劇場版 健康警察 プロローグ



なぜ何度言われても所持するのか。

美容器具、機能性食品。

あらゆる健康を犯す、男の自宅を家宅捜査。

今宵も健康警察は、ブツッ

とある場所の資料室で、たまたま見つけた映像を見ていた男の興味は、後ろにいた別の男によって、音声と映像を強制終了させられた。

「健康警察ねえ…勉強熱心なのは良いことですが、あまり彼らの言葉に惑わされないように。彼らは私たちの、天敵なのですから。」
「お、お疲れ様です!いらっしゃってたんですね。」
「ほら、もうすぐ休憩も終わりの時刻ではないですか?ここは私が片付けておきますから、あなたは仕事に戻りなさい。」
「え?い、いやしかし…。」
「いいから、若いうちは現場の経験を最優先にしなさい。」
「で、ではお言葉に甘えて…ありがとうございます、失礼します。」

資料室の扉から部下が出ていったのを確認し、
その男はもう一度、先ほどの映像を再生させる。

今宵も健康警察は、健康の闇に迫っていく。

「健康が闇だと…?愚か者が…闇は貴様らだ。」

夜。時刻はもう2時に差し掛かろうとしていた。

住岡刑事はようやく自分の仕事を終え、
自室でスーツもかけず、ベッドの上でケータイの画面を、何をするわけでもなく、ぼーっと見つめていた。

すると、急にケータイが震え、思わずうおっと声を出してしまった。電話だ。
驚いて手を離してしまいながらも、慌てて通話ボタンに手をかける。相手は直属の上司である、吉野刑事だ。

「吉野さん、どうしたんですか?」
「住岡!よかった…、お前今どこにいる!?」
「どこって、普通に家ですけど…何かあったんですか?」
「今すぐその家から出ろ!【奴ら】がもうそこまできてる!!」
「【奴ら】?」

ピンポーン

奴らが誰なのかの答えを聞く前に、住岡の自宅のインターホンが鳴る。

「誰だ、こんな時に…吉野さんすいません、また後でかけ直しますね。」
「お、おい!ダメだ住岡…」
吉野の忠告を軽く受け流し、ケータイをベッドに置いて、インターホンの通話ボタンを押した。
「はい、どなたですか?」


吉野は息を切らしながら、住岡の自宅のマンションへ向かっていた。
こんな時ばかり、煙草をやめておけば、もっと運動しておけばなんて、健康警察にはあってはならない考えばかり思い浮かべてしまう。
「頼む、間に合ってくれ…!」

ようやく住岡の住むマンションに着くと、そこは真っ暗な夜に、赤いランプと沢山の人で溢れかえっていた。

「っ…!遅かったか…」

「…さん、吉野さん!」

人混みの方から、住岡の声が聞こえ、通してくれと急いでその中を必死にかき分けていく。

「住岡!お前…」
「…すいません、ご迷惑おかけすることになっちゃって。でも、俺なら大丈夫です、すぐ戻ってきますから。」
「くっ…すまない。必ず、必ずお前を…!」
「おい、行くぞ。」

半ば強引に車の中に入れられ、住岡を乗せたパトカーは、止まることなく【ある場所】へ向かっていった。

「絶対、絶対助けてやる。約束したんだ、お前のお兄さんと…だからそれまで…。」

今の吉野には、歯を食いしばりながら、その人混みと物騒な赤いランプに背を向け、また走り出すことしかできなかった。

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