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THE ART of the SPRINT : For Coach Tom Tellez and the Santa Monica Track Club Speed Demons, the Point Is Not Just Winning the Race, but Perfecting the Run. 訳⑨

 どうもアクセルトラッククラブの草野です。前回に続き、敬称は記事に合わせて略させて頂きます、ご容赦ください。
原文は以下から↓ 

 ルイスが永遠にテレツのお気に入りであること、私の耳に入るルイスの評判がスポーツイラストレイテッド誌に記されたように「木に登ってどこまで行けるかという自己陶酔の中で、自分を見失ってしまった子供」であること、贅沢な暮らしや自身のコマーシャルへの熱意は言うまでもなく、彼とチームメイトとの間には軋轢があるのではないかと思うだろうが、それは見受けられなかった。それどころか、ルイスのチームメイト達は、かつてモハメド・アリがボクシングで行ったように、トラックというスポーツに活力とドラマを与えるために、彼は多くの悪評に耐えてきたと断固として主張し、それによってスポンサーから毎年6ヶ月間の屋外シーズンのお金を集めていると言う。

 ボーナスは上位入賞者の間で分配され、実力はあるが契約が足りないランナーは、日雇いの仕事ではなくコーチと一緒に毎日午後を過ごすことができるほどの生活費を得ることができるようになっている。ルイス自身は、パナソニックやコダックなどの企業との契約のおかげで金銭的には裕福だが(年間300万~400万ドルを稼いでいると推定されている)、ルイスはスポーツのプロフェッショナリズムを高め、より公平な利益分配を実現するために、ノンストップでキャンペーンを続けている。個人的な契約としても、チームメイトを巻き込み、モダン・メン・インクと呼ばれるスポーツウェアのマーチャンダイジング・ビジネスのパートナーとして、彼の商業イメージに大きく依存している。

 同社は、アフリカンプリントやルイスによって有名になった半ヌードルックのスーツをはじめとするデザイナーズランニングスーツを展開している。ルイススタイルは通信販売が好調なヨーロッパで大流行し、1月にはヒューストンに小売店をオープンした。

 しかし、ルイスが本当にチームメイトのキャリアに貢献しているのは、練習場である。スプリンターにとって 「ルイス」に勝つチャンスほど集中力を高めるものない。今日のトレーニングパートナーはウィザースプーンだった。ウィザースプーンの評判は、ケガと精神的タフネスの欠如のために、彼は自分の潜在能力を発揮できていないというものだった。(彼の最高のパフォーマンスは、1987年のサンノゼでルイスを破った全米選手権の時だった)。さて、ルイスがブロックに向かって動き出すと、テレツはウィザースプーンにこう言った。
『カールがここに留まる限り、彼と一緒に走って欲しい。彼はステップアップするつもりで、それは君が必要としていることでもある』
ウィザースプーンは疲れているようだ。気温が30度を超え、私達を焼きつくさんばかりだった。しかし彼はテレツの命令に従った。

 しかし皮肉なことに、今はルイスがモチベーションを必要としていた。シーズン序盤のルイスのパフォーマンスは散々で、彼の態度は味気なかった。彼は時々100mか200mを走るだけだった。記者やファンからのいつもの追いかけっこに加えて、『モダン・メン・インク』の拡大計画や、オリンピック期間中に開始される1,700万ドルの広告キャンペーンのためのパナソニックのCM撮影など、多忙なスケジュールに費やされたことも原因のひとつだった。しかし、ルイスが31歳になるという事実がもたらす疑問もある。東京世界陸上で目を見張るような身体能力を発揮したルイスだが、ある種の倦怠感を感じていることを認めていた。
『大きなレースでない限り、心理的に自分を奮い立たせるのが難しいんだ。私は長い間競技をしてきたので、今では自分が本当に出たいと思うレースを選ばなければならない。アドレナリンが出てくるようにしたいんだ』

 正直な男であるテレツは、
『彼らはリラックスしすぎている、特に今年のカールはリラックスしすぎている』
彼はそう言いながら腕を組んで、彼らの動きに目を戻し、彼らの不完全さを見抜く作業に戻った。

 その結果、サンタモニカの6人のうち3人がバルセロナ五輪の代表になったが、3人は外れることになった。

パート⑩に続く

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