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炎の転校生

なんて言うんですかね、毎週毎週、連載コラム気取りで書いてますけど、自分が書いたnoteを読み返すと、我ながら乱暴としか言いようがないなぁと。例えばジェーン・スーさんですよ。当時は面白くて非の打ち所がないように感じた「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」の文章を今読み返すと、なかなか雑だったことに気付くんですけど、本を出すごとに文体が洗練されていくから感心することしきり(たぶんもうすぐ著作で何かの賞を獲るんじゃないかしらん)。僕も彼女のように文章を上達させたいと思っているものの、今回の記事もまた非常に乱暴なので、才能がないんだろうな、残念ながら。死ぬか。

さて。北村紗衣先生の著書「お砂糖とスパイスと爆発的な何か: 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」がとても面白かったので(映画ガイドとしても良かった!)、最近は“読みやすそうな”フェミニズム関連の本をちょくちょく買うようになりましてね。正直なところ、女性が書いた本はどれも「すみませんでした…」と焼き土下座せねばならないような気持ちにさせられたし、グレイソン・ペリーが書いた「男らしさの終焉」についてはイラッとするところが少なくなかったものの、清田隆之さんの「さよなら、俺たち」「よかれと思ってやったのに」は非常に身につまされました。

自分が付き合ってきた女性に対しておこなった「男性としての加害」についての思い出がいろいろ甦ってきたりもしてね…。いや、僕もブログやnoteで偉そうなことを書いてますが、奥さんと結婚する前に付き合ってきた女性の方々には、なかなか酷いことをしてたんですよ、マジで(もしかすると、奥さんにも!?)。彼女たちに「いつのことだか、思いだしてごらん! あんなこと、こんなこと、あったでしょう!?」「おもいでのアルバム」ライクに具体例を出されながら責められたら、やはり泣きながら焼き土下座せねばなるまい…とスゲー胃が痛くなるのです。

で、さらに自分の少年〜青年期を思い出すと、モロに「ジェンダーの呪い」に囚われていたというか。親や周囲からは「男らしくあれ」と求められたけど、「男らしくなれない自分」に悩んでいたなぁと。例えば、僕は警官だった頃に仕事で暴力を振るったことはありますが、一対一でケンカをしたのは小学校5年生の時に1度だけでしてね。確か僕が何らかの頼み事を断ったのが気に入らなくて、同級生のT君(良く言えばクラスの人気者で、悪く言うとお調子者)に言いがかりをつけられて、砂場でケンカをすることになったんです。

まぁ、所詮は小学生同士ですから、適当に揉み合った後、体の大きい僕がT君をヘッドロックして、そのまま砂場に倒れ込んで。いわゆる袈裟固めみたいな状態になったんですよ。すると、彼は動けないから「ギブアップ」をしたので離したんですけど…。その直後、T君ったら「砂が目に入った! お前は体が大きいくせに卑怯だ!」とか言い出して、周りの子分みたいな子たちも「卑怯」コールを始めたから、「あぁ…」と。

なんかね、当時は頭の回転が遅い方だったから(現在も決して速い方ではありませんが…)、弁が立つ子に言いくるめられたり、泣かされたりすることが多くてね。今でもあの時の感情を覚えているんですが、「たぶんキリがないんだろうな」と感じたんですよ。僕が何をやっても彼は卑怯だ云々言い出すだろうし、たぶんこの日は勝ったとしても、翌日からいじめられるんだろうなと。今考えると、徹底的にぶちのめせば良かったのかもしれませんけど(良くない)、その時はこんな状況でこんなことを言い出す奴には敵わないと思ってしまって、「うぇーん」と泣いたら、T君も満足して、めでたしめでたし…ってな着地。

とはいえ、この日の精神的ダメージは本当に大きくて。憧れていたプロレスラーたちや映画スターたちのように「もっと男らしく強くなりたい」と思ったけど、性格的にそんな感じじゃないし、運動神経も良くないし、でも両親や串田アキラさん「男なんだろ、グズグズするなよ」と言ってくるし…。と、悩んでいた時に僕を救ってくれたのが、島本和彦先生のデビュー作「炎の転校生」「風の戦士ダン」だったというね。

以前、真樹日佐夫先生が亡くなった時、コンバットRECさんが様々なエピソードを話されていたんですが、確か「“男らしいこと”ではなく、”男らしくあろうとすること”が大事ということを教わった」みたいな話をされていて。それは僕が島本作品から(勝手に)受け取っていたメッセージと同じだったから、スゲー感動したんですよ(RECさんのことがさらに好きになった)。島本先生のマンガに出てくるキャラクターは、やたらと「男らしい発言」をするものの、なかなか実践できないこともあって、情けなかったりもして。でも、でも、男らしくあろうと前を向く。小学生の僕は「そうか、僕は全然男らしくないけど、“そうあろうとする心”があれば、この世界をサバイブできるのかもしれない」と、非常に勇気づけられたのです。

もちろん「『"らしさ"こそ"正しさ"』の疑わしさ」が問われている昨今、「男、強さ、やさしさ」なんてフレーズは時代遅れなのかもしれません。やっぱり「ジェンダーの呪い」ってのは男女ともに確実にあるし、そりゃあ杉作J太郎先生も「男の墓場プロダクション」から「狼の墓場プロダクション」に改名したし、もうね、「男らしさ」云々を語っていた島本和彦作品の主人公たちは古くなったのかもしれません。世の中は急激に変わることはないけど、これから少しずつ「男らしさ/女らしさ」という言葉は廃れていくし、それが正しいと思うんですが…。

ただ、中学でいじめられながらも何とか前を向いて進めたのは、高校でバレーボール部を何とか3年間やり通せたのは、警察で訓練の日々を乗り越えられたのは、島本作品で教わった「男らしくあろうとする心」のおかげだった…ということは忘れないでおきたい。それと、もしT君と再会したら素手で殺すつもりです(唐突にマッチョかつ乱暴な着地)。



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