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金木犀の夜

「なんかね、ずっとね、満たされない感覚なの」
大学の友達と夜道を歩きながら
わたしの灰色のもやもやがぽつり、とこぼれた。

ずっと闘ってきた就活が終わって
私は心も体も自由になった
と、思い込んでいた。

好きな友達に会う約束がたくさんある。好きなものが食べれる。好きな本が読める。好きな時に寝て、好きな時に起きれる。
1年半ぐらい我慢したり制限してきた分
しあわせだ。うん、しあわせ。

なのに、なんだか、満たされない自分がいて
原因は考えてもわからなくて
最近、ずっとそんな感じだった。

答えがでないまま、まとまらないまま
夜の気温と空気と心地よさに任せて
ぽつぽつとこぼしたわたし。
そしたら大学の友達が

「もっと頼っていいんだよ、頼る先を、分散させるの。居場所をたくさん作る。しんどくなったら、そこにまっすぐかえるの。」

って優しい声で寄り添ってくれて
ずっと堪えてたのに
駅前の広場でぼろぼろ泣いてしまった


頼るのは苦手だ。
期待して、裏切られるのが怖いから。
依存して、消えてしまうのが怖いから。

でも、もっといろんなものに、ひとに、頼ってみてもいいんじゃないかって思えた

頼られるのは嬉しい。
自分が必要とされていると感じるから。
自分が愛されてると感じるから。

でも、自分が頼ることで、初めて、頼られる関係が維持されるんじゃないかなって思えた

「強くなろうとしなくていいんだよ」
今日貰った優しい言葉は、お守りにしよう。

優しさで満たされていく夜を、
金木犀の匂いが消えない夜を、
わたしは、きっと、この先何度も思い返す。