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『仮面ライダー BLACK SUN』の個人的な総評(1/3)

※本記事は該当作品や原典作品、関連作品のネタバレを含む可能性があります。十分にご注意ください。また、添付画像は公式サイトのOGP設定画像をお借りしています。権利的にアウトなら後程差し替えます。

アマゾンプライム、「Prime Video」の独占配信として公開されたのが先月28日。ちまちま視聴し始めたのは公開後1週間たった頃から、1日1話ずつぐらいのペースでゆっくりと。全10話を完走してから1週間以上経つかと思いますが、「我が意を得たり」な感想をあまり見かけないので、そろそろ総評をまとめようかと。

ちなみに、筆者のTwitterアカウントでも色々ぶちまけてたりしますが、そこと重複するような内容も含みます。その辺も含め、諸々のご理解、ご了承くださいますと幸いです。

また、筆者の背景も整理しておくと、原典作品の放送時期に生まれた世代なので、リアルタイムでは見ておりません。続編を含め、大掴みのエピソードを知っている程度です。そこに加え、白石和彌監督作品はどちらかと言うと否定的で「ノットフォーミー」と思っていることも、先にお伝えしておきます。

創世王とキングストーン、怪人が全く捌けてない

仮面ライダーBlackのリブート作品として、一番引っかかるのはコレ。もちろん、「南光太郎と秋月信彦のお話」という大きなテーマ、縦軸もありますが、そこと加えて外しちゃいけないのが、創世王、キングストーンと怪人というキーワード。

これをどう料理して、どんな風に大人向けの作品、世界に向けた作品として物語の縦軸に組み込むか。そこが最大のポイントだったはずなのに、結局、物語を積み重ねれば積み重ねるほど、グダグダになっていくというか、盛り下がっていく要素になってしまったかな、と。

縦軸のお話、あの世界の謎解きとして、根っこからブッ刺さるようなお話にしておかないと、終盤のあの展開では、原典をよく知らない人、プラスアルファの味付けが気にならない人でも、「なんでやねん」と不完全燃焼になるのでは。

脚本の問題によるご都合主義、大小様々な「なんでやねん」は多々あるんだけど、一番大きな部分、外しちゃいけないところで、そもそも当てるつもりがなさそうな出し方はアカンのでは?

怪人という要素もイマイチ捌けてなくて、ゴルゴムや三神官、ブラックサン、シャドームーンという要素も、力関係の序列含め、情報の整理や作り込みが甘かったかな。

創世王があの感じ、三神官があの感じでは、ブラックサン側が負ける要素が見えないというか、力関係的に上位に思えるので、倒すべき悪のサイドが弱く見えるのも、どうなのよ。いつでも勝てる相手、取るに足りない相手を半世紀もほったらかしにしてた主人公、幽閉に付き合ってた次期創世王候補のシャドームーンは、どういう行動原理だったのかが、全く分からない。

脚本以前の建て付け、世界観の作り込み、構想の部分、キャラクター造形が浅すぎて、政治闘争の稚拙さ云々、差別表現云々の問題も吹き飛んでしまうんだけど、そこが気になったのは私だけ?

「仮面ライダー」を外した方が、良いものできたのでは?

変身シーンも、アクションシーンも、怪人の扱いも。取ってつけたような印象で、前述の通り、大きなキーワードも上手く落とし込めていなかったことを踏まえると、「仮面ライダー」や「仮面ライダーBlack」要素を全部取っ払っちゃった方が、白石和彌組としては得意な土俵を作れたのでは、と。

仮面ライダー50周年企画の一環としてオーダーされたはずだけど、明らかに邪魔じゃなかった? 白石和彌監督が得意な作風、脚本が好みでない人間的には、そっちばかりだと見る気もしないんだけど、「そっち」だけで一本仕上げてしまった方が、ドラマ的なクオリティ、縦軸の面白さも上がったのではないかしら。

少なくとも、今回の脚本家さんがどれだけ頑張ったところで、仮面ライダーとして、あるいは仮面ライダーBlackとして面白い作品になったとは思えない。

邪魔ならやらなきゃ良い。できないなら、オーダーを受けなきゃ良い。オーダーを受けちゃったけど、他の作品もあるからと片手間に、バンダイや造形の人任せで出てきたものに合わせて、適当なことしたんだろうな。そういう風に邪推しちゃう。

黒いルーさん、ヒロイン、俳優陣は非常に良かった

ルー大柴さんの見せ方や、『The NEXT』のヒロイン、石田未来っぽさをちょっと感じた平澤宏々路、70年代ファッションに身を包んだ中村倫也に、偽本郷みたいな70年代の三浦貴大、惨めさもよく出てた現代のビルゲニアも個人的には非常に良かった。

脚本のせいで、高畑淳子のマリバロンを超えるに至らなかった吉田羊のビシュムも、アレはアレで良いと思う。ウルトラや東映特撮、ニチアサにも出てたキャストの皆さんも、いい味してた。

特に、ルーさんや三浦貴大は当たり役じゃないかと思うぐらい、個人的にはグッと刺さった。演技や「画」としては悪くないのに、脚本の拙さ、脚本以前の躓きをカバーするには至らず、現場の頑張りが作品の面白さに反映されなかったのも、気の毒に思う。

50周年記念作品で、2.5/5はアウト

アニバーサリー作品、予算と締切の制限は多少あったにせよ、どんな形で作るか、どんな中身にするかはかなり自由があったはずなのに、中途半端な長さの10話を持ってきて、全世界同時配信で5段階中ど真ん中は、明らかに失敗作。

「50年後も見られる作品に」みたいなことをインタビューでしゃべってるけど、公開一ヶ月でかなりトーンダウンしてるし、話題性が年を越せれば十分じゃないかというレベル。

良い作品であれば、賛否があってももう少し上。3.5ぐらいに落ち着くはずが、平均の2.5は擁護のしようがない。同時に見られる原典と続編が思い出補正も効いているとはいえ、4.5を叩き出してるんだから……。

他人の作品、それもアニバーサリーでこんな結果出したらダメよ。政治表現、左旋回以前の問題で面白くないっていうのが、個人的な総評。

とりあえずザックリと、気になるところを出してみた。まだ二本分ぐらい、続きます。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 ただ、まだまだ面白い作品、役に立つ記事を作る力、経験や取材が足りません。もっといい作品をお届けするためにも、サポートいただけますと助かります。 これからも、よろしくお願いいたします。