■新型コロナで失業者の41万人増加が予想される「オークンの法則」で成長率から失業率を推計東洋経済(2020/04/17)末廣徹:みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト

■新型コロナで失業者の41万人増加が予想される

「オークンの法則」で成長率から失業率を推計

東洋経済(2020/04/17)末廣徹:みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト

https://toyokeizai.net/articles/-/344140

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今回は個人消費を中心とした需要が回復しなければ、V字回復とはならない。

個人消費を抑制している新型コロナウイルスの感染の終息がゆっくりにしか進まないのであれば、GDPの回復も緩やかだろう。

また、その間に雇用が失われて個人消費を持ち上げる「原資」である可処分所得が減少すれば、回復のペースはV字から遠のいていく。

今回のコラムでは、GDP成長率と失業率の関係を考察することで、今後予想される失業率の上昇幅を推計した。

新型コロナ・ショックは「景気が落ち込む角度は東日本大震災級、落ちる深さはリーマン級」といわれている。

セーフティーネットの確保などの各種政策対応が間に合わないリスクや、さまざまなボタンの掛け違いによって経済の落ち込み以上に失業者を増やしてしまう可能性があるため、注意が必要である。

急激に資金繰りが悪化している中小企業が多い中、金融機関の手続き上のキャパシティの限界も指摘されている。

なお、政府が7日に発表した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は事業規模が約108兆円と、巨額なものとなったことが注目されたが、景気を今の水準から持ち上げる効果はほとんどないとみられる。

これは、足元の日本経済は感染拡大防止のための外出や営業の自粛により、通常の消費活動すら困難な状況にあるため、対策の内容がダウンサイドリスクを軽減すること(セーフティーネットの確保)を主眼に置いたからである。

政治的なアピールもあって巨額な事業規模に注目が集まったが、これは対策がなかった場合の「期待損失」を防ぐというバーチャルな数値であり、終息後のV字回復を約束するものではない。

・成長率と失業率の関係を示す「オークンの法則」

「成長率が悪化すれば、失業率は上がる」という経験上当たり前とも言える関係性は、オークンの法則(Okun's law)という立派な法則として知られている。

法則の名前は、1962年にこの関係を提案した経済学者アーサー・オーカン(en:Arthur Okun)にちなんでおり、実際に多くの国で失業率の変化と成長率は経験的に負の相関関係があることが確認されている。

そこで、日本のデータについても2000年以降のオークンの法則の関係を示すと、やはり負の相関関係を見出すことができる。

最近の経済構造を反映している2009年1~3月期以降のデータで考えると、実質GDP成長率が1%ポイント悪化すると、失業率が0.11%ポイント悪化(上昇)するという関係がある。

なお、米国のデータを用いて同様の分析をすると実質GDP成長率が1%ポイント悪化すると、失業率が0.51%ポイント悪化(上昇)するという関係があることから、雇用の調整は日本が米国の5分の1にとどまるといえる。

そのため、日本の場合は雇用の数の変化だけでなく、正規・非正規の変化や賃金水準、残業時間の変化などさまざまなデータを複合的に見る必要があるものの、今回のコラムでは失業率にしぼって考察している。

日本における2000年以降の負の相関関係を用いると、仮に新型コロナ・ショックの影響によって実質GDP成長率のマイナス幅がリーマン・ショック時(前年同期比マイナス8.8%)と同程度となった場合、失業率は約0.9%ポイント上昇することになる。

20年2月の完全失業率は2.4%だったことから、3.3%になる。

労働力人口が6850万人であることを考慮すると、約64万人が失業するという結果だ。

・コンセンサス予想どおりなら失業者は41万人増加

また、前述したエコノミストのコンセンサス予想どおりの成長推移となった場合は実質GDP成長率が4~6月期に前年同期比(前期比年率ではない)で年率マイナス5.6%になることが織り込まれているため、完全失業率は約0.6%上昇し、3.0%になる。

その結果、約41万人が失業することになる。

なお、エコノミストのコンセンサス予想では完全失業率が2.88%まで上昇することが織り込まれているため、コンセンサス予想はおおむねオークンの法則にしたがって予想されているといえる。

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■新型コロナで失業者の41万人増加が予想される
「オークンの法則」で成長率から失業率を推計
東洋経済(2020/04/17)末廣徹:みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト
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