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ミュージカル『GIRLFRIEND』感想~その2~

【感想その1】の続きになります。長いですし、終わりません。



【セーフウェイでのお買い物】


あれから2週間、ずっとドライブインシアターに行き、同じ映画を見て距離を確実に縮めていった2人。
萩谷マイクはウィルと一緒にいたいための口実だと伝わってきますが、木原マイクは後のやりとりで本気で映画好きだったんじゃないかと思ってしまう部分があるので面白いです。

夏の暑い日、ジュースを飲みながら嬉しそうに語るウィル。
表情も明るくて、マイクと海に行ってみたいと話していたり、ウィルにとっては初めての楽しい夏なんだろうなと伝わって来ました。

「夏の夜...ドライブイン...スポーツカー! まあ、スバルなんだけどっ」 夢見心地で話すウィルが年相応で可愛くてなんだかほっとしました。

「待つよ」
I've Been Waithingの歌詞の一節のようなこの一言もウィルの嬉しさが詰まっていたように感じます。

マイケルに買い物に誘われたこと、男友達に買い物に誘われるのをずっと夢見ていたこと、大きな袋のドッグフードをショッピングカートに乗せてマイケルと一緒にセーフウェイを歩く...どんどん妄想が広がって、「僕の人生はいつからこんな夢みたいな通りになったんだろう!」

なんてことはない、普通のスーパーに友人と買い物に行くこと...それを夢見なければいけなかった、叶いもしないと思っていたウィルのこれまでを思うと胸が痛みました。

妄想の世界の途中にやってきたマイク。
あのジーンズのベストとサングラスのコーデが似合うのはマイクしかいません!さすがのプロムキングでした。

買い物に行くこと、そこで大きな...から畳み掛けるように「大きな?手に持てない?」キラキラの目で嬉しそうに問うものの、返って来た答えは「引越し用のダンボール」

週末にUPSの集荷が来ることや、ガールフレンドが明日手伝いに来てくれることまで告げられた上、卒業後の進路を尋ねたり、将来が決まっていない...よりも決められる選択肢を持たないウィルのことを壮大な計画があると思っているマイクの発言が、夢見心地だったウィルにどれだけ現実を突きつけたか...一瞬曇った表情が辛く、ウィルの置かれた世界が想像つかないマイクの無意識の残酷さが悲しかったです。

そんな自身を取り巻く重い空気を振り払うように、「さっきの歌、歌ってよ」 「嫌だよ」のやりとり。(たしかその前にマイクが鼻歌で歌っていて、「歌ってるところ好きだよ」のシーンもあったはず。木原マイクがズンチャズンチャしながら、後ろを楽しそうについていく井澤マイクも個人的に好きです。)
なかなか歌ってくれないマイクに、「このチキン野郎!」と煽ってニワトリのモノマネをするウィルがよかったです。
ここのニワトリは、健介ウィルや井澤ウィルは可愛くて、島ウィルはやたらとニワトリが上手かったですw

こんな可愛い煽り方されたら、「あー!そんな風に言えば思い通りになると思って!!」と言いながらも満更じゃなく応じちゃいますよね。
しょうがないなの歌い方じゃなく、結構ノリノリで歌うマイクも可愛かったです。

「Looking At the Sun」
ずっと 太陽見つめて 君を待ち続けた
心奪われ 目を離せなかった
眩しい太陽 見つめてた瞳は
もう見えない

今の2人を表しているような曲。
ただ無邪気に楽しそうに歌う2人が夏の日差しのようにキラキラ眩しくて、ずっと続いてほしいシーンでした。
途中、カートのカゴにウィルが入ってマイクが全力で押すシーンはどこにでもいる17歳の青年たちで、見ているこちらも楽しくなりました。
かなりのスピードでひやひやしますが、それも含めて17歳だなぁと。(井澤・吉高回は落ちたらしいと聞きました)
カートを戻しに行くシーンは、井澤・木原回のウィルはめちゃくちゃスローモーションで遊びが効いていました♪

帰り道、満点の星空を見上げ、マイクから伸ばされる手。ウィルの手に触れる直前で通りがかった車から発せられる心無い声にばっと離れる2人。
最初に見た時は、なんて言われていたのか聞き取れず、2人が手を繋ごうとしていたのにも気付けなかったのですが、千穐楽で手を繋ごうとしていたのが分かりやすくなっていたのか気付くことができました。

八百屋舞台が時計の針として逆方向に回っていく表現が、近付いた2人の距離を前に巻き戻して行くようで胸が痛かったです。
1990年代、まだ同性愛が受け入れられていなかった時代、2人にとっては現実を突きつけられる出来事になったのではないかと思います。

突きつけられた現実にマイクが呟いた
「俺はここが嫌いだ」

対してウィルは「僕は気にしない。人とかいろんなこととかどうでもいいって」
と精一杯の言葉をマイクにかけても届かず...

ウィルの「気にしない」は決して余裕のある言葉ではなく、これまでどうにも出来なかった辛いことを受け続けた自分に対して言い聞かせてきた言葉のように感じました。

野球の練習があって、彼女も家に荷造り手伝いに来るからと帰っていったマイク。

マイクが去った後のウィルの
「そんなふうに僕を見ないでよ...」
キラキラ眩しいくらいに楽しく幸せだった1日。それが全て夢で、夢から覚めたように、ウィルの目から光がふっと消えて、絞り出すように出された言葉が胸を締め付け、感情がぐちゃぐちゃになりました。

【買い物翌日】


眠っているウィルのもとに1本の電話。
「やぁベイビー!マイクだよ~!!」「これで満足ですかっ!」

昨日の今日で何事!?となりましたが、ウィルも寝起きでびっくりするテンションでした。

ガールフレンドが手伝いに来ず、マイクも予定変えて友達と遊びに行くとなったことを父親から咎められ、むしゃくしゃして行き場のない怒りを抱えたまま、父親の目の前でガールフレンド(に見せかけたウィル)に電話をかけてみせたのが事の顛末でしたが、そういった時に縋りたい存在にウィルはなっているんだなと感じられて、それがウィルも分かっているから、怒らずに付き合ってあげてるんだなと思いました。

「お前、今何してる?」 「何も」

「今から車で迎えにいく。いいな!」「急に言ったってこっちだって予定があるかもしれないでしょ。」

「お前に予定なんてない。」

ここのやり取りは、なんだかマイクの父親を見ているように思いました。1番嫌っているはずの父親と結局は同じような行動を取ってしまうマイクの危うさを表しているように感じました。

「可能性はある」 「あるの!?」

「ないけど...」

「一緒に行くだろう?」 「えーどうしよっかな...」

「えぇっ!?...ごめん、そんなつもりじゃ...」

ちょっとした仕返しのようにマイクをあしらうウィルに翻弄されるマイクが少し可愛く思えました。

そんなマイクを見て、優しく「大丈夫だよ」と答えるウィルが愛しかったです。

「何をするの?」 「分からない」

「オッケー...ベイビー」

温かくて優しい響きで...仕方ないなぁと受け止めて包み込むようなウィルの優しさを感じる一言でした。

【その3に続きます】

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