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母と次女の私「一人で,遠出は絶対ダメ」

先日、自宅ポストに、エキストラ募集のチラシが投函してあった。
今までの人生で、こんなことあったことがない。
撮影場所は、おおまかしか書かれてないが、行けない距離ではない。
これは、千載一隅(思いがけない一度の出会い)のチャンスではなかろうか。
映ろうが、どうだろうが、撮影現場というものを近くで体験してみたい。
とりあえず、すぐに応募してみた。
なんとなんと、次の日、当選のメールが届いた。
すぐに、手続きをした。
あとは、撮影場所の連絡メールが届くのを待つのみ。
実家に行ったとき、
「明日は、出かけて、ここに来れないので、猫によろしくね」と
母に言った。

「そうなの」と、さらりと、流してくれるかと思いきや、
「どこに行くの?誰と行くの?」
としつこい。部屋の場所を変えてもついてきて、
目の前に正座して、私の顔をまじまじと見て、繰り返し、質問してくる。

ふだん、私が、実家に来ても、無反応で、振り向きもしないし、
話しかければ、うるさがられ、会話なんてほとんどしないのに、なんなの?

撮影のことは、他者に話してはいけないと、注意事項にあったので、
話せない。
母は、おしゃべりが好きで、この人に話したら、
町中に知れ渡ってしまうほどの、「レコーダー」人間。
みじんも話してはいけない。

あんまりしつこいので、
「ひとりで、ちょっと離れたところに、野外コンサートに・・・」
とだけ答えた。

「ひとりで??遠くに??そんなとこに行くなんて、お母さん心配だわ。
やめなさい!やめなさい!」と、母は、うるさく言ってきた。

・・・気持ち悪い。

私が高校生のとき、県内の市街地に、一人で行くのを、
母は、反対して、行かせてくれなかった、その時と同じ状況だ。
「お姉ちゃんは、友達がいるけど、お前は、友達なく、ひとりだからダメ!」
そういっておきながら、高校を卒業すると、
母が勝手に選んで買って来た服で、
その市街地へ一人バスで通い、
母がかつて働いてたデパートの職場で働くことを強要された。
姉には、プロの漫画家目指させて、家事手伝いだ。
生活すべてが、母の支配下だった。
ガマンならなくなって、私は数ヶ月で退職して、
その後、転職を繰り返したが、母の色に染まってた私のことを、
職場の同年代の同僚から「おばぁちゃん」というあだ名を、
いつも、つけられた。
私は、母が年がいってから生まれた子なので、
母のセンスは、ババくさかったのだ。

現在、こんなに、私が年をくっても、
あの時と状況は変わってないことに、恐怖を感じた。

帰宅後の夕方、いくら待っても、撮影場所のメールは届かなかった。

読み直すために、スクショした注意事項を消してたら、
『「登録完了」で、登録が終了。』の文字が目に入った。
「登録完了」の文字は見ていない。つまり、登録は、送信できてなかったらしい。
期限は、その日の朝10時までで、とっくにすぎている。
とりあえず、「登録完了」をして、(自分のバカ)と落ち込んだ。

すぐに母に電話で、「明日は、いつもどおり実家に行けるから。
手続きに失敗したからね・・・」と連絡した。
電話むこうの母は、「よかったわ~」と大喜びの声をあげた。

夜、布団の中で「二度とないチャンスを、自分で、台無しにしてしまった」と、落ち込んで、もんもんとして、眠れそうもなかった。

だが、夜の11時すぎ、集合場所のメールが届いた。
「えっ?参加できるの?!」
今度は、「未知の世界に踏み入れる」という緊張が襲ってきて、
眠れそうもなかった。

当日の朝、緊張が高まって、足ががくがく震えた。
運命なのか、結婚後も一人で、遠出したことなく、
状況把握も下手なので、不安が襲う。
ほぼ、ひきこもりで、カーナビでも道に迷うほどの方向音痴、
時間までに、目的地にたどり着けるだろうか?

母に電話をかけて「行けることになった」ことを伝えた。
電話口でぎゃんぎゃん文句を言われたが、電話を切って、シャットアウト。
仲の悪い夫には、メールで、「夕食は外食ですませて」とだけ伝えた。
直前に悪態つかれたら、気力をなくしてしまうだろう。

なんとか着いて、なんとか夜8時に撮影が終了して、
なんとか自宅に無事戻れた。

帰宅直後、夫が、「お母さんから何度も電話かかってきて大変だった。
すぐに電話して」というので電話した。
母は、安堵して、すぐ電話を切られた。
スマホにも着信履歴があって、メッセージ録音まで残してあった。
メッセージの聞き方わからないから、やめてって言ってるんだけどなぁ。
かんしゃく持ちの夫は、不思議と、帰宅が遅かった私を怒鳴らなかった。

撮影は疲れた。
同じ場面を最低6回はやる。
あいかわらず、私は、変人で、かなり、浮いてたように思う。
ババァなのに、若作りの髪形(イケてるカツラ)とファッションで、
アンバランスで、きっと、化け物に見えたんじゃないかと思う。
ドラマは、劇場ではなく、特定の番組での放送らしいので、
契約してない私は、見ることはできない。
みにくい自分の姿を見るのは怖いし、それでいて、
写ってなかったらショックだし、見れなくて幸い。
ようやく、おしゃれに目覚めたときには、すでにババァで、
けど、こころの年齢は、アラ30。
年相応の服装がわからなくて、母のせいで、時差が生じちゃってる。
そんなこんなで、いろいろ、反省点があって、気が滅入り、
参加しても、もんもんとして、これはこれで寝付けなかった。。

参加者は、一人で来てる人が多かった。しかも、他県から。
女性が一人で。ひとりでね。

母は、私が遠くへ行くことを許さない。

高校卒業時、才能を伸ばすための、専門学校へも、
行かせてもくれなかったほどだ。

私は、母のなんなのだろう?と思うことがよくある。

こうして、私は、結局のところ、凡人の道を歩んでるが、
これはこれで、苦悩の人生。

来世があるなら、世界を渡り歩く、自立した女性になりたいと思う。


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