■コロナショックで日本の失業率は6%突破、戦後最悪シナリオの中身週刊ダイヤモンド(2020.5.26)木内登英:野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト

■コロナショックで日本の失業率は6%突破、戦後最悪シナリオの中身

週刊ダイヤモンド(2020.5.26)

木内登英:野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト

https://diamond.jp/articles/-/238372

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・コロナショックで日本でも雇用情勢は急速に悪化、失業者は265万人増加、失業率は6.1%と戦後最悪に

そこで以下では、先行きの日本の失業者増加数と失業率を予測してみたい。

その際に参考とするのは、2008年9月のリーマンショック後の雇用情勢だ。

翌年の2009年7月には、失業率は5.5%と戦後最高水準にまで達したのである。

リーマンショック後には、実質GDPはそれ以前の水準から8.6%下落した。

一方この時期に、就業者数は196.9万人、2.9%減少している。

実質GDPの変化率に対する就業者数の変化率を示す弾性値は、0.34である。

景気の悪化に対して、企業はその3分の1程度の雇用調整を実施したことになる。

他方、今回の景気の悪化は、リーマンショック時を上回る可能性が高い。

筆者の見通しでは、実質GDPは2019年7-9月期のピークから11.6%下落する。

これは、リーマンショック後の景気の落ち込み幅の約1.3倍である。

リーマンショック後と同様に就業者数の弾性値を0.34とすると、労働者265万人が職を失う計算となる。

その場合、失業率はピークで6.1%に達する。

失業率は戦後初めて6%台に乗せるのだ。

・「隠れ失業者」517万人を含むと失業率が11.3%まで上昇する深刻

ところで、失業者とは定義されないものの、休業状態にある実質的な失業者数は相当数に達するだろう。

そこで、実質GDPの減少分だけ就業者の調整が行われると仮定した場合の潜在的な失業者を、まず計算する。

そこから、実際の失業者数を引いた部分を「隠れ失業者」としよう。

隠れ失業者数は、リーマンショック時には355万人、今回は517万人になると推計できる。

その場合、隠れ失業者を含む失業率は11.3%まで上昇する計算だ。

実質的には、日本でも失業率は2桁に達すると予想することができるのである。

・リーマンショック時より雇用情勢が悪化しやすい面も

以上では、リーマンショック時の経験に即して、先行きの失業者増加数と失業率を推計した。

他方で今回は、リーマンショック時と比べて雇用情勢をより悪化させやすい要因もある。

リーマンショック時には、海外経済の悪化や貿易金融の混乱などによって、輸出の悪化が際立った。

その際に最も大きな影響を受けたのは、輸出型大企業であった。

それに対して現在では、最も大きな打撃を受けているのは飲食業など内需型サービス業である。

それらは、中小・零細企業が中心である。大企業と比べて中小・零細企業は雇用を維持する力が格段に弱いはずだ。

倒産や廃業に追いこまれることで、労働者が職を失うケースも多いだろう。

(中略)

政策が十分に機能しない場合失業者300万人超、失業率7%近くに

政府による雇用維持の政策、あるいは企業の経営維持を図る給付金、家賃支援策などが十分に機能しない場合には、中小零細企業で倒産、廃業あるいは雇用者の解雇の動きがより広範囲に広がることになるだろう。

そうしたケースで、景気悪化に対する就業者の減少の弾性値が、リーマンショック時の0.34の2割増し、つまり0.41になると仮定しよう。

その場合、失業者増加数は318万人と300万人を上回り、失業率はピークで6.9%と未曽有の7%水準に近付く計算となる。

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■コロナショックで日本の失業率は6%突破、戦後最悪シナリオの中身
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