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雑奇帳vol.4:時には太く、時には細く、でも永く

自分には女性の親友が居る。
かれこれもう30年近くになる。出会ったきっかけは知り合いの女性の同級生。結構世間知らずのお嬢さんで、いろいろと驚かされたものだ。
書類のパンチ穴の開け方を知らなかったり、焼肉屋に行った時は肉の焼き方を知らないなど、今では考えられないような21歳の彼女だった。

距離が近くなって、よく遊ぶようになって、やがて付き合うようになった。
普通に交際していたと、今では思う。やがて緩やかに2人とも仕事が忙しくなり、何となく別れた。若さもあったのかもしれないが、思えば不思議なくらいに悲しくなく寂しくもない別れだった。その話を後日に彼女に聞いた時、同じ様に感じてたことに驚いたものだ。
別れたあと2年くらいは特に連絡を取ることもなく過ぎていき、しばらく経ってお互いに大事な人が出来ていた。ただ、お互いがそれを知ることもなく、再会は意外な所から始まる。

彼女の先輩が、自分のツレと付き合いだした。という、いきなりの横から巻き込み事故のような展開。再会した僕らは付き合っていた時の様にはいかないまでも、お互いのいい距離感を保ちつつ、そのカップルが結構トラブルメーカーな事もあり、また自然と合う回数も増えてきた。昔と違うのはそれぞれにパートナーが居て、その相談もするようになっていった。

やがて、お互いが大切な相手と結婚することになる。しかもお互いが親友として披露宴に招待しあった。思い出すと、向こうの旦那は鋭い視線で見ていた記憶がある。そりゃ怪しいよね。

お互いが結婚しても年に1度は食事をする関係になっていた。もちろん、二人っきりではなく共通の友人を必ず交えてね。そんな友人関係は自分が結婚して10年目に大きな節目を迎える。
自分が妻と離婚した。
この時、離婚の大変さを目の当たりにして、かなり疲弊していた。それを知った彼女はいろいろ話を聞いてくれた。塞ぎこんでいる自分を肯定してくれた。そして彼女の前で初めて泣いた。
彼女はいままで見てきた自分の事、いい所や悪い所も含めて自分の為に涙を流しながら、帰えらないといけないギリギリの時間まで話してくれた。
旦那も子供もいるのに、間違いなくその時だけは自分を心配してくれていた。
『ありがとう』その言葉しか思い当たらない。その言葉を伝えた時、彼女はこう言った『結婚する前、彼氏の事で私もいろいろ相談してた事が何度もし、今更みずくさいわ』って。
まだそんなこと覚えていたのかと思ったけど、でも嬉しかった。
それが、彼女と出逢って19年目の時だった。

それからまた10年が過ぎ、自分が50歳と半年が過ぎた。決して男女の関係には戻らないだろうけど、もうお互いにいい年齢になって、それぞれに家族もできたけど、老人になっても親友で居ようなって、先月パンケーキを食べながら、ワインで乾杯したのでした。

自分はあれからまだ一人だけど、そんな人生を歩んでいます。30年経ったけど、あともう少しの間、俺に構ってくれよ♫

“親愛なる友人” へ 
 ”ありがとう。これまでも、これからも”






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