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その07 恐る恐る蜂の巣を覗いたら、見えてきたこと。

【龍崎翔子と巡る『魔女活の旅』】ホテルプロデューサーの龍崎翔子さんは、上川町層雲峡の『HOTEL KUMOI』のリブランディングを機に自然の材料から衣食住アイテムをDIYする「魔女活」に没頭。このマガジンは、そんな龍崎さんが暮らしをアップデートするヒントを求め巡る「魔女活」の記録です。

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三浦大樹さん/養蜂家/おきなわBee Happy

地域の自然を活かした営みのひとつとして、忘れてはいけないのが養蜂だ。美容的にも注目される食材ながら、ハチ=怖いということで近寄りがたく、直接その現場を見たことがある人は多くないのでは。そこで今回は、はちみつやみつろうの販売、さらにその過程を体験できるワークショップを行う養蜂家三浦さん(おきなわBee Happy)の協力の下、みつばちが飛び交う畑に向かった。

現場着後に突然始まる、ウェルカムみつばち。

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三浦: ではまずはじめに、突然ですがこの辺りにみつばちがいますので、見つけてみてください。時間は3分です。

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▲急な展開ながらも真剣に探し3分が過ぎようとしたころ

龍崎:あ!いました!

三浦:そうです!あれがみつばちです。今度はみつばちをよーく観察して。みつばちの足に、なにか付いています。

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龍崎:団子?

三浦:そうです。花粉の団子です。みつばちがこうやって花について、蜜と花粉を集めてる。蜜はお腹の中に入れちゃうんで見えないんですけど、花粉は足に付けてどんどんどんどん大きくしていくんで、巣に着くくらいのときになると、団子状の大きさになるんですよ。この体験はあとでまた振り返ると効いてくるんですが、次に養蜂場にご案内します。

女王蜂と働き蜂

三浦:みつばちはゆっくり動けば刺しませんが、たまにただ飛んでて髪の毛の中に突っ込むんですよ。そうするともう、パニックになって刺されることがあるので、今日は「面布」というものをお貸ししたいと思います。だいたい5メートル前くらいからゆっくりゆっくり近づいて、実際に箱を開けてみましょう。

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▲面布を絶妙に着こなす龍崎さん

龍崎:女王蜂はいるかな?

三浦: 箱ごとに女王蜂が1匹いて、子どもたちが、これだといま8,000匹から10,000匹くらいが家族。ご家族がいま目の前にいるって感じですね。女王蜂は見つからないかな。なにしろ1万分の1なんで。

龍崎:1家に1匹なんですか?

三浦:1家に1匹。お母さんですね。お母さん1人で全部子ども達です。

龍崎:生まれたときから女王は女王なんですか?

三浦:良い質問ですね。この巣房の中に卵がいっぱい生まれて並んでいて、この時点では平等なんです。だけど、あるときからこの巣房の10個くらいだけが、女王蜂に選ばれるんです。その巣房がなぜ女王に選ばれるかは解明されていません。その後、普通の幼虫はさなぎになるまでに蜜に切り替えられて育つんですけど、さっきの10個くらいの巣房だけはさなぎになるまでずっとロイヤルゼリーを与え続けられるんですよ。するとどんどん大きくなるんで、普通のさなぎの1.5倍くらいの大きさのさなぎができるんです。それが女王蜂。で10匹生まれてどうなるかって言うと、決闘が始まります。刺し合いですね。一番強い女王蜂が、次のこの箱の女王になる。ただ女王って言うのは、人間が名付けているだけ。みつばちにとっては、卵を産めるただの働き蜂の1人ってだけで、本当に仕切っているのは実は違うベテラン蜂だっていうのが、いまは分かってる。女王蜂は役割の中で生んでいるってことですね。

龍崎:大奥で言う所の、春日局が実は一番偉いみたいな。

三浦:ああ、そういうことです。仕切っているのはベテラン蜂だという研究結果もあるようです。

龍崎:うわ!そうなんですね!

ところで働かない蜂もいるんですか?

三浦:どうやらいないようで。休んでいる蜂もいますが、ずっと働かないかって言うと、みつばちの場合は三交代のシフト制らしいんで、勤務中に休憩を取っている。なので働かない者は、いないということになります。まあ、この話したら長くなるんでこの辺で。せっかくだから味見をしましょうか。

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龍崎:おいしい。フルーティですよね。なんかゼリー食べてるみたいな、とろとろの。

三浦:これがはちみつです。

三浦さんの人生南下計画

龍崎:ところで三浦さんご出身は?

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三浦:あ、実は僕東京なんです。東京生まれで。大阪で就職して、沖縄にやってきました。

龍崎:どんどん西へ。

三浦:そうですね、妻とは、人生南下計画って言って。ここで子どもが生まれて、去年2人目が生まれて。なんか面白いのが、大阪時代までは本当に、週末とか、その場所にいたことがなかったんですけども、ここに来てからどこにも行かなくなりました。沖縄来る前はダイビングばっかりやって、沖縄来たらぴたっとなくなっちゃいました。

龍崎:自宅の周りだけでも楽しめるからですかね。

三浦:そうですね。海の中は海の中でまたぜんぜん違う世界で面白いんですけど、ここに来て、青い海と同じくらい、もっと身近なこのヤンバルの森に支えられているというか、癒されているというか、体の一部のような気がして。こんなに人の気持ちって変わるんだなって、よく妻と話してます。

龍崎:養蜂は沖縄に来られてから始めたんですか?

三浦:そうです。

龍崎:養蜂やられる前は何をされてたんですか?

三浦:シーカヤックのガイドをしていました。独立したくて沖縄に来て、ガイドをはじめて、あれよあれよでみつばち屋になりました。

龍崎:あれよあれよで。何があったのかすごい気になる。

食べる花粉、ビーポーレン。

今日の主題はですね、この時期ははちみつがほとんどないんで。花粉なんです。じゃあ花粉を私はどうやって採るかっていうと、さっきの巣房をちっちゃいようじでほじくる、ってわけじゃないんです。ここに小さい輪がいっぱいついていて、ここを通らないと巣箱の中に入れない仕組みになっていて、物理的に足につけて帰ってくるんで、ここを通ると下に落ちるというわけです。

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龍崎:すごい。しかも色違う。

三浦:花粉だけを仕分けして、分別していく。花粉だけ、花粉とそうじゃないものに。せっかくなのでその選別作業をして実際に食べてもらうというプチ体験をしてもらおうと思います。早速近くのカフェまで移動しましょう。

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▲プチ体験の舞台となった屋我地島の古民家カフェ「CALiN(カラン)」

龍崎:これ全部の手作業でやるんですね、大変ですね。

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三浦:もちろん。コツはどんどん跳ねてくといいですよ。そうするとどんどん出てくるんで。これはビーポーレンじゃないだろっていうのが。

龍崎:このなんか緑じみてるのも花粉ですか?

三浦:緑も花粉なんですよ。花粉かどうか分かんなかったら、食べてみてください。おいしかったら花粉です。おいしくなかったらプロポリスだったり、ただの土くれだったり。実はこの黒いのも花粉なんです。

龍崎:え、花粉なんだ。ゴミに見える。

三浦:花粉なんですよ。食べてみると分かりますよ。いまの今日の一日の自然をぎゅっと閉じ込めたものがまさにこれです。この瞬間を切り取ったような産物ですね。雨の日はもちろんできないし、一日の湿度が高くてもこれがぷにゅぷにゅになっちゃうんですが、これ採れたて生の、ロウビーポーレンなんで、香りもあるし味もあるし。食べられますんで、色別に1個ずつ並べて、味比べしたら面白いですよ。

龍崎:花粉ってもっと小さいですよね。みつばちがこの大きさにしてくれんるんですか?

三浦:団子状にどんどん。花の蜜を吸いながら、本来ならこぼれ落ちてくる花粉を、花の蜜で水分を入れながら団子にしていくんで、ほんのり甘いのは花の蜜の味なんで、糖度が15くらいしかないんで、ほんのり甘いんですよ。はちみつみたいにがつんと甘いわけじゃなくて。これをみつばちは巣の中で80まで糖度上げていって。

龍崎:これちなみにどういった料理に使うんですか?

三浦:これは、まず僕のこの花粉だと、そのままサラダにかけたりとか、あとアイスクリームにかけたりとか、ヨーグルトにかけたりとか。味というよりも、彩りに使うやり方が多いですね。一般的には、チーズに練り込んだりとか。そうすると切ったときに花粉の断面がすごく可愛かったり、食べるときに香りがぶわーっと広がるっていうのもありますし。焼き菓子にも使えます。今日はパフェにかけて食べようと思います。

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▲CALiN(カラン)では三浦さんのはちみつの販売もしている。

龍崎:パフェ、めっちゃいい。

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三浦:はちみつを練り込んだパフェに、いま選別してもらったビーポーレンをそのまま、スプーン1杯分くらいふわっとかけて食べてもらう。

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龍崎:おいしい。ビーポーレンの食感はカボチャみたい。芋とか、でんぷん系の味がします。

三浦:今日は、最初のみつばちを探したり、花粉の選別の時間を無くそうと思ってたんですけど、やっぱ入れようと思って。でも入れたからこそ、この、

龍崎:ありがたみが。

三浦:そう。これみんなポッといきなり出てきて、こういうもんですって言って、アイスにかけたら「ああそうか」で終わるんですよね。ぜひ今日のできごとを屋我地島の自然とみつばちといっしょに一連の体験として、思い出として持って帰ってください。

高まる養蜂熱

龍崎:三浦さんの生命への慈しみがすごい!物言わぬ相手を知ろうとするという、第六感じゃないけど、また別のアンテナがすごい立っていらっしゃるで、その感受性がすてきだなと思いました。そして、はちみつやビーポーレンは本当にその土地の自然をそのまま食物にしたみたいな感じだった。本当にフードは風土だなって思いましたね。北海道は冬の厳しさがあるけど、夏の間だけホテルクモイの屋上に置かせてもらってとかできるかなあ。養蜂熱高まっています。


文字通りその土地を「味わう」手法としての養蜂は、新たな観光資源として大いに生かされる可能性がありそうだ。

■おきなわ Bee Happy
沖縄本島北部、屋我地島を拠点にしている養蜂農家。自然なままの養蜂を心がけ「みつばちが幸せになればみんなが幸せになれる♪」をテーマに活動している。
INSTAGRAM https://www.instagram.com/okinawabeehappy/
■CALiN
屋我地島に佇む古民家を改装したフォトジェニックなカフェ。
INSTAGRAM https://www.instagram.com/calin_cafe_zakka/

coordinate & photo セソコマサユキ

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