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『仮面ライダー BLACK SUN』の個人的な総評(3/3)

※本記事は該当作品や原典作品、関連作品のネタバレを含む可能性があります。十分にご注意ください。また、添付画像は公式サイトのOGP設定画像をお借りしています。権利的にアウトなら後程差し替えます。

最後に、子供番組にルーツを持つコンテンツとして、あるいは「仮面ライダー」として気になったところを挙げてみたい。

「子供騙し」は最大の御法度

仮面ライダーや、特撮ヒーローモノに限らず、いわゆる「子供向け番組」や「ジャリ番」と言われる作品、「テレビまんが」と括られそうな作品において、安直な「子供騙し」は絶対にやっちゃいけないこと。

特撮だろうとアニメだろうと、「子供が見るモノだから」と作る側は安易な嘘を盛り込まない。本物を見せようと、時に大人向け以上に難しいお話、本物を作ろうと取り組んできた。

だから、半世紀以上の歴史あるコンテンツ、シリーズに育っているし、見る方も、作品ごとに「大人向け/子供向け」の線引きなんかしていない。そこにあるのはただのレーティングに過ぎない。

でも、本作のところどころに挟まれるシーン、原典のファンに向けたお手盛りっぽいシーンの数々は、ただのオタク騙し、子供騙しに見える。これをやっちゃいけないっていうのが、今のニチアサでも取り組まれていること。現場の皆さん、先人が作り上げてきたものをちゃんと理解していたら、最終話の冒頭であんなことはしない。

アレはシリーズのファンを敵に回す行為にしか見えないけど、アレで盛り上がるファンもいるらしいから、不思議なもんだよね。

仮面ライダーの50周年記念作で「50年前に戻りたい」と「もう、戦わなくていい」はアカンよ

本作の位置付けって、「仮面ライダーBlack」のリブートでもあるけど、そもそもが仮面ライダーシリーズの50周年記念作。その作品の最終盤で、シナリオの都合とは言え、「あの頃(=50年前)に戻りたい」はあかんのちゃう?

仮面ライダーが一作一作、50年かけて培ってきた先に本作があるんだから、それを「無かったことにしたい」みたいなセリフで締めようとするのはダメでしょ。

それに、仮面ライダーと言えば、藤岡弘、さんの激闘の歴史でもある訳で。初代が色んな出来事に見舞われながら戦って、番組を離れたところでも半世紀、一人の侍として戦い続けたから50年という歴史を築けたのに、その記念作品で、その流れを継ぐ存在に対して「戦わなくていい」とトドメを刺すような演出、メッセージはどうなのよ。

子供番組の一角としてもあり得ないし、仮面ライダー作品としても、あり得ないの一言。

おまけに、「本当に仮面ライダーをちゃんと研究したの?」と。

初代のオープニングで、「仮面ライダーは人間の自由のためにショッカーと戦う」とナレーションが付いてるし、その後もことあるごとに、「自由のために戦う」存在であると明言されている。正義そのものになっちゃいけない、振りかざしちゃいけないというメッセージも、時々挟まれている。あくまでも、正義に寄り添う味方である、と。

左巻きの精神で、「我々が正しいんだ」みたいなのが危ない、危ういってことで生まれているメッセージもあるのに、そこをちゃんと調べもせず、「これが正しい」を打ち出して、テロリズム礼賛で終わるのはダメすぎる。

仮面ライダーって、ウルトラやスーパー戦隊に比べるとどこか不良っぽくて、独特の泥臭さ、ワルさも漂うのが魅力でもあるのに、そこにきて抹香臭いお説教、左的な正しさを突き通すのも、筋が悪い。仮面ライダーが何たるかが、全く分かってない、理解できてなかったのでは、と。

Blackのリブートとして「光太郎vs信彦」が描けてない

大事な縦軸の一つ、南光太郎と秋月信彦という二人の男の戦い、葛藤という部分が今ひとつだなぁ、と。

創世王や怪人、キングストーンの設定がボロボロで、劇中での扱いもグダグダのせいで、単純に戦わざるを得ない理由が見えない。おまけに、戦いたくない理由もイマイチよく分からない。マスクの下ではもしかしたら泣いているのかもしれない、という悲哀も特に伝わらない。

昭和と平成の過渡期というタイミングにあったBlackは、培われてきたサービス精神、エンタメ性もかなり高いレベルで盛り込まれていて、文学性もさることながら、エンタメ作品としての仕上がり、アクションの外連味が一味違う。

そこと比較すると、本作は仮面ライダーとしてのエンタメ性や面白さ、サービス精神にも欠けるし、アクションも外連味がない。
必死にキックを取り置いてたのなら、原典のようにもっと丁寧に扱う、フィニッシャーとして使うようにして欲しかった。あんな空振りみたいなパンチで終わるぐらいなら、キックの打ち合いで終わるぐらいが良かったなぁ。

仮面ライダーBlackとして、魅せるべきところを魅せきれず、クライマックスに持ってきたいアクションシーンも、政治闘争を間に挟むことによってスピードダウン。

「怪人差別? どうなるの?」な予告から、どんどん盛り下がっていってあの最終話では、最大瞬間風速が高くても、すぐに忘れられる。これの何処が、Blackのリブート?

本作以上にエンタメ、サービス精神の高い続編、RXを今回の座組みで期待する声もあるらしいけど、白石組にエンタメ作品は無理。RXは今作以上に無理だ。

江川先生の「THE FIRST」のコミカライズの次に来るぐらい、酷い出来じゃない?

白石和彌のすけべ心、下心は求めてない

「これを見せておけば、分かってると言われるんでしょ?」みたいなシーンが随所に詰め込まれていて、これはサービス精神、エンタメじゃなくて、監督の卑しさが出た子供騙しみたいなもの。子供も騙されてはくれない。

彼の界隈ではウケるだろうけど、一般大衆は、2.5を付けている。それが全て。白石和彌にエンタメ作品は作れない、あるいは作ってもらうオーダーを出しても、まともに作ってもらえない。

50周年記念の依頼で、片手間にこれを出してくるんだ。ナメてるとしか言いようがない。エンタメ、東映特撮、仮面ライダーを舐めちゃダメ。

「義理欠く、恥かく、人情欠く」の三欠くと言われる東映でも欠くことがなかった面白さ、エンタメ性、サービス精神を欠いちゃった。少なくとも脚本家は、東映出禁もあり得るかな。

3回に分けてぶちまけた、『仮面ライダー BLACK SUN』の個人的な総評は以上。重複する箇所、読みにくい箇所も多々あるかと思いますが、そこはご愛嬌ということでよろしく願えますと幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 ただ、まだまだ面白い作品、役に立つ記事を作る力、経験や取材が足りません。もっといい作品をお届けするためにも、サポートいただけますと助かります。 これからも、よろしくお願いいたします。