見出し画像

【初心者向けミリタリー】対戦車ミサイル/ATM(Anti Tank missile)って何ですか?

(全4,444文字)
皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

アニメやゲームなどで御馴染みの武器・アイテムなどにもつながるので、少なからず需要はあるのかな?とも思うのですが、なるべく初心者向けの記事にしたいので、難しい専門用語やクドイ説明はしないようにします。

専門的な知識をお持ちの方が見たら「なんじゃこりゃ?」的な所もあるかも知れませんが、素人が書いている記事ですので、ご愛嬌とお許しください。

今日は『対戦車誘導弾/ATM(Anti Tank missile)』について書いてみたいと思います。

よろしければお付き合いください。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。


1.対戦車誘導弾/ATM(Anti Tank missile)

対戦車ミサイル/ATM(antai tank missile)とは、戦車や装甲車両などを攻撃するために用いる武器です。

(現金自動支払機はオート・テラー・マシーンの略でATMと言いますが、略語の元が全く異なります。ややこしいですが。)

一般的に、戦車砲や対戦車砲、無反動砲、ロケットランチャーのような対戦車火器は、敵戦車や装甲車など、『目標に照準して命中させる』ことが必要ですが、ATMには各種『誘導機能』があり、命中率が非常に高いのが特徴です。ただ、その分、コストが一般的な砲弾に比べると割高です。

対戦車誘導ミサイルのことをATGM/anti tank guided missile、対戦車誘導兵器のことをATGW/anti tank guided weponなどと呼ぶこともあります。

2.概要

対戦車ミサイルには、戦車や装甲車などの頑丈な装甲を貫通するため、化学エネルギーによる『モンローノイマン効果』を応用した『成形炸薬弾』というものが弾頭に仕込まれています。(過去記事参照)

【利点】
○誘導機能があるので移動中の敵戦車・装甲車への命中率が非常に高い
○誘導方式によっては、射撃手が敵の反撃によってやられにくい
○射程距離が一般的な戦車砲、対戦車砲、対戦車無反動砲等に比べて非常に長い
○発射装置そのものは構造がシンプルで簡単(弾丸がテクノロジーの塊)

【欠点】
○1発あたりのコストが非常に高い
○1発製造するのに複雑で高度な技術が必要(多くの数を揃えるのは砲弾などに比べてコストや人的な労力が大きい)

砲は射程が短く、ミサイルは射程が長い。

これらの両方の利点を組み合わせて運用が可能な『ガンランチャー』と言うものが存在します。

砲身から一般的な砲弾を発射することができ、また、同じ口径のミサイルを砲身から発射できるもので、代表的なものでは、イスラエル製の『メルカバ戦車』、米国製の『M551シェリダン空挺戦車』、近代ロシア製戦車のほとんどの車種にその機能が多く備わっています。

2.ATMの歴史

(1)旧独・赤ずきんちゃん/1941~1944年頃

世界初のATMは、第二次世界大戦中、1941年にドイツで開発がはじまり、1944年に実戦テストが行われました。

試作品の名前は『X-7/ロケートプヒェン(赤ずきんちゃん)』と呼ばれています。終戦までに300発ほど作られましたが、実戦使用はされていません。

このほかにも、画像誘導方式や赤外線誘導方式などのミサイルが考案はされていたようですが、実用化には至っていません。

恐らく、技術的なハードルがまだ高かったのではないかと。(筆者の個人的な考察)

(2)仏製SS.10/1955年頃

1955年、フランス陸軍に導入されたSS.10対戦車ミサイルは、『低コストで敵戦車を撃破できる兵器』として開発され、軽戦車や対戦車砲などの重装備を用いなくても、トラックやジープなどに搭載して軽易に運用が可能な対戦車火器として誕生しました。これは、後のATM開発における世界基準とも言える仕様でした。

1956年の第2次中東戦争で、イスラエル軍がこのミサイルを使用してエジプト軍と交戦しています。その後、このミサイルはソ連にコピーされ、3M6シュメル(西側名称AT-1スナッパー)の基本設計になったとされています。

ミサイル本体の誘導は電気駆動する翼の動きによって弾道が修正される仕組み。必要な電力は操作機とミサイルの間をつないでいるワイヤーから供給されます。ミサイルを誘導できるとは言え、目標に命中させるのは非常に難しく、射撃手は高度なスキルと集中力が必要とされました。

(3)サガーショック/第四次中東戦争

近代戦史において、対戦車ミサイルが最も多く使用された戦例は、『第四次中東戦争』と言われています。

エジプト軍による旧ソ連製AT3/サガー対戦車ミサイルの集中運用によって、イスラエル陸軍戦車部隊は大打撃を受けます。

このサガーショックによって、一時は『ミサイル万能論』や『戦車不要論』が巻き起こり、大きな論争を呼びました。

しかしながら、戦いの歴史は兵器開発、技術開発の歴史でもあります。

この第4次中東戦争は、後の近代的な陸軍戦力の中核を担う機甲部隊のあり方そのもに大きな技術的革新をもたらすことにもなります。

ATMに脆弱とされた戦車に、ERA(爆発反応装甲)やAPS(物理的防護システム)などが導入されます。戦車・装甲車両は、必ずしも対戦車ミサイル1発で撃破することが簡単にはできないようにもなってゆくのです。

(装甲技術や防護機能は別の機会に説明記事を別枠で書く予定)

成形炸薬弾頭を2段式のタンデムヒート方式にするなど、最新の戦車・装甲車の防護機能を更に無効化しようとするものや、命中直前に目標直近で弾丸が急上昇して装甲の薄い上面に当たる『トップアタック機能』のような工夫も登場しています。

3.誘導方式による世代区分

(1)第1世代/手動誘導方式

○光学式の照準装置で目標となる戦車・装甲車をとらえ、発射したミサイルの後部から発せられる炎や光を照準線(点)に向かって誘導する。

○操作盤とミサイル本体の間につながっているワイヤーから、ミサイル本体の翼をジョイスティックなどで操作して弾道を修正し、目標に導く。

○目標とミサイルの両方を同時に目視で確認しておく必要があるので、高度な射撃手の練度が必要。

○このタイプのミサイルは殆どが低速で、横風の影響を受けやすいため、気象条件によっては使用できない場合もある。

○代表:旧ソ連製AT-3サガー

9M14/AT3 サガーミサイル
(BMP-1歩兵戦闘車の73mm砲塔に装備されたサガーミサイル)

(2)第2世代/半自動誘導方式

○第1世代のミサイルの誘導方式を改良したもの。第1世代のミサイルでは、空中を飛んでいるミサイルの位置を人間の眼で追いかけていたのを、誘導装置のセンサーで検出する方式に変更したもの。

○射撃手は目標を照準装置の中央にキープしつづけることで、ミサイルの誘導は機械が自動で補正してくれるため、兵士のスキルに左右されず、命中精度が向上した。

○しかしながら、命中させるためには、目標を常に照準装置の中央に補足しつづける必要があるので、射撃手には一定の練度が必要であることに変わりはない。(第1世代よりは楽になった)

代表例:米国製BGM71TOW、フランス製ミラン。東側AT-4など。

BGM71TOW

(3)第2.5世代/レーザ半自動誘導

目標に対して照準用のレーザービームを照射し続けることで、ミサイル先端に仕込まれたシーカー(誘導センサー)がそのレーザーの反射波を感知して自分から目標に向かって飛んでいくタイプのもの。(この誘導方式のことを『レーザーセミアクティブホーミング方式』とも言う。)

射撃手は目標にレーザーを照射し続けるだけで良いので、第2世代のものより操作が簡単にはなっている。また、誘導用のワイヤーなどが不要なため、ミサイル本体の速度を高速化することが可能になった。

デメリットとして、レーザーを照射する必要があることから、目標にレーザー警告機が装備されていると、ミサイルに照準されていることが探知される。また、有線誘導に比べると電磁波などによる妨害の影響を受けるといった欠点も出て来た。

代表例:米国製ヘルファイア

ヘルファイアⅡ

(4)第3世代/赤外線誘導

目標が微量に発する赤外線映像をもとにロックし、ミサイル先端部に装着されたシーカーがそれを感知する完全なパッシブ型の誘導ミサイル。発射後は誘導のシーケンスが不必要なため、FF/ファイヤー&フォーゲット(撃ち放し)方式とも言われ、射撃後はすぐに退避行動がとれるという利点がある。戦闘攻撃ヘリ『アパッチ』などに装備されている最新型のヘルファイアミサイルなどがそれにあたり、敵の対空火器にやられる前に回避行動をとるのが可能になった。

欠点として、より高温な熱源(フレア)の射出や、赤外線妨害には弱い。

代表例:米国製FGM148ジャベリン

FGM148ジャベリン

4.ミサイル万能論/戦車不要論

成形炸薬弾の実用化がもたらしたもの。
軽量・小型・高性能な対戦車火器の登場によって、何度かその地位がゆらいだことも歴史の中であったことは事実です。

戦車が不可欠だった戦場と、不要なのでは?と思われた戦場。
連続する時間と発達する技術。
それらを鑑みると、一言では言えないのも事実。

私がどっちか?ですって?

私は戦車が好きです(笑)

利点と欠点、泣き所と強みは良く理解してるつもりでもいます。
将来、超高性能な人型機動兵器に戦場の主役がとって代わったとしても、戦車は完全に無くならないのかなと思います。

5.最後に

ミリタリーものの映画やアニメ、漫画などには、このようなミサイルが劇中で使用される描写がよくあります。

特に印象深かったのが、機動戦士ガンダムの第1話「ガンダム大地に立つ」で、コロニー内部に侵入したザクに、連邦軍の戦闘車両が有線誘導のミサイルを撃っているシーンでしょうか。

子供ながらに、「あのワイヤーみたいなのは何だろう?…ミサイルを誘導するリモコンの線みたいなやつかな?」と、何となく理解してた記憶がありますが、あながち間違ってはいなかったようでもあります。

当時のリアルな兵器は、まだレーザー誘導方式のものは存在していませんでしたが、ミノフスキー粒子と言うSFファンタジー設定があったのを考えると一応、つじつまは合うのかも知れません。

リアル兵器考証にアニメの空想を絡めると話がややこしくなりますね、すみません。

毎度のことながらですが、なにしろ素人が書いている記事ですので、諸所分かりにくいところもあるかと思いますが、どうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。


(補足)本記事を書くにあたっての情報源は、全てオープンソース(一般書籍・雑誌、web上の公開情報など)をもとにしています。

写真などは予告なく削除する場合があります。

文章・画像などの二次使用はご遠慮ください。

よろしければサポート頂けると嬉しいです。頂いたサポートはクリエイター活動費として使わせて頂きます。