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傾奇なハレの一年、『ドンブラザーズ』

※ 添付画像はテレビ朝日公式サイト(https://www.tv-asahi.co.jp/donbro/)のOGP画像をお借りしました。権利的にアウトなら差し替えます。

先月26日(日)に最終回を迎え、Amazonプライムの公式配信でも最終回まで見られるようになった『暴太郎戦隊 ドンブラザーズ』。個人的に想いを発信する前に復習しておきたい回もチラホラあったので、着手が大変遅くなりました。

直接的なネタバレはほぼしないと思いますが、気になる方はご注意ください。

白倉&井上大先生による、一年に渡るお祭り騒ぎ

前年の『ゼンカイジャー』もかなりトンチキな作風でしたが、今回はそれが霞むレベルのフルスイングぶりで、一言でまとめるなんて無理なんですが、敢えてまとめるなら、白倉Pと井上俊樹大先生プレゼンツのお祭り騒ぎ、一年に及ぶ宴でしたね、と。

第一話から「祭りだ、祭りだ」と始まる訳で。そこに、破天荒な作品に持っていきがちな白倉Pと、ライブ感でドンドン展開させてしまう井上大先生がタッグを組めば、普通の作品、普通の戦隊になるはずもなく。

対外的にも色眼鏡で見られがちなジャリ番、ニチアサのスーパー戦隊シリーズ。そこへクソ真面目に「普通」を装うぐらいなら、過剰なまでに傾いてやれと出てきた煮凝り、肉も野菜も脂もモリモリマシマシな一杯が今作だったかな、と。

「お祭り」かつ「御伽噺」に「歌舞伎」を塗したら、常識の範疇に収まるはずがなく。お祭りというモード、ハレという異常な枠組みで振り切ってもいいじゃない。それが、例のお神輿、「祭りだ、祭りだ」の囃子に現れてたのかな。

白倉Pと井上大先生によるトンチキ歌舞伎な出し物を、かぶりつきで弁当でも食べながら楽しませてもらう。そういう戦隊だった気がします。

ハレなら、声を出して笑ってもいいというメッセージ?

スーパー戦隊シリーズの原点である白浪五人男に立ち返って、歌舞伎の要素、和の要素をてんこ盛りにしながら、「声出し」や「声掛け」もふんだんに盛り込んでいたなぁ、とも。

それが良い悪いは特になくても、マスク生活、あるいは飛沫に気を使って黙食とか、大人以上に子供たちは中々笑いにくい時代、それも大声を出して高らかに笑うなんて難しい時代に、ドンモモタロウですよ。

あくまでもハレの世界、フィクションという枠組みでなら、(変身後の)マスクをしながらでも、大きな声を出して笑ってもいい。大人も子供も、もっと笑っていい、さぁ笑え、喜怒哀楽の感情をむき出しにしろ、みたいなメッセージも込められていたような気もします。

桃であり、桜であり、少彦名な桃井太郎

第一話でわざわざ神輿の上、それもエンヤライドンに跨って戦場へ飛んでくる時から思ってたけど、薬の神様でもお馴染みの少彦名っぽい要素は確実に持ってそうだなぁ、と最終回でも改めて。

桃が一種の霊薬、不老長寿に繋がる果物であり、太郎汁で復活したシーンなんかもあったし、作品の根底には仏教と仙人思想がどっしり横たわっているんだろなと思っていたけど、役目を終えると散っていく姿、散り際を寂しく思うところなんかは、だいぶ早いけど、「桜(ソメイヨシノ)」っぽいものも、彼には持たせてあったんだろうなぁ。

シロクマからシロウサギへ変わったのは偶然らしいけど、白ウサギといえば因幡だし、因幡の白兎といえば少彦名だし。常世の世界へ一度帰って、もう一回戻って来て縁を結び直すのも、少彦名だったからなんだろうな……。

つまり、歌舞伎の演目でもあり、桃井太郎という花が散りゆくまで愛でる花見の宴席でもあるのが、この一年間のお祭りであったのかな。ーーなどと、申しており。

散っていくことをしっかり描いて、『クウガ』っぽく終わりをきっちり描いたのも非常に良い最終回でした。

スーパー戦隊の枠を飛び出した異色作

『ゼンカイジャー』もスーパー戦隊としてはかなりエポックだったし、スーパー戦隊シリーズというのは基本的のどのシリーズも常に大なり小なりのエポックはあるんだけど、「30分の普通のドラマ」に収まることを辞め、フルスイングで「フィクションですよ」と振り切って枠を飛び出したのが、今作だったように思います。

次回作も、今どきの合成で連続ドラマよりは映画っぽいレベルのファンタジーをやるっぽいので、「スーパー戦隊」はドンドン「ハレのフィクション」や「傾いた作風」へ挑んでいけるんだぜっていう意思表示もあったように思います。

スーパー戦隊のお約束をかなりぶっ壊した、『ドンブラザーズ』。井上特撮作品でケリをつけられなかったアレコレも昇華しながら着地させてる部分もあるので、膨大な情報を浴びたい方は是非ともドンブラ中毒からのドンブラロスへハマりましょう。

本当に、非常に良い最終回でした。
いやぁ、アッパレですわ。

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