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THE ART of the SPRINT : For Coach Tom Tellez and the Santa Monica Track Club Speed Demons, the Point Is Not Just Winning the Race, but Perfecting the Run. 訳⑧

どうもアクセルトラッククラブの草野です。前回に続き、敬称は記事に合わせて略させて頂きます、ご容赦ください。
原文は以下から↓ 

 スポーツカーが駐車場に滑り込み、カール・ルイスが中から飛び出してきた。どうやらまたもや遅刻らしい。
『到着したぞ!』
 サンタモニカ・シックスの中で最も年長で大胆なグランドマスターであることは間違いない。到着するなり幾つかの人と握手し、スリートーンのランニングシューズとタイトなハイウエストブルーのショーツを着て現れた。 髪の毛もなく肌だけが露出している半裸の彼は、ちょっと異世界のように見える。
『いい感じだよ』
と彼は言う。カイロプラクターに背中の圧迫感を治療してもらったそうだが、ルイスは何の問題もなく体を伸ばしながら続けた。
『そろそろステップアップする時期だと思う』

 ルイスの報告を聞いて、テレツは今日初めての笑顔を浮かべた。それからしばらくして2回目の笑顔を見せた。
『去年の東京での決勝だ』
と話し出した。カールが記録を更新した時のことだ。

それは2年に1度行われる世界選手権で昨年の8月のことだった。当時の優勝候補は世界記録保持者のバレルで、ルイスは彼に勝てないだろうと思われていた。しかしルイスは9.86で100mを制した。これは公式に認められた最速のタイムだった。
カールは美しいレースをした。彼は最後の5mまでリードを奪う事はなかったが、全く慌てていなかった。あんなに力強くフィニッシュした選手は見たことがない
彼は99%完璧だった。彼の唯一の問題は、いつものようにスタート地点にあった
とテレツは語った。

 ルイスが偉大であるように、彼が常にゆっくりと銃声に反応してきたことは周知の事実である。トップレベルの相手に対して、彼がフェーズ1やフェーズ2で優位に立つことはほとんどない。完璧主義者ではないコーチならば、ルイスが抜群の反応のスタートができるまで延々とスターターピストルを撃っていただろう。しかし、テレツはその代わりにフロントブロックを最も強く押し出して前に出るようにするなど、反応が遅れる代償としていくつかのテクニックを教え、彼の驚異的なストライドがあれば、レース序盤に遅れを取ることに対して何も心配はないと確信させた。
コーチTは、それが自分にとって有利になると確信させてくれた。私が追いつくかどうかは他のランナーに心配させておけばいいと
コーチTは信じられないような先生で、彼が私に教えてくれた主なことは、ゲームプランに自信を持つこと。自信を持てばリラックスできる
そうルイスは語った。

 テレツは東京のレースの前に、今ではめったにしないことをした。ルイスを激励し、勝利を公然と予想したのだ。
『いざというときには、真のチャンピオンは大きな意志を発揮するものだ』と彼はルイスに言った。二人の絆は見逃せないし、何よりもお互いを心の底から信じる信頼関係が二人を結びつけているのだ。

パート⑨に続く

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