「移植医療」を考える。☆デポジット金について。

1:はじめに

こんにちわ、かくです。

先日、以下のようなnoteを投稿しました。

この中でも取り上げましたが、「海外渡航での心移植」について、必ず付きまとう話が

★デポジット金

の問題です。
noteでも記事にしましたが、「割り込み金」と勘違いされているかな?と思い、「日本と米国(海外)での医療保険制度の違い」をあげました。

ただ、僕の中でも「詳細はどうなっているんだろう?」という疑問が残りました。このため、「長年心移植に携わっていらっしゃる先生」にメールにて実情をご教授頂きました。
先生にご了解を頂いたうえで、「デポジット金の詳細」についてお答え頂いた文面をそのまま転載させて頂きます(読みやすくするため改行などは行いましたが、文面はそのままです)。

2:デポジット金の詳細

●デポジットは下記に詳細を書きましたが、割り込み金ではありません
●海外渡航移植の費用はなぜ最近高くなったのか
・日本の医療保険は海外では無効なので、現地の治療代の3倍くらいの費用が請求される(日本に外国人が来て治療を受けると日本の診療報酬で規定されている3倍を請求しています)
・そもそも入院費は日本より圧倒的に高い 
ICUは一日100万円:EXCORが装着された小児の場合にはICUにはいる。30日待機するだけで3000万円
・EXCORを装着しているため、チャーター機が絶対に必要(ニューヨークへの片道で3000万円)
・日本の施設のEXCOR駆動装置(予備を含めて2機)を持っていくと、
その病院のEXCORが無くなり、日本でEXCORを必要とする患者につけられなくなるので、アメリカのBerlinHeartの販売会社からレンタルしています(レンタル代、保険などで100万円以上)から持ってこないと、搬送できない。
・チャーター機に乗れるのは、医師2名、技師1名、看護師1名、患者、家族2名なので、他の家族などは並行して、民間機で渡米。また医療者のホテル代、食事代(日当程度)、帰路の航空機代(エコノミー)や空港と病院(国内外とも)のタクシー代(共に民間救急車とタクシー数台)などの交通費が要ります。
・搬送に必要な医療器材の購入費・レンタル費・保険など、随行者の医療保険・生命保険など
EXCORのついていない患者の場合は、
患者の安全を考えて、ビジネスで行きますので、本人・随行者の往復の航空料金、医療者のホテル代、食事代(日当程度)、空港と病院(国内外とも)のタクシー代(共に民間救急車とタクシー数台)などの交通費が要ります
搬送に必要な医療器材の購入費・レンタル費・保険など、随行者の医療保険・生命保険など
となりますので、一般的に1000万円までと思います

ここで、ひとつ大きなキーワードになるのが、

EXCOR

という医療機器についてです。

これは、補助人工心臓のひとつです

補助人工心臓とは、簡単に言うと

心臓のポンプ機能(血液を肺や全身へ送り出す機能)を補助する

医療機器であり、

植込み型 と 体外設置型

があります。

そして、小児の心移植待機患者さんには対外設置型が適応となり、心移植を行うまでの橋渡しとなる重要な医療機器です。

画像1

以下に添付する記事からの抜粋になりますが、このような状態をイメージして頂ければと思います。

そして、これがEXCORで重要になる駆動装置です。

画像2

ちなみに、このEXCORは日本国内でも18台しかない医療機器です。

EXCOR 導入施設

以下の記事からの引用です。この18台のEXCORに余裕がなくなってしまった状態もあったようです。

そう、要するに、「海外渡航での心移植」というのは、これらの医療機器を装着した状態で海外渡航しないといけないということなのです。

日本でもこれだけの医療機器を装着している状態では、集中治療室での入院管理が必須となりますが、

航空機内を集中治療室の状態にし、患者さんの状態を注意深く観察し、安定させながら海外へ渡航する。

ということなのです。

このため、コメントを転載させて頂いたように米国(海外)での医療費用以外にも莫大な費用が必要になります。もちろん移植終了後の医療費も発生します。

僕も医師ですので、状態の悪い方の救急車での搬送に同乗したことは度々ありますが、関係者の皆さん、相当なストレス、疲労だと思います。正直、お恥ずかしい話ですが、医師である僕もここまで想定できませんでした。

ご想像頂ければ、お分かりになると思いますが、全行程含めて莫大な費用が必要となるのは明白だと思います。

お話をお聞かせ頂いた先生ご自身、

日本での小児の臓器提供が増えたので、今後はEXCORを付けて渡航することはほとんどなくなると思いますが、

とコメントを頂きましたし、同時に

国内で患者が救える時代が来ることを心から祈っています

ともコメントされました。

このような状態を考えるだけでも、前回のnoteで取り上げたことを考えてみても、やはり

国内で患者さんを救う

ことの必要性を強く感じました。

3:さいごに

前回投稿した記事と合わせて、可能な限り「移植医療」について記事にさせて頂きました。

お忙しい中、突然の電話やメールにご丁寧に、そして真摯にお答え頂いた先生に、この場を借りて深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。とても勉強になりました。
先生のこれからのご活躍、後進の先生方のご活躍をお祈り致します。

なお、この記事に関しては、先生のご厚意によりコメント頂き、書き上げることができました。またコメントの転載にも快くご許可頂きました。
このため、記事の無断転載などはお断りさせて頂きますので、ご了承ください。
よろしくお願い申し上げます。

また、よろしくお願いします。


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