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サーモンラン、しようぜ

サーモンラン、してますか?とはいってもインクでシャケを殲滅する怪しいバイトの話ではなく、チャレンジスピリッツの話です。

鮭と鱒、サーモンとトラウト

皆さん鮭と鱒の違いご存知でしょうか?よもや、その違いも知らずイクラ丼や鮭フレークに舌鼓を打ってきたなんて事はないですよね?なお私はこの記事を書く数分前まで何も知らず美味い美味いと舌鼓を叩き鳴らしていました。

魚食普及センターの情報によると…

※リンク先HPより引用

鮭は海で獲れる大きなもの、鱒は淡水で獲れる小さなもの

とされているようです。

もちろん鱒の中にも桜鱒と呼ばれる種は鱒でありながら、海に出て川を遡上し産卵するものもあります。しかし結局海に出ないものはヤマメと呼ばれ小型のまま成長します。

つまり慣れ親しみ安全な淡水から大海へ飛び出しデカくなって帰ってきたものをサーモン(鮭)、大海へ飛び出さない選択をしたものをトラウト(鱒)と呼ぶ事が多いようです。あるいは未熟ゆえに安全な地から追い出され、しかし強くなって帰ってきた者達を鮭と呼ぶのかもしれません。

大海へ出でよ、保証はない

じゃあ大海へ飛び出せよ、と気軽に言いたくなりますが出ないのには理由があります。

帰ってこれる保証がない

コレに尽きます。慣れ親しんだ場所は現在の環境が保証されており、強いストレスが無いことも保証されています。過ごすには良い場所でしょう。

しかしストレスへの適応が生物を強くします。

海に出た、あるいは追いやられた稚魚のうち一体どれくらいの個体が無事に帰ってこれるのか。

常時取り巻く環境も変わり、危険は遥かに増し、そんな環境に長い時間晒される。ストレスは比較にならないでしょう。

海に出て故郷に戻ってくる鮭の割合(回帰率)は5%を下回る程度です。95%は道半ばに倒れていく。過酷な生存競争です。

しかし逞しくなり帰ってきた5%が新しい世代へ命を繋いでいくのです。そして我々には計り知れない遺伝子に刻まれる経験を繋いでいくのでしょう。

川のヌシ、大海のヌシ

そしてこの鮭鱒の話をアスリートに例えるなら、我々は多くの場面で選択を迫られます。

此処に残るか、続けるか?

此処を飛び出すか?変わるか?

もちろん全て飛び出せば万事うまく行くわけではありません。継続もまた、成功の手段の一つです。しかし変化を受け入れねばならぬ時も起こりうるわけです。

そして川のヌシでは満足できず、大海のヌシを目指したくなったのなら…
大海に飛び出すより他はありません。

大海のヌシが過ごす場所はどんなところなのか?どうやって育ったのか?どうやって生きているのか?

それは大海に出なければ知る事は難しいでしょう。

私が指導してきたジュニア選手達も彼らが思う大海を目指し、いわゆる強豪と呼ばれる厳しい世界に飛び込むものが多々いました。

私はこんな話をしておきながら
『まだ大海は早いのではないか』
『川の方が合っているのではないか』
そんな思いを抱き、時に伝えながらも本人達が自らの意思で飛び出すのなら信じて見送るのみと彼らの後ろ姿を見てきました。

競技で結果を出す事、結果は思い描いたものでなくても強豪に所属できて良かったと振り返れる者を遡上できたものとするなら、まさに鮭と同じくらい大海は厳しき世界だと常々思わされます。

競技アスリートが晒される場所もまた、過酷な生存競争の場なのです。

生き抜く事、そして勝ち抜く事は本当に難しい。

しかし遡上してきた者達には彼等にしか持ち得ない経験があります。

それは強者の理論であり、生存バイアスであるかもしれません。

しかしその荒波を泳いできた経験がその個人だけでなく、我々が所属する陸上競技というコミュニティを更に良くしていく為の糧となっていくのです。

我々は個人個人が大海のヌシを目指し、そして新たなに誕生する大海のヌシを育てる糧となっていくのです。

それこそが遡上。サーモンラン。

シャケ軍団は美味しく食べられたいという設定

冒頭の釣り画像のインクを塗ってシャケを倒すゲーム。コレに登場するシャケ達は鍋やスプーンといった調理器具を武器として己を美味しい状態にして戦うというのを美徳にしている、といったコミカル?な設定があります。

我々アスリートも競技シーンやトレーニングシーンをファンに見られる、見てもらう機会が多々あると思います。

そんな中でも注目されるのは見たい・応援したいと思われる存在です。

変わらないという選択も時として難しい選択であり、変わる事も難しい事です。

しかしチャレンジをしているかどうかは本人の姿を見れば伝わってきます。

チャレンジをする姿には我々は豊穣な故郷の川のの匂いの如く、惹きつけられてしまいます。

より美味しい存在となるべく、調理器具の代わりにバーベルを、大海の代わりに新たなチャレンジを。

帰ってこれるかは保証はできない。けれど我々には先人達が残したコーチング理論や科学による再現性が存在しています。

きっと川のアミノ酸の匂いよりは目的に近づくのは容易だと思います。

勇気を持って飛び出して、生き残るべくストレスに順応して対処して、徐々に徐々に大海のヌシに近づいていきましょう。

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