった後も、こうして新潟・越後妻有の地にパーマネント作品として遺してくれているのは本当にありがたいことです。また次訪れるなら、ボルタンスキーが意図したであろう、夏のむわっとした空気のなかで散策してみたいですね(今回のように、少しひんやりした空気の中で歩いた3階も、「死」を感じさせるものがあって味わい深いものでしたが)

 その後、塩田千春さんの作品「家の記憶」を見て、小島家製菓店で名物の志んこ餅を購入。そこから近くの三省ハウスでレアンドロ・エルリッヒの「Lost Winter」を見てきました(このへん助手席で道案内をしてたらツイートするの忘れてました。とりあえずは写真なしで)。

 その後、美人林と「キョロロ」へ。このあたりから天気が少し怪しくなってきましたが、なんとか本格的に降り出す前に美人林で紅葉を見たり、森の中でボルタンスキーの「森の精」を見たり、キョロロの展望台へ登ったりと、一通り回ることができました。

 その後、午後からの方針について少しひと悶着ありつつ、とりあえず昼食へ。松代駅周辺にある目当てのお店がどこも開いていなかったので、道の駅にあるコンビニでお昼を軽く済ませます。
 雨も強くなってきたので、傘の準備をしてまつだいエリアを散策。「黄金の遊戯場」へと向かいました。

 一見何気ない民家のなかに広がる黄金の遊戯場、外観とのギャップが素晴らしく、また悪趣味のセンスがいい(?)とでも言うか、とても愉快な空間でした。雰囲気の良さだけでなく、スロットだったりレトロゲームだったり、あるいは将棋のようなボードゲームだったり、いたるところに実際に遊べるゲームが並んでいるのも楽しいですね。実際、一緒に訪れた人同士はもちろん、知らない人とも色々なコミュニケーションが生まれました。
 一番印象深かったのは、麻雀で遊んでいたら通りがかった女性に「カイジみたいでウケるー」って言われたことです(※カイジは麻雀マンガではありません)

 その後、まつだい農舞台の会場へ移動。天気と時間の都合上、いくつか見に行く予定だった作品を飛ばして、カバコフの作品だけ見に行きました。

 今年はこれだけカバコフの展示に力を入れてくれて、本当にありがたいですね。「人生のアーチ」を見ると、ソ連時代から西側での活動期間もずっと、カバコフにとって苦難の連続だったのだろうというのが伝わってきます。
 「10のアルバム」や「プロジェクト宮殿」などの作品を通して、今また「ソ連」という国やそこに住んでいた人々について改めて思いを馳せることも、改めて意義のあることなのだろうと思いますし、そういった想像力を喚起することもまたアートの重要な役割なのだろうと感じます。
 ソ連時代の検閲などの状況を想像すると、こうしていま「大地の芸術祭」という形でアーティストが作品を自由に発表できるという状況も決して当たり前ではないのでしょうし、カバコフさんから「俺には妻有がある」とまで言ってもらえるような場所が日本にあるというのは、日本人としても誇らしく思います。
 今年(2023年)、惜しくも亡くなられてしまいましたが、生きているうちにこうした大々的な展示が実現されてよかったと思いますし、これだけの規模の展示を実現してくれた関係者の方々にありがとうという気持ちでした。

 最後に農舞台の作品を色々見て、地元の人々による閉会式のリハーサルの様子もみて「グローバルなイベントでもありつつ、地域の人に支えられているイベントでもあるのだな」というのを改めて実感しました。

 暗くなってきたので、車に乗り込み関越道で群馬へ。最後に夕飯にお好み焼きを食べて解散。
 四国旅に続き、今回もとても楽しい二日間でした。


 おまけ、pogiさんによるおもしろ写真集。


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