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『仮面ライダー BLACK SUN』の個人的な総評(4/3+1)

※本記事は該当作品や原典作品、関連作品のネタバレを含む可能性があります。十分にご注意ください。また、添付画像は公式サイトのOGP設定画像をお借りしています。権利的にアウトなら後程差し替えます。

三本で書き切るつもりだったのに、分割したために書けなかった部分、言及できなかった部分もあるような気がしたので、おまけのもう一本。

マストのワードも、余計な追加も、調理できてない

仮面ライダー50周年記念の一角として、あるいは仮面ライダーBlackのリブートとして外しちゃいけないマストのワード、創世王、キングストーン、怪人、光太郎vs信彦、(外連味のある)アクション、(ご新規含めた)ファンサービス。これが全部破綻してた。回を重ねて見れば見るほど、破綻してるのがどんどん分かってくる造りなのも、サービスとしていただけない。尻すぼみはダメだし、創世王周りのオチ、ゴルゴム周りの落とし方も弱い。

自分達で追加した余計な要素、「50年前」や「怪人差別」、左寄りっぽい政権批判、「いわゆる在日」絡みの表現等々、これも物語世界やシナリオ、ストーリーテリングの縦軸、面白さに寄与しているとは思えない。

みんなが大事にしてきたブランドで、面白くもならないのに余計なことをやるなよ、という批判が出てるんだと思う。付け足した要素、要因に振り回され、コントロールできなくて持て余した結果、惨憺たる仕上がりになっているのが、「(白石)許さん!」に繋がるんでしょう。

余計な要素足さずに、最初から提示されていた要素で面白くしろよ、と。後から足すなら、元の要素と上手く組み合わせて、どっちも余すことなく使えるようにしなさいよ、と。結局、マストのワードも余計な足し算も、物語世界の「空気感醸成」、キャラの無理矢理な味付けにしか生きてない印象で、「面白」くできてない。無理な立て付けだから、ご都合主義の脚本になってる。そこが問題じゃない?

バンダイとか、造形の人たちが出してきたものに振り回されて、何かになりそうで何にもならない半端なものに仕上がってしまった。これは白石監督だけでなく、白倉さんのプロデュース失敗ってことかな。(角川、大映さん側のプロデューサーに丸投げだったらしいけど、そこも含めて)

テーマも、落とし方も陳腐だった

「悪とは」とか「正義とは?」とか、「何と戦うべきか」とか。最終的にテロリズム礼賛で着地してたけど、あの辺りも、仮面ライダーを含む三大特撮ヒーローなら、一通り触ってるテーマ。

もっと面白く、もっと上手に縦軸に組み込んで、いわゆる「子供向け」とか「大人向け」に限らず、いろんな作品、ドラマシリーズで一通り抑えてる。

そこも取材せず、白石組の陳腐な結論、テーマを見せられても、「浅いなぁ」とか「薄いなぁ」と。波はあるけど、東映特撮の脚本や作品って、やっぱり面白いんですよ。基本。サービス精神、エンタメ性も高いから、満足度も高い。アクションも、外連味に溢れてる。

白石組は、そこがない。そこが欠けてるのに、難しいテーマに手を出して、変に捻った答えを出しちゃった。白石和彌らしさを出す結果がコレならいいんだけど、そこに作家として本気の覚悟も見えなくて、中途半端なお手盛りな打ち出し方に思える。どうせなら、もっとフルスイングすればいいのに、思いも体重も、個人の思想も乗っかってない。ただただ、「薄い」だけ。浅はかだなぁ、意外の感想が出てこない。

最後のテロリズム礼賛っぽい終わり方も、問題だと思うよ。コレを楽しみに見ていた人の中には、いわゆる「少年仮面ライダー隊」みたいなものに参加してた人もいるだろうし、エキストラとして原典作品で「戦う子供たち」みたいな出演をした人もいたと思うんだけど、その人たちも、白石和彌の手によって「テロリストの一角」みたいなレッテルを貼られた形にならん?

彼らは正義の味方、弱い者のために強いものと戦う人を支える人でありたいと、まっすぐな気持ちで参加していたのではと思うんだけど、その人たちに対して、ああいう妙な角度をつけたレッテルを貼るのはどうなのよ。個人的にはダメだと思うけどなぁ……。

創世王は、監督の才能か、「そっち」の映像畑?

今の白石和彌、あるいは周辺のクリエイターたちでは、コレぐらいの作品しか作れませんよっていう回答なのであれば、劇中で死んでいく創世王は、監督自身の才能だったのかなぁ、とか。

黒くて悲惨なのは、白石和彌を取り巻く制作環境、マネジメント環境であって、そのど真ん中にいる王様が死んでいっている、と。あるいは、監督のルーツである若松プロや、若松プロ出身でテロリスト礼賛映画をスピーディに撮影しちゃった人を含む、「そっち」の映像畑人材を取り巻く環境、才能を擬人化していたのかなぁ、とか。

左寄り、中韓寄りのクリエイターは、次期創世王を見つけられず、次の怪人を生み出すこともできずに滅んでいく。それでも、弱いものとして陰ながら戦い続けていくよ。そういう化け物ですよってお話なら、あの結論でも「好きにしたら」なんだけどね。

仮面ライダー(Black)を貶めただけ

白石和彌がやりたいようにやるだけなら、「仮面ライダー(Black)」の看板を背負ってやらないで欲しい。どうせやるなら、せめて「面白く」。エンタメ作品として、「コレは凄い」と思えることをやりなさい、と。

厳しい批判をする人たちの根っこにあるのは、そういう感情なんじゃないかな? 先人の作り手たちや、長く愛してきたファンが大事にしてきたブランドを使って、ただただ毀損するだけなのは、止めてくれよ、と。

公開一ヶ月も立たないのに、もう話題性にも欠けてて、制作に時間のかかる映像系の批判以外、新しいものもほとんど見られないレベルで下火なのが、本作に対する受け手のアンサーでしょう。

怒るほどでもない、スルーが妥当。触れなければ、存在もなかったことになる。そのレベルの失敗。プレバンのベルトが大失敗したら、本体のシリーズもダメになるかもなぁ。そんな杞憂も抱くレベルの作品でしたね。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 ただ、まだまだ面白い作品、役に立つ記事を作る力、経験や取材が足りません。もっといい作品をお届けするためにも、サポートいただけますと助かります。 これからも、よろしくお願いいたします。