「ユバのしるし」に関するキオク

2018年9月26日午後2時、Dmmのオンラインゲーム「ユバの徽(ゆばのしるし)」がサービス終了した。サービス期間は2年と少し。ソシャゲには珍しいことではないと思うが、長期計画的ではない……大団円ではない方のサービス終了だといえる。さみしい。

今までスーファミぐらいしかゲームに触れたことのなかった人間なので、このソシャゲ特有の悲哀と喪失は正真正銘初めて味わう。今まで何個のソシャゲが同じようにサービス終了し、プレイヤーの前から消えていったのかと想像すると、本当に厳しい世界だなと思う。今私の前に残されているのは終了5分前まで血眼で録画していたゲーム画面だけだ。気持ちとしては大好きな本が絶版になったうえ今まで刷られていたものも全部燃やされ、風に飛ばされる灰の前で呆然としているような、そんな感じがする。いやー、厳しい。

私は他のソシャゲをやったことが本当にほとんどないのだが、「キャラクターを集めて(ガチャ含)」、「育てて(強化して)」、「通常クエストやイベントをこなし」、「ストーリーを追う」といった形式は、恐らく他のゲームでも共通しているのではないかと思う。

「ユバのしるし」には、(恐らく)他のゲームには見られないような、いくつかの特殊なシステムがあった。その代表的なものが「契り」と「生け贄」である。戦士は祈り人と呼ばれるキャラクターたちと「契り」という行為を行い、新たな戦士を誕生させる。そして戦士をレベルアップさせて強くするためには、その生まれてきた戦士たちを生け贄として神にささげなければならないのだ。

生まれてきた戦士たちには固有の名前が付けられ、性質や遺伝情報などがそれぞれ異なっていた。戦士を生んだ多くの祈り人は、自分の子供に向かって祝福の言葉を投げかけていた。そこにはマ〇オの1upのようなシステムとは違う、「かけがえのない命」を認識させるような仕組みがなされていたように思う。そしてそのかけがえのない命を消すための決断は、他ならぬプレイヤーの手に委ねられていた。つらい。でもだんだん生け贄にするのも慣れてきて、なんとも感じなくなってくる。それもまたしんどい。

祈り人たちも生け贄に捧げることができるのだが、こちらは生け贄にされる前=首を切られる直前の祈り人の様子が個別エピソードで用意されている。つまり、お気に入りの祈り人の全エピソードを集めようとすると、必ずその祈り人を生け贄として殺さなければいけない仕様になっている。しんどい。しかも首を切った後、画面上でドクロが転がる演出がされたりする。そもそもゲーム内通貨が「金ドクロ」と呼ばれるものであったりと、とにかくすべてにおいて頭蓋骨の出番が多いゲームであった。サービス終了直前には50万個のドクロが配布された。もう町が一つ滅ぶ数だ。

このように、「契り=生殖」と「生け贄=死」のサイクルをシステム上不可欠なものとして組み込み、プレイヤーの選択に委ねてきた点が、ゲーム「ユバのしるし」の特徴であり斬新さであった。ここまで荒々しい生命の連なりをはっきり見せつけてくるゲームは今後もなかなか現れないんじゃないか?と思う。

ちなみに「契り」の具体的な様子についてはまあまあぼかされているのだが(「ユバのしるし」は全年齢対象)、ある二児の父設定の祈り人が「自分の妻以外と契りしたことないんだけど、これって浮気になるのかな……」などといっていたりしたので、まあそういう行為であることは間違いない。ちなみにこの祈り人には高木ブーさんが声を当てている。すごい。

かなり尖った内容のゲームであったが、それだけ独特の世界観があった。キャラクターの造形も凝っていた。ゲーム内では草原、森、渓谷、島、高山、洞窟とエリアが分かれている。それぞれのエリアで服装や装飾具、文化などが違っており、キャラデザからその差異や統一感が感じられるのがこだわりを感じてとてもよかった。

また他の生き物と同化したキャラ、拘束具などの機械と一体化したキャラなども多い。そのようなキャラクターで特に私が素晴らしいと思ったのは、カナロちゃんという島の民の祈り人だ。侵略者に捕まった彼女は、進化した後も顔にはまった蛸壺のような丸い機械が取れず、脚は他の人間のものに付け替えられ、さらにタコの足と思われる触手が一体化してしまった。めちゃくちゃかわいそうである。触手の生々しさと機械の冷たさと女の子の体のしなやかな美しさが共存していて、相当いいデザインだと感じた。刺さった。

「ユバのしるし」が終わってしまった原因は、どちらかというとゲーム自体の環境にあったのではないかと思っている。「ユバのしるし」はとにかく重いゲームだった。ロード時間がめちゃくちゃ長く、しかもクエストの初めと終わり両方にあった。下手するとクエスト自体よりもロード時間の方が余裕で長かった……。ゲームの容量もめちゃくちゃ大きかった。スマホの容量が足りないがために、泣く泣くアプリを一度アンインストールする羽目になったぐらいだ。他のアプリをどんどん削除した。最終的に家計簿アプリすらも削除した。それでも私のスマホにとって「ユバのしるし」は重すぎたのだ。

再度アプリをインストールしてから一か月もたたないうちにサービス終了案内がされてしまった身なのだが、正直終了までの一か月くらいは今までユバやってきた中で一番楽しかった。金ドクロの配布もガチャの確率も大盤振る舞いで、見たことなかったキャラがどんどん手に入ったし、エピソードもたくさん開くことができた。なにより「最後の祭りだぜ!」という公式・プレイヤー両方の盛り上がりが感じられたのがよかった。これからキャラブックも来るし、ラインスタンプ企画も始動したし、ぶっちゃけゲームの続編もめちゃくちゃ期待している。待ちます。

ゲームがいったん幕を閉じた今私ができることは、録画を見直して思い出にひたることと、公式の動きを待つこと、そして記憶が新しいうちに何かしら書き留めておくことだと思う。「ユバのしるし」が次の世界を見せてくれるまで、語り部の任は私たちプレイヤーに託されたのだ。キオクを集めることで新しい物語が広がることをすでに私たちは知っているのだから。