#回文短歌を作ろう を終えて

 昨日、ツイッタースペースにて「#回文短歌を作ろう」と題した企画を行いました。noteに記載したマニュアルをもとに、参加者皆で回文短歌を作ることで、回文短歌の手軽さと奥深さ、魅力を味わおうという趣旨でしたが、聞いてくださった方のご助力があったからこそ、趣旨にかなう企画となりました。改めて感謝を申し上げます。

 スペースの進行や私の段取りの悪さ、実作に参加してくださった方とのやりとりの方法の考慮不足など、反省すべき点は多々ありますが、ツイッターやお題箱にてあたたかなご感想・美しい実作品を目にすることができ、嬉しい気持ちでいっぱいです。どうもありがとうございます。

 スペースを終えたばかりの時点では、「無言の時間が多かった」「終始あたふたしていた」と無力感でいっぱいだったのですが、一晩経って改めて考えてみると、皆様のご感想や作品を拝見できたこともあって、開催して良かったなという気持ちに落ち着いています。スペースの方は問題ばかりだったけれど、noteのマニュアルやリストは中々良い出来ではないか、と自画自賛したりもしています。

 また、回文短歌の魅力や、この企画を開催した理由を言葉にしたことで、改めて自分の回文短歌への取り組み方を整理するきっかけになりました。スペース上で私は回文(短歌)の魅力として以下の三点を挙げました。

①倒語(句)の組み合わせの運命性
 「美しい国は憎いし苦痛」という回文や、「キス⇔好き」「罪⇔蜜」という倒語の組み合わせに表れるとおり、回文短歌の魅力は縛りプレイの中で言葉遊びをすることにあるのではなく、既存の言葉自体が別の性質(倒語の組み合わせの相手)を内包しているという、人為の及ばない真理的な確からしさにあり、言い換えれば回文短歌制作者のすることは文章表現・作成ではなくあらかじめ定まった運命(倒語組み合わせ)の発見にある。

②普段何気なく使用する言葉の得難さの実感
 逆向きに読んでも何らかの意味をなさねばならないという回文の特性上、非回文で躊躇なく使える言葉でも、回文上では使いにくい・使ったとしても処理の方法が限られるという事態に陥りがちである。ただ、その困難を自分の工夫によって克服し、回文の中に回文で使いにくい言葉を収めることに成功したとき、征服感・達成感にも似た喜びがある。

③システマチックに、自分の意図を含ませずに文章が作れる
 回文を作ろうとある一つの言葉を定めると、当然その言葉を逆向きにした音も使わなければならなくなる。よって、非回文を作る時に比べて、こちらのコントロールが効く箇所は半分以下になってしまう。不自由な制約とも言えるが、意図を持たせた文章を作るのは億劫だが何か文章を吐き出したい気分のときには良い解消方法となる。

 話しているときにふと考えたのですが、これらの三つの魅力は、いずれも「ある程度作者の意向が及ばない」「言葉自身によって規定されるところが大きい」という特徴に帰着します。そしてこの回文短歌制作という作業が「作者の意向が及ばない」「言葉自身によって規定される」という特徴を持つということは、この作業がシステム化しやすいということを意味するように思います。

 私には昔から、自分の好きな作業が機械化(システム化)されてしまうという恐怖心があります。おそらくAIのべりすとのような自動文章生成システム、短歌の取り合わせをシステム化した星野しずるなんかが恐怖の遠因にあるのですが、自分が好きでこつこつと進めていることが、頭が良い人によるなんかすごいシステムによって私よりはるかに高い精度で行われてしまう、という漠然とした不安感を、好きで書き続けている小説においても、回文短歌においてもうっすら抱えています。

 スペースの中で、この企画の開催理由の一つとして「回文短歌は結構簡単に作れるということを知らない人に、自分の回文短歌作品を褒められるときの居心地の悪さ」を挙げたのですが、これも、自分の立っている場所が安定感なく簡単に崩れうる場所であることを自覚しているからこその居心地の悪さであったかも、と思います。意外と簡単に、システマチックに、おそらく私が作るより美しい回文短歌は出来上がってしまうのに、という不安。

 今回、初めて回文短歌を作る方にも作れるように、と普段自分がやっている作業をマニュアル化したり、自分の使うリストを文字起こししたり、自分のよくやる作業を改めて簡便にできるよう整理し直したりしました。出来は悪いですが、これもある種のシステム化であると思います。ずっと自分が怯えていた仮想敵を自分の手で不格好なりに顕現させることができたからか、今はすごく肩の荷が下りたような、すっきりした気持ちで居ます。この企画をやってよかったなとしみじみ思います。

 もちろん、スペースにて述べた企画開催理由のもう一つ、「自分と似たスタンスの回文短歌友達を増やしたい」も紛れもなく本心かつ切実な理由ですので、今回の企画に参加いただいたことや今回皆さんが作ってくださった作品、企画に対していただけたお言葉はとても嬉しかったですし、これからも何かの機会に回文短歌のお話ができればとても嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします!

 また、このリストもあった方が便利だったかも、と思ったものを改めてnoteの方に載せました。

#回文短歌を作ろう のリスト一覧にも足しておきますので、

リスト⑨二音倒語ペアリスト もよろしければご活用ください。

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