回文短歌まとめ

夜夜中雨夜のカノン噛み砕く 未完の彼の世 真赤な夜よ
剥がれたと、そう漏らす日の眠い恋 胸の火すらも嘘と誰かは
ルカは書く禍機の得し丘の御架を彼を 神の教えの規格化図る
馬鹿な人! 疼く胸打つ喜劇書き 劇通眠く日一日半ば
潮時さ 比喩足しすぎて尽かす明日 かつてキスした指先遠し
夜闇を羽羽矢が走り、胎奪う 至りし墓屋 母を見遣るよ


花の蜜望む辻風 屠る春 父母急かし摘む その罪の名は
発途秘む その深海で靴に火に付く定冠詞 望む一つは
初恋の御棺は消ゆとも午後白し 此許 雪は 君の遺骨は
火星去る 久遠の仮装 大本も大嘘カノン送る在世か
のめしては諍い飽きて懲りてみて 利己的哀歌 最果て標野
辻褄は巡り合わせの今朝だった 酒の世話有り 酌めば末日


奇抜な洲 遠浅で浮く数人に疼く腕 さあ落とすな椿
灰になる 千百秋咳きて来向かう禍 無期的積痾 落ちるな新葉
聞き漏らす 居合わせた月 千度の非 断ち切った世話 愛すらも危機
決まったの 繋いだ騏驥が僕のもの 駆歩が聞きたい夏の竜巻
妄想と野次も懺悔の悩みのみ 嫌なの 現世も視野闘争も
槌引の胸株聳く砂留めと な掬ひそ 生く合歓の木漬ちつ


挑む恋 沖つ白波の寄せる夜 施与の爆発 競い込む問い
見聞く場さ 左右に真実 傾ぐ欲 四月真摯に嘘裁く君
雁と昼 行く春看取り 起こす水 氷と見るは燻る灯蛾
言いかけた・見聞きした歌を抜き出した 衣を片敷き 君だけが良い
紫薇さする 暮れ残る白 弧光灯 心知るこのレグルス錆びし
閉じる傷 杞憂のふりで集る蛭 偏照不能 行き過ぎる試図


恋は退く 育むは疾し 走れ我 しばしば歯向く琥珀の背後
淫な視座 失す指ならば螺髪断つ ばらばらな比喩吸う 狭し難易
花の野も残れ 微かにどの靄も 祝詞逃がす彼 この者の名は
野路の田菜 催花雨の思慕 御灯明か 網星の雨下 いざ灘の篠
倶舎も無い礫こそ墓屋 図題舞い 足す夜蛾は其処 綺麗な模索
這う野晒れ 直ぐ二の矢つぐ五百枝さえ 老い朽つ矢箆に崩れ左脳は
屈す小意気 陸路か怪異 野も湿し 物言いが課試 客気以後空く
燻れ過去 西に捨て果て潰えた絵 行って果てずに死に焦がれゆく
夢寐か嘘 逃す辻褄 各界が栂松報す 彼の造化秘む
離すのはやがて下期が冥き時 落書きもして 茅場の砂は
薔薇か歯牙 終は付き合う 楽な罠 食らう秋つ葉 厳かし枯葉
芝に火屋 悔いて紛うか 雲過す 捥ぐか羽化待て 行く弥帆に恥
腹と水 胃の唾隠らく真中に餓 鈍九月 芒墨と騾馬
死馬の徒 思い辛くも泣かず 足す金葎 ついモーター伸ばし
列も画意 絵師絵描き成す霞む舶 賺すな着替え 侍衛が縺れ
海や島 冷めたいと沸く 煮立つ蜜 谷桑と居た目覚ましや撓


息急きて疎んじる愛 数奇な気 薄いアルシン 動的赤緯
際の晩 綾の色良き 潮と音 惜しき鎧の夜暗は野分
遠歩き 髪洗う管 月下の夏 点けたクーラー 見限る青と
いさよふ指 中も平たい月の殿 気付いたら火も愛しぶ余罪
頼るけど燻る夢は比喩だった 指嵌め緩ぶ 直ぐ溶ける与太
名ありきの駄々と決意が無駄な罠 手向かい突けど唯の錐穴


欣慕の意 競り勝つ様の手捷し 果ての摩擦が理性の本義
構えた無 最果て雨のいと白し 問いの目当ては勇む絶え間か
薫る夏 罪を見逃し生ける春 形而下のみを見つつ鳴る丘
運ぶ中 甘く逃遁 離隔急く 花梨尊く 真赤な不辜は
掻き払う 白い風花息絶えた 奇異な端境 路地裏は季夏
唾せど留守 黒髪濯ぐ神の布 見隠す住処 録する途絶


知り合った終の暇で私愛の意 足手まといの逸脱在りし
夜の角度 否めど張りき来合ふ肌膚 秋霧歯止めない独臥の夜
剥ぎ取った・着せた腋花で束の間の「嘗て」が消えた 急き立つ時は
最悪な二念廃して賜ばるは転てし違反 音に泣く愛さ
鈍む素の冴え冴えとして潰す蓮 仏弟子と会座 餌の棲む場に
呻吟う恋 朝寝の多湿 焦がる昼 託つ舌の根 さあ行こう 夜に


恥じ入る詞 移り香淀み 止む汽笛 無闇と善がり通じる意思は
鉄組めば美しい暖炉と備わる和 謎と論題 思惟は巡って
雨後を待つ つい「好き」と言う朝七時 さあ雨意と傷 いつ妻を恋う
夜で吐いて此処等他日は死も睦む もし発したら此処で言ってよ
葉よ唸れ 嬲る花には利かす水 片葉に隠る不慣れな雨余は
凸起する湯水みたいな大事憂し 甚泣いた水 見赦す きっと


シーツ乞う 揺ぶる れっきと火照る夜 手ほどき攣れる 浮遊後墜死
溺死すら昨晩起きた 違和感が湧いた 気温は腐らす時期で
慈雨と野火 望んだ果てに凍てる春 出居にて破綻 その日の凍死
縊死すれど誓いは生きる 歩ぶ畏怖 夜歩き遺灰勝ち取れず徙移
灰となれ 謀り爛れこの遺骸 残れ祟りが 斑れな問いは
後の息変わる 寒がり早死にし やはり神去る若き命の


旅の中 甘く習うは異国の句 恋は心泣く真赤な野火だ
穿つから そよぐ扶桑は飛び退くの 人は嘯く 夜空が番う
列も場も紐解けたから過る昼 清らかだけど裳紐は縺れ
[誰か来い] [モーテルはすぐ] [付いてきて]居着く昴で思い焦がれた
浴びせる詞 蜂蜜の如 夜雨舐め 小夜床の罪 血走るセピア
野火太る 更ける夜でも光る春 蚊火も照る夜けぶる飛火野


不知火と岸の辺の田が地を張れば彼方野辺の鴫飛びぬらし
消え残る陸路の虫を犯す疵 香を惜しむのち隠るこの益
行く鴛鴦は西へと散去く先の世の黄桜跡へ死に恥を悔ゆ
消ゆれども暇なき情け数日満つ 静けさ無き名 舞ひ戻れ雪
国隔つ木綿花白く光りたり 牙黒し菜は冬蔦へ逃ぐ
奇装へば理を憚かる身消ゆる春 行き廻る河は折り延へぞ良き


ひたすらなバトルとエデン それ以外レゾンデートルとはならず、旅
余談なく遊ばせた時釣れた腸 れっきと出せば粗悪なんだよ
乾く間に文屋で儚く乞う儀式 動く半ばで藪に馬鍬か
手套脱ぎ、纏うは冷気 浮く肌は空気入れ這う 籐巻縫うとて
比翼の詩 ラストの三日は聞きすごす 危機は神の門すら凌ぐ夜火
羽蟻起く 残す命は不当たりだ 虻蜂ノイズ このクオリアは


拙き嘘に既読付け霑る夜 怖気付く時にぞ浮名立つ
羸る間ぞ 毎日が過ぎ示唆した死 刺し傷が血に今染まる罪
乗った象 待っていたけど訪れず 遠音卦体で爪先立つの
神酒尽きて麦の秋の日然有りなり 朝日退きあの義務的月見
六十の折 布衣の褪せ果て墨付きつ 見捨て馳せあの庵を望む
なよなよと幹の痛めば手当てして 当てはめたいの君と夜な夜な


耐えがたく大喪を強いる内閣がいなる懿志をも甚く違えた
夜もすがら二上山の瀬が照りて風の間闇が誑かすもよ
枝の撓ふ穂に出づる文選し年梨園守るつい匂ふ梨の枝
足音立つ儀 召した神すら探る夜 腐らす御像 閉め切ったドア
確かめろ 往にし恋より遠い愛 踊り宵越しに色めかした
違法な香 新葉を焼いて残る汁 この丁夜をば意に適う補遺


冠と觜は月の船では行けないな 渓はデネブの切っ端と暈
世の無有もルナに海波のカペラすらベガの配下になる蒙霧の夜
小夜中はサーガの如く星歌う 紙墨とこの香 浅はかな世さ
鶴渡れ 積もる星屑 遠き雪 音すぐ絞る もつれたワルツ
出始めた五月雨の見たカストルと姿見のレダ 見定めし果て
何方へ裸身暴かれ起きし葦 気折れかパーン 調べた歌吹


有耶無耶の逢ひ見し期間終わる夜 和音が軋みピアノ止む様
手本での右手の移動かたどると他が疎いので君のテンポで
記す楽譜 動く日々すら半ばでは 必ず響く幸福が好き
遠つ国 夜行音楽適う方 永く感応 午夜に靴音
透かす身を見聞く先火をまだ歌う 魂を引き裂く 君を見透かす
気取る詩は刻むビートの意義奪う キーの問い秘む 先走る時


すかさずあたしは熔けて知り震えるふりして蹴飛ばした明日探す
黄泉の国 告げむわたくし毛羽立った激しく撓む血肉の身よ
損なった正き嘘に来たれ我 滝に想起し ただ立つ名こそ
縋るため予期した僅か十の園 脅かすわたし清めたる火途
カプチーノ 水漬くY字路 俺のこのレオロジー湧く罪の一部が
筋書きがノモスと錆びた 動く僕 乞う度諭す物書きが死す


薔薇なんて嘘が為放つ緋色だろ 歪つな恥が争点ならば
夜半に軒 繁く探すも凄き秋 コスモスが咲く気色の庭よ
余白濃き川べりも無事流る夜 悲しぶ森へ 若き扱葉よ
仇す愛 路地の裏だが掻き口説く 季夏語らうの 白いアスター
慈雨も落つ 被るヤドリギ椿の木 はっきりと遣る向つ嶺も憂し
砂場には必ず許す黄色白 息する桜桃 半ばに話す


「ルビーならまだまだ要るわ」右の手の気味悪い珠黙らない昼
書き留める睦む一つ寝明かした詩 「ガーネット秘む 瞑る目 時が」
縦縞が過ぎジンカイト 伸びる春日の問い感じ傷が増してた
カルバドス・理学は琥珀 長き時 金具は琥珀 カリスト遥か
交尾む原子は雨意となる この輝石 残るなと言う波心煙る津
夢魔以下を生きる 島陰瑠璃照って リルケが混じる奇異を垣間む


悔ゆ 人を見失う帰路 島風が〈真白きうなじ〉海を飛び行く
背が伸びた弟は発つ大門へと 覆った波濤 遠旅の風
無益にも波は吹っ飛び消ゆ しかし雪一粒は水面に消えむ
帰途のままの袖 雫が滴った 確か崩してそのままの時
「皆と居る欠点はこのとおり有り」彼方の湖畔で告げる営み
酌む折の緻密なる式 波立った 見和ぎ知る夏 道のりを向く

文月の香 言葉に香る仄かな香 登る丘には何処かの切符
晴れ僅か 温室去りし 八月が血走り、殺人犯す我は
つい伝う問いを九つ書くだけだ 九月の午後を厭う脱逸
泣かしたいライバルは誰 孟冬と埋もれた春は以来確かな
飛沫飛ぶ 錨 陽復 望む義務 その工夫より開敷と黄藤
浴びる暈 踊った人も師走見ず 鷲も飛び立つ 遠ざかる微痾
降らす場と菊花の倣う白き秋 路地裏なのか 突き飛ばすラブ
繋がれば涙液が跳ね 冬の日の湯船場が消え入る 晴れが夏


過敏さの増した世界で生きたのだ 聞いて逝かせた島の賛美歌
神の宮 崇拝するも込み入る意 身籠もる水波 薄闇のみが


絶え気味の憎悪の方が酷い恋 飛び交う炎 嘘のみ消えた
この火消ゆ 河野と焔高く吹く 語らむほどの歯痒き火の粉

夜の悶え 血が問う恋に 「言葉とはどこに行こうと勝ち得たものよ」

歓喜の死 撓む星すら瞬いた たまらず萎む私の銀河


遠のくは口下手な愛 泣いていて居ないあなたへちぐはぐの音


居ない場に午後は飛び発つ モーテルで想った人はここには居ない


予定ならわざと潰した キスからが好きだし ふっと触らないでよ





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?