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ミュージカル『GIRLFRIEND』感想~その3~

ようやくその3ですが、記憶を呼び起こして場面に触れながらなので長いです。
予めご了承ください。


【ドライブデートとGIRLFRIEND】

車で迎えに来たマイク。車に乗り込むと大音量で音楽をかけるウィル。

「うるさいよ!」とマイクが言うと、「うるさくないよ。これはロックンロールなんだ!」とウィル。

「父さんのことは忘れろ」
マイクを元気づけるためのウィルの行動。
いろんなしがらみから解き放たれたように、歌い出す「GIRLFRIEND」
ぶわっと力強い歌声が重なって、ギアが1段上がったようなGIRLFRIENDの歌い出しが好きです。歌詞も今の2人を表しているようで心に残りました。

君を見るまで 誰も知らなかった。
君に会うまで 僕は孤独だった。

外の世界を遮断して自分の世界に篭って生きてきたウィル、周りに慕われ期待されていてもずっと孤独を抱えてきたマイク。ようやく自分の孤独を埋めてくれる存在に出会えたことが表されているように感じられました。

声を合わせて楽しく歌う、普段の大人びた2人ではなく年相応な2人が歌って騒いで叫んで、「くたばれ悪魔!」のような子どもの頃に一度はやったような妄想にも全力で楽しんで...2人にとって得難い時間になったのだと思います。
ドラムソロやエアギターも本当に楽しそうで、キラキラ輝いていました。
(余談にはなりますが、萩谷マイクはさすがのドラム捌きでした。)
個人的には曲のリズムに合わせて、ダダダダ...と2人で足を踏み鳴らして歌うところが好きです。

そして、健介ウィルと萩谷マイクの千穐楽では、歌の最後「君を手放さない 二度と手放さない」でおでこ合わせてグリグリがたまらなく最高でした!

【星空の下のWe're the Same】

車が着いた先の一面の星空は本当に美しくて惹き込まれました。
星空の下でウィルが語る自分の過去。
これまで他人には心を閉ざして自分だけの世界にいたウィルが自分のことを知って欲しいと思える相手ができた。
それがマイクで、「僕の父さんはユタに行ったんだ」と両親が離婚していることを明かすものの、父親に何もかも決められ、抑圧されているマイクにとっては逆に羨ましいこと。
「いいことじゃないか」
と思わず本音を出してしまうところがマイクの若いところで、ウィルとのズレ。考え方の違いが後に尾を引くんじゃないかと感じるシーンでした。

ウィルにとっては悲しいことで、さすがに失言だったと感じたマイクが励ますように近くに座り、そこで分かるもう1つの辛い過去。
1番知られたくなかったタバコの臭い。

母親のタバコの臭いで、自分は生まれた時からタバコの臭いがしている。それが嫌だから出かける時は服を洗って着ているが今日は急だったからそれが出来なかったと告白。
マイクが「気付かなかった」と言った際のウィルの安堵の表情に胸が痛みました。

小学校の頃は従兄弟の服を盗んで学校に置いて学校で着替えていたことや、3年生の時に間違えて従姉妹のジェニファーの服を持ってきてしまい、そこに描かれていた「Daddy's Little Princess」。
言い訳も信じて貰えず、同級生にからかわれいじめられていた辛い過去の告白は聞くのも辛く、こんなに早くからウィルは自分の世界に籠らなくてはいけなかったんだと悲しかったです。

にも関わらずこらえ切れずに、笑い出すマイク。少し傷付いたようなウィルの顔。
マイクの時々見られる無意識の残酷さが憎く感じてしまいます...
健介くんは、こうした表情のちょっとした変化を本当に繊細に演じていてこうしたシーンでは特に際立っていました。

沈黙が続いて、沈黙を崩すようにマイクから発せられた言葉。

「お前さ...なんて言うか...俺のこと、かっこいいとか思う?」

「う~ん...」

「あっいや、からかってる訳じゃない」

「おう...」

「それで思う?」

「まぁ...思う...かな...」

途中から体も目線も逸らして、恥ずかしそうにというよりも信じきれていないように答えるウィルに対して、かっこいいと思うと返答をもらったマイクが小さく「よしっ!」と嬉しそうに噛み締めるのも印象的でした。

ここでのシーンはペアごとに大分距離が違っていて、井澤・木原ペアはやや離れた距離、島・吉高ペアは少し離れた距離。どちらも八百屋舞台の上で演じていましたが、高橋・萩谷ペアは地面に直接座ってかなり近い距離でした。

ウィルのかっこいいと思う発言を受けて、
「かっこいいよお前も...たぶん。分からないから顔を見せてよ」とマイク。
「暗くて見えないよ」

ウィルを近くに寄せて、正面を向き合い、マイクがウィルの顔に触れる。
ウィルがその手に触れる。
時が止まったかのように静かな空間。ウィルを確かめるように優しく触れながら、
「お前はかっこいい...いい奴...面白い...センスがある。」
「そんなお前が...好きだ。」

告白して名残惜しそうに離れながら呟くマイクの「ここから離れるの、少しは寂しく感じるかもな…」に対してウィルの「月にでも行くみたいだね」が印象的で私の心にすっと広がっていきました。
後に出てくる言葉と対で心に残った言葉でした。

告白の後、沈黙を破るようにウィルが「野球の練習どうだった?」「彼女は元気だった?」と問うと、言葉をさえぎるようにギターの弾き語りで歌い出すマイク。
誤魔化した?と思ってしまいましたが、紡がれる歌声にそんな思いも消えました。

言葉はいらない
君を知るのに
君もわかるさ 僕を
伝えなくても分かる 僕のこと
隠さないでよ 全て

マイクの優しく響く歌声に重ねられるウィルの「ベイビー」

歌を一度止めたマイクがウィルに伝える
「彼女とは別れた。」

「他に好きなやつがいるって言った…」と熱い視線を向けて見つめるマイク。

大学へ通うため週末には遠くへ行ってしまうマイク。
ウィルにとって待っているのは未来の別れ。
気持ちを受けて絞り出すように切ない眼差しでウィルが返す
「月に行かないで…」

どうしてこんなに切ない演技ができるんだろうというくらい切なくて胸がぎゅっと締め付けられるシーンでした。
あの健介ウィルの絞り出すような切ない声は今も耳に残っていて、切なくて辛いけど忘れられないシーンの1つです。

ウィルのそれには答えず、再び歌い出すマイク。
途中から目を閉じて歌を聴くウィル。
歌い終わっても目を閉じたまま。

「どうして目を閉じてるんだ?」
答えないウィルにそっとギターを置き、ちょっと居住まいを正すマイクが微笑ましかったです。

ゆっくりとウィルに近づくマイク。
唇が頬に触れようとした瞬間、目を開けて慌てて飛び退くウィル。

「「あはは…」」
お互い照れくさそうに笑いながらも、視線が重なると引き寄せられるように顔が近付き重なる唇。

会場中、息をするのも忘れるくらい静かに見守っていて、静かで本当に2人だけの空間のようでした。2人の空気がそうさせたのではないかくらいあの瞬間は2人だけの世界でした。

しっかりとキスシーンがあるのには少し驚きましたが、とても綺麗で、きちんと演じてくれたからこそ心に響くシーンでした。

余談ではありますが、シャッフル含めて8公演観ましたが、高橋・萩谷ペアが1番キス長かったです。2人の千穐楽は頬も触れちゃったんじゃないかくらい距離が...
とにかく甘くて胸がキュッとなりました。

唇が離れ、優しく見つめ合った後、生バンドと共に揃った声で優しく、でも力強く歌われる「We're the Same」が美しくて、何より尊くて涙が出ました。

ベイビー 僕と同じさ
瞳に映る君は
ベイビー 君は僕だ
誓うよ 僕を信じてよ
言葉はいらない
僕らは同じだ
僕らは

これまで孤独だった2人が心を通じ合わせた瞬間。待ち望んでいたけれど、決して叶わないと思っていた自分と同じ存在、自分を理解し受け入れてくれる存在への想いが歌に表れ、心に響きました。

【その4に続きます】

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