伝えること 【ラストサイレンス】
すこしおひさしぶりかな。藍です。
先月から何度も何度も繰り返し聴いている一曲があります。
心が動かされてならないので今、言葉にしてみたいと筆をとり(?) ました。
メレル さんの ラストサイレンス 。
真摯な優しさが詰まった曲だと思いました、それは臆病にきこえるくらいに。けれど、たしかに強い。
詞を追いながら聴いていこうと思います。
低く細やかに抑えられた伴奏、色でいうならば彩度の低い寒色の印象に声が連ねられて、つかの間 間奏を挟んでまた言葉を重ねて。何かに追い縋ろうとするかのよう。
吐いた言葉に添えたあの意味と
今日も手を繋いで帰りましょうか
いつか発した言葉をいまも後悔している。本当に言いたかったことは伝わっていないままだ。
どうせ続きの言葉 知らないから
だんだん言葉にすることをサボってしまう。どうせわからないから。伝わらないから。
はにかんでいた その表情
壊れないで欲しかっただけ
高い歌声が、今にも掠れそうに必死に願うようにきこえる。
ひとと話すことはなんと難しいのだろうと思います。相手が大切であればあるほどに。何気ない言葉も上手に紡げない。ただ大切に思っていることも伝えられないでいる。いっそ何も言わないほうが良かったのだろうかとさえ思う。
ひかる音たちが、明るいのに寂しく響いて、後ろのギターがいつのまにか優しくて。
サビに入るところ、情景がひとりでに脳裏に浮かんで引き込まれました。
ぽおっと光が灯って、見えないと思っていた周りがくっきり見えてしまう。つめたくて誰もいない。柔らかくて、消えてしまいそうに揺れるきいろい灯りだけが綺麗。
必死に手探りしてたところに思いがけず、ふっと広い空間に出てしまったみたい。
抑えていた感情がふっとほどけて涙が出るときと似た、あるいは、お別れのときの 優しい記憶と寂しい気持ちが同時に流れ出して止まらなくなる感覚と似た、優しいけれど切実な。
ねえ心臓を突いて 嘘で伝えて
「叶うなら名前を呼んで」なんて
言葉を選ぼうとするのを諦めてしまいそうだ。
心に強く刺さるならば嘘でもいいじゃないか。
騒々しいや
感情の海に 飛び込んだまま
もう 出られないなあ
ききたいことも言いたいこともあんまりたくさんあるのにどうして良いのかわからない。
ぐるぐると考え始めてキリがなくて、いつの間にか自分のことばかりになってしまう、だから伝わらないのかなぁ。あなたはいつでもそこで聞いていてくれたはずだったのに勝手にごちゃごちゃ悩んで困ったなぁ。
聡明な言葉をじっと探せば
残ったひとり 空っぽの花瓶だけ
伝えかたばかり考えているうちにみんな先に行ってしまった。
頷いていた その表層
そのままで受け取らないで
追いつけないから曖昧に頷いてただけなんだ、言いたいことは違うんだ。
「伝うなら嘘でも」なんて啼いて
このままほんとのことも喋れないでいるくらいなら嘘でもいいじゃないか。そういいつつも涙が出てしまう。気持ちそのままを誠実に伝えたいのに言葉は大袈裟すぎて上手に扱えない。
判らないまま話せないよなあ
1番、2番と、サビ終わりのフレーズの語尾に「なあ」とついているところ、途方に暮れたような不器用さを感じて、なんだか一緒に困って泣きたくなります。
そもそも何を伝えたいのかハッキリ掴めないことに気づく。
「君は何処にもきっといないよ」
この曲もそろそろ終盤。
ふと気がつきます、ずっと話したいと私が思ってきた「君」ってなんだ。
私の勝手に作り上げた虚像ではないのか。
感情線伝って何かが死んだ
嫌いをひとつ 許したようだ
ちっぽけな恐怖が吹っ切れそう。言葉が出てこない理由はもしかすると、自分の感情を認めたくなかったからなのかもしれない。うまく喋れない自分が嫌で苛立っていたのかもしれない。
灯はどれだけ残っているのか
鼓動と重なる歪な明滅
悲鳴もあげないでただはにかんでいた、そんな君に届く言葉が欲しいと思った気持ちを私は覚えているのか。
自分が大事で慎重になるばかりだったから、なりふり構わぬ言葉が怖くなっていた。
コミュニケーションの歌です、とメレルさんが仰っているのを見ました。
気持ちを伝え合うってめちゃくちゃ難しいです。うまく言葉に出来ない部分の方が多い上に、言葉にしたところできちんと伝わるのはそのうちの何割ほどだろう。
本当にわかり合うことは決してできないと思っています。頑張ったとしてもそれは仕方ない。
何度もそう感じながらまだ、ひとと関わるすべを探し続ける、そういう曲だと思うのです。
これは勝手な憶測ですが、メレルさん自身のように表現をする仕事のひとでは余計に、その思いが強いのではないか。言葉えらび、音づくり、真摯に工夫を凝らしてなお、届いたと感じる瞬間はどれほどあるのだろう。
日ごろ他人と積極的に関わろうと思わないひとも多くいるでしょう、それでも、いやだからこそだろうか、いざ大切にしたいひとを前にすると、どうすれば間違いなく傷つけないで関わり合えるのかと、悩むことがあるのではないでしょうか。毎回が手探りで、不安になってしまう。時に投げやりになってしまう。
聴き込みながらそんなことを考えていました。
上手にコミュニケーションをとるのが難しいと感じる気持ちを、なんとなく重ねていました。
いつでも適当にならずに意識出来ることではないと思います。
正しい事はひとつもないなあ
言った方が良かったのか、悩んでも正解などなくて疲れてしまう。
だけど時には、
伝えたい想いをおろそかにしていないか自問自答することも大切で、
ひかりの揺らぎを聴くような綺麗な旋律に包まれると、それをやめないことにはきっと意味があるし、すてきなことなんだよ、って信じたくなるんです。
単純だった感情の続き
判らないからあと少しだけ
わからないことだらけだけど、関わってみたいとまだ思うから言葉を探していたいんです。
どうしようもなく心に響く曲でした。
ぜひ、聴いてみてください。
MV 「ラストサイレンス」初音ミク http://nico.ms/sm34730095?cp_webto=share_others_iosapp
#vocanote #音楽 #歌詞解釈 #コミュニケーション