ウメイロ

確実に避けられない未来が目の前に訪れた時、君はどうする?それは大切な人の死、或いは苦手な存在との対峙、間に合わない原稿の締め切りや家で待っている大目玉など、多岐に渡る。こう考えている間にも、その時は迫っている。

運命とは、電車である。くるくる回るものもいれば、遠くまで運ばれるものもいる。ある人は鮨詰めならぬ人詰めの中を行き、またあるヒトは誰もいない孤独な車内で自問を繰り返す。あるひとは間違った線に乗ってしまい、望まない境地に挑むことになるだろう。何処で降りるのか、途中下車できるのか、それは誰も知らない。ただ自動で開閉する扉の前で、いつ来るかわからない必ず訪れるそれを待ち続ける。

かくいう俺も、京王線に揺られてその時を待っている。目の前に乗っていた女性がスクッと立ち上がり、開いたドアから降りると、向かいに停まっている電車に向かって歩いて行った。夜は薄暗く、月は雲掛かっている。吐く息は白い。俺は次の駅まで、足を組んで待つ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?