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地形図の楽しみ方 一例

 地形図や航空写真を見るのって楽しいですよね。

 突然ですが問題です。
 下記の地形図をご覧ください。

図1
地理院地図より

 こちらの図は、亀山市の北東の端にある能褒野町付近の地形図です。中央には古川電工三重事業所がありますが、この付近、何か違和感はありませんか?

 次の図をご覧ください。

図2
地理院地図を編集

 この赤枠で囲った部分だけ、その周囲と比べて道路の間隔や方向が違うことにお気付きでしょうか?工場の敷地だから、というようにも見えますが、工場の敷地は左下の正方形の区画のみです。


 さて問題です。
 この赤枠の部分だけ、道路の整備の仕方が異なる理由はなぜでしょうか?
 
お考えください。


ヒント1:赤枠の中にはかつて何かがありました。

ヒント2:この付近から北に向かって台地が広がっており、水はけがよく起伏の少ない地形となっており、茶畑のほか紫蘇が栽培されています。そんな、起伏の少ない土地に昔あったものといえば…?








答え

 答え:赤枠内には、太平洋戦争中に使用されていた飛行場がありました。

図3 1947年米軍撮影
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスより引用

 上図は戦後に撮影されたものですが、この時すでに周囲とは違う土地利用がされていることがおわかりいただけますでしょうか。

 ここには、北伊勢陸軍飛行場と呼ばれる飛行場があり、1941年に作られて以降、陸軍のパイロットの訓練や、戦況激化時には前線基地への中継点として利用されていたそうです。
 北伊勢飛行場の少し北にももう一つ飛行場(陸軍鈴鹿飛行場)があり、こちらは後の航空写真にはっきりと十字の滑走路の痕跡が残っています。

(参考:亀山市史通史編 近代・現代 第7章 第二節 第四項)

図4 1947年米軍撮影
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスより引用

 ということで、この区画のみ道路の整備の仕方が異なる理由は、ここにはかつて飛行場が存在しており、そのため周囲の田畑とはことなる区画整理がなされたため、ということでした。

 正解できたかたはいらっしゃったでしょうか?




つまりどういうこと?

 ということで私が伝えたかったのは、地形図や空中写真の楽しみ方としてこんなことがあるよ、ということです。

 特に楽しいのが、こういった地図を詳しく見たときに、自分の知っている別の知識と深く結びつく要素があることに気付いた瞬間です。

 今回の例で言うと、私は北伊勢飛行場のことを別途知っていたのですが、ふと亀山市の地形図を眺めていたら、飛行場跡付近の道割りの違いに気付いて感動したことがあったわけです。
 それが5年前のこのあたりの一連のツイート。

 ということで、地形図や空中写真が国土地理院からWeb上で公開されていますので、ぜひみなさんもじっくり眺めてみて新たな発見をしてみてください。


 また、今回参考にした亀山市史も、こちらもすべて詳しくWeb上で公開されていますので、ぜひご覧ください。ここまで詳細にWeb上に歴史を公開している市町村ってほかにあるんだろうか?


 それでは、また。

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