コーヒーの面白いところ

コーヒーの面白いところ

こんにちは。かもカフェの店長こと藤岡くんです。今回は私が三年間コーヒーの修業をして、色々やってみて面白かったことを書きます。

(1)背景

まず背景を簡単に説明すると、私は大阪梅田の中心にある、新梅田食堂街のマルシンコーヒーというお店で三年間コーヒーの修業をしました。何気に大正14年から大阪でずっと続いているお店で、あと8年で100周年になります。梅田マルシンにコーヒー豆を卸している焙煎所が、環状線野田駅の近くにあり(その焙煎所の名前もマルシンです)、私は2017年の一年間、そこでコーヒーの焙煎の修業をしました。
焙煎所には大型の窯があり、バケツ一杯の豆10kg窯に入れて、17分くらいかけて焙煎します。大体一日に4回から7回焙煎しています。焙煎所にはおじいちゃんの焙煎士でありマスターがいて、私はその人に弟子入りを申し込みました。OKしてくれたのですが、最初に言われたのが、自分で網でやってみなさいことでした。銀杏を煎る用の簡単な網で、ガスコンロで火にかけていく、原始的な感じの焙煎方法です。私は焙煎所で色んな生豆を買って、自宅で焙煎しつつ、焙煎所に通い詰めました。

(2)関係のさせ方で味が変わる

焙煎をしていて面白かったのが、豆の関係のさせ方で味が変わるということでした。例えば、モカ、コロンビア、ブラジルの豆を焙煎するとして、それらを配合させてから焙煎した豆と、それらを別々に焙煎してから同じ割合で配合させた豆では、味が違うのです。同じような深度の焙煎で、配合の割合が同じでも、配合させてから焙煎したブレンドと、焙煎してから配合したブレンドは、味が違って、前者の方が飲み心地がまろっとしていました。関係のさせ方やその順番で、コーヒーの味が変わるのですね。この現象について焙煎士さんに質問すると、違う生豆同士を一緒に焙煎すると、「味がまとまる」とのことでした。
カフェではマスターのこだわりの配合のブレンドコーヒーが看板商品であることが多いですが、一つのブレンドを作るにも、豆について、様々な関係のさせ方があります。産地、品種、鮮度、発酵度合い、豆の組み合わせ、焙煎の深度、と、これらについて様々な関係のさせ方のパターンがあって、コーヒー豆の可能性は無限に変わってきます。その中で自分にとっての「これ!」と言える豆を作っていくのが、カフェの経営の裏舞台で一番楽しいところです。

(3)目利きの面白さ

コーヒーで一番面白いのが目利きです。コーヒー豆は生き物のなので、一杯のコーヒーを作るに当たっては、目利きが重要になってきます。コーヒーの製作においてずっと目利きが必要なのではなく、いくつかのタイミングで重要になってきます。
一つは焙煎の時です。コーヒー豆の焙煎は豆を火にかけて焼いていきますが、「これくらいが何となく美味しそうだな」という焼き加減で火を止める目の感覚が重要になってきます。また、豆は焼いて温度が上がると、二回パチパチと音を出します。また、温度が上昇するにつれ表面に脂が出てきます。さらに独特の甘い匂いもしてきます。それら豆の状態を表す徴を五感で感じながら、焙煎からいいタイミングで引き上げるのが目利きの勝負です。いい感じに焙煎できた豆は、表面の脂が均一にまとまり、光に照らされると均一な銀色に輝きます。
もう一つはミルでコーヒーを挽いてから、お湯を注ぐ時に目利きが必要です。主に濾紙を通して手でお湯を注いでいく淹れ方についてですが、挽いた豆にお湯を注ぐと、豆の中のガスが出てきて、濡れた豆が濾紙の中でぷくぷくと膨らんできます。その状態で40秒ほど待つ工程のことを「蒸らす」と言います。ここについて、どこまで蒸らすか、というのが目利きが必要なポイントになります。蒸らされている豆を見ていると、だんだん色や艶が変わってきます。初めは難しいですが、慣れてくると自分なりに、ここ!というタイミングが分かってくるので、次に第二投目のお湯を注いでいって、コーヒーを完成させます。これも色々試していたら面白いです。目利きができるようになってくると、コーヒーの世界が面白くなってきます。

(4)基礎商品を作る
これはカフェの経営の話になりますが、コーヒーの目利きと淹れ方が分かれば、後は基礎商品を作ってみることが大きな楽しみです。かもカフェを経営してみて思ったのは、①簡単に反復可能で②美味しくて③自分が作っていて楽しい という条件を満たしている商品は、お店の経営の基礎となるということでした。所謂、お店のこだわりのブレンドというやつですね。お客さんからお任せで、やオススメで、と言われても、悩まず自信を持って出すことのできる基礎商品があれば、カウンターの中にいるマスターとしては非常に気が楽です。また、ちょっと高価格で美味しいコーヒーや特別なコーヒーを出してく時にも、その基礎商品を核にして色々な豆を付け足すことによって、様々な応用的な商品を作ることができます。これにはコーヒーに関する自分の基本的な感覚が必要ですが、飲んでるうちに何となく積みあがっていきます。
 色々なブレンドを見てきましたが、お店の基礎商品としては、モカ、ブラジル、コロンビアの三種の豆を核にしているお店が多いように感じます。この三種はどれも美味しく、味もしっかりしていて、供給量も多いので、経営の基礎にはしやすいと思います。上で書いたように、同じモカ、ブラジル、コロンビアの豆でも、焙煎してから配合させたものと、配合してから焙煎させたものでは味が異なるので、皆さん試してみてください。

(5)うまくやればワインのように

以上述べたのが一般的なコーヒーの作り方ですが、世の中には特殊なコーヒーの作り方がちらほらあって、挽いた豆を鍋で煮て布で濾してへらで絞っていく方法や、専用の小さい鍋で豆を煮詰めて上澄みだけ飲む方法など、色々あります。
私が今回ご紹介したいのは、水出しアイスコーヒーというものです。これはミルで挽いたコーヒー豆を一晩ボトルの中で冷水に漬けて味を出していき完成させるアイスコーヒーです。一般にお湯でコーヒーを作ると豆の脂などの成分が出て、その分コクや旨味が出てきます。一方この水出しアイスコーヒーの生成方法では、コーヒーの甘みやほんのりとした酸っぱさややわらかな苦みのみを引き出すことができます。オススメはモカの弱深煎りの豆を使って作ることです。一晩寝かせたモカの水出しアイスコーヒーは、すっきりした赤ワインのようになったりします。ノンアルのワイン(のようなコーヒー豆茶)が簡単にできます。

今回の、私がコーヒー屋さんをやっていて面白いなと感じた内容は以上です。また面白いなと思ったことがあったら記事にしますね。

かもカフェの店長

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