GO STORY(本編)

秋の日。

放課後。

校舎から出て、部室棟の後ろを通って、裏門から帰宅する。

野球部部室の後ろを通ったとき、ふと窓を見るとカーテンの隙間から中が見えた。

一瞬。あの子がいたように見えた。

ガツくん?

同じクラスの野球部の子。

が…


???


目が合いそうになって隠れた。


今のって…。



隠れるように逃げ帰った。





帰宅。

して制服のままベッドに横になる。





ガツくん…。

なんであんなところで…あんなことを?


ティシュを取り、指やなんかに付着したソレを拭き取る。

メガネを再装着し、

飛んでいった先を探す

が、着地点を見失った。

はぁ、めんどくさい。


その時上から何か落ちてきた

体操服

体操服?

そこにはガツくんの名前が。


落ちてきた上を見上げる

!?

何かがいた

僕は気絶した。




翌朝

いつもより早く登校する羽目になった。

アイツが持ってきて、僕の目の前に落としたガツくんの体操服を彼に返すために。

しかし、直接返すのは恥ずかしいので朝早く来た。

彼の所属する野球部の朝練の最中に、机に置いておく算段だ。

教室は2階。

昇降口近くの階段を上がり素早く教室へ向かう。


誰もきていない。


「あ、オレの体操服!!」

!??!!?!!?ガツくん!!!!!?!!!!!

廊下に彼の姿。

やばい、バレた!!

何も返せず固まっている僕に彼は言う

「パス!!」

!?

投げる。真下に落下

「ナイス!見つけてくれてありがと!!」

ナイスキャッチ

と言えるわけもなく。

無言の僕を気にせず、駆け足で戻っていく。

…福眼。

表情から泣きながら探していたように見える。

悪いことしたな…このオバケ

昨日から僕に取り憑いているゴーストを横目で見る。


はあ!?

感謝して欲しいわ

接点が生まれたことになぁあ!?

しっかし最高やん上裸やったで!

ええもん見れたなぁー

どきどきしたんちゃうん?!

シコりーなーーーー!!


鬱陶しい


気持ち悪い奴に取り憑かれた。


コイツが体操服を盗んだ犯人

そして昨日の精子消失事件の犯人でもあった。

どうやら飛んできたソレを食ったらしい。

あと起きたら全裸になってたのも多分コイツの仕業。


ほんと気持ち悪い。


僕はコイツにオナティッシュという名前をつけた。


はぁ?いややそんなん!長いし!

じゃあ、オナティー。

マナティーみたいに言うな!!


そんなやりとりを経て今に至る。


窓からグラウンドを見る


走りながら、取り戻した体操服を着ているガツくん

先輩らしき人が、遅れてきたガツくんの走り去るケツを蹴る。

イラっ

僕の好きな人に暴力振るうとは…許せん。


…好きなんやろ?

「はぁ!?」

はぁ!?べ別に好きじゃないし!!

いやーその顔は好きやわ

ワシの目は誤魔化せへんでー


違うってしつこい!!



この学校には七不思議が存在する。

人魂見たとか、人体模型が〜とか、深夜の音楽室からピアノがなんちゃらとか、生徒がいなくなったこともあるらしい。


多分オナティーもその手の類だろう。


いつも通り適当に無視すれば良い。…はず。


取り付く理由を聞いてみたけど、僕のソレが美味いから。というわけのわからないことを言う。

とにかく変態ということだけはわかった。


僕はお化けが苦手。

オナティーとはじめて会った時のように、この世離れしたものを見ると気絶してしまう。


それでも僕は、この学校を選んだ。


ここは田舎町だから家から行ける学校の選択肢が少ないので消去法でもあるけど、


理由は1つ。


この学校には元同級生がいないから。


オバケより人間の方が怖い。

オバケは最初出てきた時に、気絶するだけで済む。

いるかいないか分からないから怖いのであって

存在を知っていれば怖くない。

夜だと暗くて目立つけど、朝だと光に照らせれてよく見えないし。

一瞬の恐怖。

でも人間は怖い

人間は朝も夜もずっと見える。

その上、ひとの夢の中まで入ってくる。

オバケの夢は見たことない

朝はたいてい憂鬱な気分で目覚める。

一生の恐怖。

僕のトラウマ


だから、人との接点は最小限に留める。


この学校では、なるべく1人でいることを心がけている。

誰かといると流されるから。

僕は自分がしっかりしていない。

すぐ人に流されるので距離を取る必要があると考えている。

流されるとなぜかしんどくなる。

人に合わせるのがつらい。


寮生活は論外。

実家がマシ。


だから僕は家から少し遠くても、元同級生達のいない、この学校を選んだ。


あの人たちから逃れるために。





朝の会を終え

1時間目

体育

男子は教室で着替える



終わり次第、グラウンドへ向かう。

体育は男女別で行われる。

今日は野球だ。


憂鬱。


2人1組で準備運動。先生が言う。


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ


ニシシシシ、ひょいっ

手に持っていたボールが落ちる

「あ」

ぽて、とて、とん。

誰かの足元にぶつかる

いっ…ガツくん!

「あ、未留くん、さっきはありがとう。体操服見つけてくれて!」

「うン…」

「一緒にやろっか準備体操!」

え(°°)

おー。とオナティーが言った。

え、がっつん俺らとやらんの?と、一重まぶたたらこ唇の丸坊主野球部らしき人が言ってる。

「あーうん、未留くんとやるわ!」


準備運動



終了


キャッチボール

開始


すー、ぽん、ぽん、ぱしっ。

「ナイスキャッチ!へい!」

すー、べん、キャッチ。

「…」

「いくよー」

すっ、

「わ」

ぽんぽんぽんばし。

「ナイスキャッチ!へい!」

すーーー

「!」


ボールどっかいった。


ボールはなくしたら探してきてやーと体育教師が言う。


探しにいく


ガツくん「こっちの方飛んでったやんな?」

未留「あ…見てなかった」

大暴投やったなぁ笑

オナティーうるさい

なんかオナティーがソワソワしている

2人っきりやで

は?

こく…はく…♡

はぁ?あほやろ

???なんで?好きなら告れば良いのに。

はー。ボール探そ。


あっ思いついた。

オナティーを手招きする。

オナティー、オバケやろ?ちょっと探してきてよ。

えーーー

ええやん。人助け。

んー

だめ?

1シコ

あーいいよ。

水溶き片栗粉でも食わしとこう。


よっしゃないす。

ボールを見つけた


好きですって告白してわたしーな!

するか!

オナティーからボールを受け取りガツくんに手渡す

際、口を滑らす。



「好きです」


!?!?!!!!!!?!!!!??!!!

ガツくん「はい???」


やば!!

やった!とはしゃぐオナティー

パニックで頭が白くなり思考が止まる。

終わった。


僕はボールを持っていられなくなった。

そのまま地面に落下

ぽーん。ぽん。ぽん。ぽん。ころころころ。

(°Д°)


…あ、えっと

口を開くガツくん。

「オレ…男の人と付き合ったことなくて…好きになったこともなくて…その…」

(°Д°)


「未留くんのことよく知らんし…」


(°Д°)


「気持ちは嬉しいんやけど…」


(°Д°)


「だから…」


(°Д°)


「友達からで良い?」


(°Д°)


「…」


オナティー 立ったまま気絶してる?!

いや、友達ですらなかったことに驚いてるんか?!


Σ (°Д°)


あ気づいた


「え、」


混乱してる!



ということでこの学校でのはじめての友達ができた。

オナティー ワシわ!?



なんかとてつもないことが起きた感じはするけど特に変わらない日常。


とはいえ友達ってなんやろ。

何したら友達なんやろ。


セックスちゃう?


絶対違う。

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