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【カンザキイオリ】KAMITSUBAKI STUDIO卒業について

私、カンザキイオリはこの度、KAMITSUBAKI STUDIO、並びにTHINKRを卒業致します。
乱文ではございますが、ここにその真意を記します。

伝えたいことが沢山あり、早速ながら何から話せば良いだろうか迷うもので、思い出に浸る気持ちで、THINKRとの出会いを少しだけお話しさせて下さい。

始まりは「命に嫌われている。」でした。
沢山の方に聞いていただき、その反響のおかげで様々な方から共作のお誘いを受けその中の一人がPIEDPIPERでした。当時、内気で人間嫌い気味の私は、等しく彼のことを不信に思っていましたが、二度のアプローチで彼の強い思いを感じ取り、試しにお会いしてみようと感じました。

初めてお会いした時のことを今も思い出します。
私が何者なのか。PIEDPIPERが何者なのか。そしてあるバーチャルシンガーのプロジェクトのこと。

なぜTHINKRに所属しようと思ったか、いろんな理由がありましたが、一番に言えるのは、彼の提案や言葉には「期待」がありました。
彼の人間性や、面白さ、新たなことへ挑戦しようとするある意味凄まじい原動力は、その時から垣間見えていて。当時、音楽を作るしか生きる理由を見いだせなかった「何者でもない私」を、引っ張ってくれるような予感とワクワク感が湧き上がり、彼に期待し、THINKRに所属を決めました。

THINKRに所属して、すぐに始まったのは、バーチャルシンガー「花譜」のプロジェクト。
花譜と初めて会った時、端的に言いますと、激しく「嫉妬」しました。
彼女は歌がとても上手い訳ではなくて、だけど、言葉にできない繊細さや、聞いた人に世界観を植え付ける表現力がありました。彼女は私を元より知ってくれていて、私を尊敬で見ていたけれど、その時から私はどこか、彼女に勝ちたい、負けられないと、闘志を燃やしていたような気がします。
彼女は今でも私の楽曲を褒めてくれるのだけれど、それは花譜本人が、私の闘志を燃やし、高めさせたのです。彼女に劣るような、彼女の声に負けるようなものは作りたくない。今までの創作には常にその考えが隅にいました。

このプロジェクトは、PIEDPIPERと花譜だけが重要な人ではありません。花譜と私のマネージャーも私にとってかけがえのない一人です。
マネージャーの第一印象は、「怖い」と言うのが正直なところでした。マネージャーのせいというよりかは、単純に私が、大人の人が怖いと言うのもあり、創作とは少し違う立場からのサポートという印象もあってどう話していけば良いかもわからず、緊張していました。
しかしあの頃からマネージャーとして、私と目線と立ち位置を合わせて、振る舞ってくれていたように思います。だからこそ距離が一歩ずつ、一歩ずつ近づくたび、マネージャーの温かさを感じ、今日まで創作を続けることができました。

今でこそ沢山の方々が関わっている花譜というプロジェクトですが、私の中では、そんな彼らとの出会いが始まりのように思います。

模索して、考えて、閃いて、生み出して、また模索して、諦めて、泣いて、また模索して、生み出して、生み出して、生み出して。
皆さんと駆け巡った日々はもちろん良いことだけではありません。コンポーザーとして決められたスケジュールの中で楽曲を作ると言うのは、自分のプライドや発想力との戦いでした。悪態をつくこともあれば、投げ出して一人引き篭もることも。なのにいつも変わらないのは、彼らがずっと待っていてくれたと言うこと。私がどんなに嫌な人間でも彼らは待って、応援して、悩んでいた時は沢山の提案やサポートをしてくれました。
思い返せば、まるで青春のような日々でした。どことなく不信に思っていたPIEDPIERも、嫉妬の嵐を向けていた花譜も、最初は怖かったマネージャーも、創作を通し、気づけば仲間になっていました。
東京に来た時の私は、まさかこんな未来が待っているなんて、夢にも思っていませんでした。仲間だと信頼することも、他者を大切に思うことも、そして音楽にここまでひたむきに向き合うことも、想像していませんでした。
私にとって、この五年間は、無数の奇跡が詰まった宝物です。

そして。
花譜というプロジェクトと向き合うその裏で私自身も小説執筆や、ライブ、たくさんのことをKAMITSUBAKI STUDIOの一員として、経験させていただきました。
時には命について悩み、友達について悩み、自分自身について悩み、その感情を全てぶつけることに重きを置いて、沢山の作品を生み出してきました。
一つ一つの作品を作り上げようとしたきっかけは様々でしたが、その中でまたさらに、自分の中で挑戦心が湧き上がりました。

それは全て任せきりにしていた自分のプロデュースを、自分自身で行ってみたいという挑戦です。

きっかけは、創作をすることでお金を稼ぐことの罪悪感でした。
私はTHINKRに所属し、マネージメントとプロデュースをしていただいておりました。そうすることで私は守られ、創作に100%の時間を割くことができました。私の知らないビジネス面としてもサポートしていただき、利益を得ることも出来て、次第に生活も豊かになっていきました。
事務所に所属するということは実際そういうことで、アーティストをマネージメントしていく形で利益を模索するのが当然のことなのです。
ただ、THINKRはお金の事よりも、そのさらに奥にある、「言葉にできない感情」をすごく大事にし、そこから湧き上がる面白さや、作品を見てくれた人、それだけにとどまらず、関わってくれたクリエイターやスタッフも含め、心の奥底にあるドキドキやワクワクを引き上げることを第一に置いている事務所のように思っています。お金だけではない、理屈ではない、半端な綺麗事じゃない、「狂気じみた魔法のような想い」のような、そんな不確かなものに必死に向き合う、そんなクリエイティビティな事務所のように、私は一個人として思っています。

しかし私の中で、利益が増えて、生活も豊かになればなるほど、罪悪感が高まっていきました。
創作をするたび、音を奏でるたび、文字を重ねるたび、どうしても自分の作品が「安全圏から安全に石を投げている」ような感覚になっていました。
私にとって創作は、自分の感情をぶつける場所です。
昔は人前でうまく喋れない私にとっての唯一の逃げ場だった。でも今はそれだけじゃない。
自分と同じような過去を持っているかもしれない画面の奥のあなたを救うため。自分一人だけではないとあなたに伝えたいため。私自身の生きた証を表明するため。自分の中の正義を確かめるため。そしてあなたと私が楽しい瞬間になるように。
私なりにそんな信念を持って創作に感情をぶつけてきました。
それなのに私は、ただ豊かな生活を過ごし、衣食住にも困らず、何が救いだ。何が悲しみだ。逃げ場がある創作で、いつだって安寧と安心に寄り道できる創作で、一体何が救えるというのだ。何が語れるというのだ。
私はもう嫌なのです。誰かに守られているだけの私では、許せないのです。
だから私は、KAMITSUBAKI STUDIO、そしてTHINKRの卒業を決意しました。
これからの創作は、私のお金で産まれていきます。お金は私の命でもあります。
私のお金で、私の命です。自分で自分の命を削って、いつ崖っぷちから落ちるかわからない、自分の失敗は、自分に返ってくる。その中で私は創作をしたいのです。

娯楽とビジネスの境界線を模索しながら、時には全てを娯楽のために、時には全てをビジネスのために、この先の創作を自らの力で、自らの命を削って、考え、作り上げていきたい。
その先に出来た作品が、今よりももっともっとあなたの心を支え、言葉にできない何かを突き動かすと信じて。

そう、決意した次第です。

今後は自分自身の場所をまず作り上げ、新たな気持ちで創作に向き合うため、卒業と同時に花譜と言うプロジェクトからも、距離を置くこととなります。
「何者でもなかった私」を引っ張り上げ、そしてこれほど大きく沢山の人に感動を与え、そして私を成長させてくれた花譜という居場所。
本当に、本当に感謝しています。
花譜の物語は、また新たに芽吹いていきます。私もその光景を、花譜の一観測者として、皆様と同じ立ち位置から、花譜を応援できたら幸いです。

これが完全なる別れではありません。いつかまた別の形で、私も別の立場で、また共作できる日が来ると、確信しています。
その時生み出される作品が、今の自分よりも遥かに強い信念を持って完成されることを願っています。

立場は変わりますが、これからも引き続き、創作を楽しんで参りたいと思います。
今後もカンザキイオリをよろしくお願い致します。

2023年3月4日
カンザキイオリ

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