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その01 龍崎翔子が『HOTEL KUMOI』のリブランディングで“魔女活”に目覚めたワケ

【龍崎翔子と巡る『魔女活の旅』】ホテルプロデューサーの龍崎翔子さんは、上川町層雲峡の『HOTEL KUMOI』のリブランディングを機に自然の材料から衣食住アイテムをDIYする「魔女活」に没頭。このマガジンは、そんな龍崎さんが暮らしをアップデートするヒントを求め巡る「魔女活」の記録です。

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世の中がコロナ禍と呼ばれるようになり、はや1年。ストレスを感じやすく、発散しにくいこの時代、体と心のメンテナンスがこれまで以上に大事になっているかもしれない。ホテルプロデューサー龍崎翔子さんが上川町・層雲峡で経営する『HOTEL KUMOI』は、そんなニーズも感じ取りながら、現在「リトリート」をテーマにしたリブランディングの真っ最中。『HOTEL KUMOI』が提供する癒しの宿泊体験とはどのようなものなのか。龍崎さんが層雲峡の地からインスピレーションを受け企画したリラクゼーションについてや、周りの自然を生かしたDIY、その名も“魔女活”にもハマった経緯にも迫る。

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▲ホテルプロデューサー龍崎翔子さん

一人ひとりの体調に合わせて設計された、4泊5日の極上体験。

―そもそも『HOTEL KUMOI』のリトリートとは、どのようなものでしょうか?

龍崎:私たちが現在提供しているリトリートは4泊5日のプランのみで、初日は漢方師さんとの問診から始まります。そのための「漢方部屋」もリブランディングに合わせて用意しました。

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▲「漢方部屋」。インテリアの仕入れはメルカリも活用しているのだとか。

龍崎: 事前のオンライン問診と当日の対面問診で漢方薬局の方とお話をして、お客さまの体調に合わせた漢方を処方したり、5日間の食事のメニューを決めます。漢方薬は朝昼夜の食事のときに煎じてふるまいます。そのほか、足湯、整体・鍼灸、薬草浴、漢方薬湯といったトータルボディートリートメントをすべてのお客さまに提供するのが『HOTEL KUMOI』のリトリートの特徴ですね。

―5日間のお客さまの行動が設計されているんですね。

龍崎: そうです。ホテルって、「あなたにはこういう体験をしてほしい」という体験キュレーション的な機能があると思っていて。ちょっと押しつけがましいかもしれないけれど、そのかわりに、その人が「自分だったら絶対に選ばない選択肢」を提供できるのがいいところだとも思います。

―漢方も、ほとんどの人にとって選ばれにくい選択肢かもしれませんね。

龍崎: よほどのことがないと好き好んで漢方薬とか飲まないじゃないですか。東洋医学って4,000年くらいかけて洗練されてきたすごい思想体系だと思うんですけど、どうしても「おじいちゃんのイメージ」が強いから。でも、ちょっとした強制力を持って、その人に合った形でコーディネートして体験してもらう、というのはホテルだからこそできる提案だなと思います。

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「リトリート」に生まれ変わった理由。

―リトリートを始めたきっかけは?

龍崎: 最初は、コロナでお客さまが来なくなった時期に、スタッフみんなでどうしたらいいかを話し合っていたんですね。そこで、ウェルネスプランみたいなものを作りたいという声があって。層雲峡って周りが豊かな自然に囲まれていて、いい意味で何もないところだから、都会で感じるストレスとか邪気とか、そういったものから距離をとって、心と向き合う宿泊体験を提供したいということを話していました。私はそれを聞いたとき、「ただのプランの一つにするのはもったいないな」と思ったんですよね。

―というと?

龍崎: プランにしたところで、遠くまでわざわざ行かないから、むしろその考えの本質の部分だけをもっと突き詰めて、館全体の価値にした方がいいと思って。そこからリトリートとして、ある程度長期滞在にして、自分の体について知るとか、自分の体にあった食事をとるとか、自然の中だからこそできるアクティビティに取り組むなどの体験を作ろうと思って、秋に4泊5日のリトリートを試験的に1ヵ月やってみることにしました。

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―そこでの発見はありましたか?

龍崎:当初はそもそもフィジビリティー的に実現可能なのか心配していたのですが、杞憂だったことがわかりました。一日三食出すとか、お客さまがずっといらっしゃるとか、難しさはありつつも意外と対応できるし、かつそれによって「この場所でホテルをやる意味」が働く私たちにとってもすごく強くなったなという感覚がありました。

―層雲峡だからこそ提供できる体験が充実したんですね。

龍崎:そうですね。あと、すごくうれしい相乗効果としては、お客さま同士が仲良くなるケースが本当に多くて。宿泊のあとに東京で同窓会とかしてたんですよね。普段過ごしている世界では出会わないような人と話してみたり、お互いの人生の哲学を知ったりできたとおっしゃる方が多くて。単純に体と心だけではなくて、価値観とか人生の在り方に対して、お客さまにすごくポジティブな刺激を生むことができると感じて、それがとても大きな収穫でした。

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―なるほど。逆に、課題に感じたことは何かありましたか?

龍崎:東洋医学って本当に奥が深い思想体系なので、それらを深く理解したうえでパーソナライズして宿泊体験に落とし込むのは非常に難しくクリエイティブな営みだと感じました。正解や終わりがない課題だとは思うのですが、真摯に向き合っていく必要があると思っています。

―それを受けてアップデートされた点は?

龍崎:まずは自分たち自身が知識や理解を深めながら、東洋医学的に理想的な生活を行うことが重要だと感じました。実際の処方や施術などはもちろん専門家の方が行うのですが、スタッフ自身も食事、漢方薬、整体、鍼灸、それぞれについて専門家の方と勉強しています。

―鍼灸など、特に若い人には馴染みがなさそうですが…

龍崎:普通に考えて「鍼刺す」って狂ってますよね(笑)。めちゃくちゃ面白いカルチャーだと思いますし、それこそ若い世代にとっては慣れていないことだと思うんですが、そこで培われてきた考え方とか治療法をお客さまが体験するきっかけになって、日常に持ち帰って、家に戻ってからも漢方薬を飲み続けてくれたり、鍼を打ったりしてくれるだけでも、すごくうれしいなと思います。

「リトリート」を極めるうちにハマった“魔女活”。

―東洋医学や漢方の考え方に触れる中で、龍崎さん自身も“魔女活”にハマっていったとか。

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龍崎:漢方の勉強を始めたのも一つのきっかけですし、リトリートには季節を感じる素材を折り込むことにも意味があるなと思っていたので、私が率先して生姜からジンジャーエール作りを始めてみて、やっていくうちにちょっとずつ上達して幅も広がって、気づいたら“魔女活”になっていました。

―いろんなシロップありますもんね。

龍崎:けっこうハマってますね。あと、「層雲峡って何もないじゃん」って言われるし、それに対してずっと反論できない自分がいたんですけど、道路でつながっているところだけが世界じゃないじゃないですか。一見何もないんだけれど、道路でつながっていないところにはいろいろな自然や恵みがあって、それをもっと人が感じられるような状態にしてあげることって、ホテルでやる意義があるなと思いました。

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層雲峡だから魔女活

龍崎:層雲峡の土地柄にも“魔女活”が合っていると思います。層雲峡って「仙人住んでいそうだな」ってイメージがあって、水墨画の世界というか。なので、このリトリートや魔女活が自分的にはすごくはまっていると思っていて。違和感なく取り組めてるなと思います。


龍崎さんの感性で層雲峡を解釈し生まれたサービス、リトリート。自然の恵みを取り入れながら心と身体を整える術を磨くその様子は、若き魔女のよう。次回は、そんな龍崎さんの“魔女活”第一歩となったジンジャーシロップづくりや薬膳料理に迫る。

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