ミュージカル『GIRLFRIEND』感想~その5~
高橋・萩谷ペア千穐楽中心の感想となります。記憶を辿りながらのため、場面の時系列や台詞が異なる場合がありますのでご了承ください。
【Your Sweet Voice】
「行こう」と手を引いて向かった先はマイクの家。
ベッドの上でシーツを整え、枕を2つ並べるウィル。枕の距離が近くて、それを並べたのが健介ウィルというのが微笑ましくてキュンと来ました。
一方の萩谷マイクは気合い入れて香水をつけているところを、千穐楽ではウィルに見られて「へへっ」と照れ笑い。
この幸せがずっと続いて欲しいと願わずにはいられない愛おしい2人でした。
ベッドに並んで腰掛け、マイクから受け取ったグラスに注がれるお酒。
乾杯して一口、アルコールが口に合わないのか顔をしかめるウィルがなんとも言えず可愛かったです。
緊張からか口数の少ないウィルに対して、「何で今日はそんなに静かなんだよ。何か喋ってよ」
そこはマイクがリードしてあげて…と思いますが、さすがのプロムキングでも緊張しているのかなと一緒に緊張してしまいました。
先に口を開いたのはウィル。
「音楽を聴くかギターを弾いてよ。ギター弾いてくれる?」
「梱包済みだ」
「ギターを梱包したの?」
「あぁ、全部持ってく」
「お前はここに残ってギターを教えるべきだ。医者になるな!父親に放っておいてくれよって言えよ!」
ウィルが本音でぶつかっても、答えずベッドから降りてバツが悪そうにお酒を飲み干すマイク。
父親を嫌ってはいても、欲しいものは手に入り、大学にも行けるある意味では恵まれた環境。敷かれたレールを大きく外れられるほど大人ではないマイク。これまでも父親のことになると真正面から受け止められない姿を見ていただけに、ウィルにはどうにもならない諦めのような気持ちもあったのではないかと思います。
それでも、言わずにはいられないくらい、ウィルにとってマイクは大きな存在になっていたと思うので、一瞬悲しそうな顔でマイクを見つめた後、お酒を飲み干すウィルを見て胸が痛みました。
「じゃあ目を閉じて音楽のことだけ考えよう」
正確な言葉は記憶が怪しいのですが、音楽のことだけを強く考えていたら歌の神様が仕方ないなとなんとかしてくれるかもしれないというような感じの話をウィルがして、それに対してマイクも敵わないなというように「どれだけかかるか分からないよ…」
「いいよ…やろう!」
ベッドの上で目を閉じるウィル。仕方なく床に寝転んだマイクも目を閉じる。
しばらく無音の世界。そのうちにウィルから聞こえてくる鼻歌。
お互い笑いながら体を起こし始まる甘い歌。
聞かせてよsweet voice
朝まで隣で
聞かせてよ soft voice
落ち着くその声
瞳閉じて 怯えず
聞かせてよ 声を
ベッドに並んで優しく甘く紡がれる歌。
ウィルが羽織っていたシャツを脱ごうとすると途中からマイクが脱がせ、頬に触れて見つめ合いながら奏でる歌。
愛の炎が灯る
愛の炎灯る
聞かせてよsweet voice …
甘い歌を奏でながらゆっくりとべッドに沈む2人。愛しそうに向かい合って横になり、胸の前で手を重ねあって眠る2人。
ドキドキするくらい甘くて、でもゆっくりと優しい時間が流れていました。
千穐楽以外はウィルの手がマイクの腰元に置かれるだけだったのが、千穐楽では手を重ね合って眠っているように見えました。
どの回も本当に甘かったのですが、井澤・木原ペアは幸せな気持ちのまま眠りにつくピュアな雰囲気。高橋・萩谷ペアはその先もあって朝を迎えたのかなと思うような雰囲気を感じました。(島・吉高回のみ見られずなので分かりません。)
【迎えた朝】
目覚めたマイクがウィルを起こさないように優しく重なっていた手を撫で、ベッドから抜け出して引越し屋の対応。(シャッフル回での吉高マイクは太ももを優しくトントンしていました)
引越し屋が箱を運び出している間もウィルは眠ったまま。
目覚めた時には隣に眠っていた愛しい人の姿はなく、箱もなくなった何もない部屋で不安そうにマイクを呼ぶウィル。
不安そうに泣きそうな声で呼ぶ「ねぇ」が切なくて胸が痛くて辛かったです。
健介ウィルの「ねぇ」は泣きたくなるくらい本当に切ないです。
そんな絶望を味わっている中にようやく現れるマイク。浮かれながらネブラスカで過ごす最後が、ウィルと一緒に迎えた朝でよかった、夢でもウィルが出てきたと上機嫌で話し出して、あまりにも対称的でウィルに追い打ちをかけるようで、思わず「お前はぁぁぁぁ!!」と殴りたくなる光景でした。
「僕は何も見なかった。」
「俺の夢の中にいたからだよ」と嬉しそうに夢の内容を答えるマイク。
もうこれ以上はやめて…と言いたくなるようなすれ違い。
ウィルの目からはすっと光が消え、
「トワイライトゾーンのようだった。人生で1番大事なことは、世界で自分は1人であることを知ること…」と呟く姿に不安を覚えました。
「大学に行くのは遅すぎると思う?ていうのは僕のことなんだけど」
「あぁ」
「そっか…」
「前の年にはさ、入学願書出さないと」
今更何でそんなこと聞くのかくらいに答えるマイクの姿が決定打でした…
大学に行くことが難しいことも間に合わないこともウィルは分かっていたはずですし、それより何よりマイクと離れたくないという思いから出た言葉だと思うので、気持ちが通じあって、自分にとって唯一の存在であったマイクからの言葉はウィルを壊すには充分で…
心を閉ざして処理しきれない言葉を独り言のように吐き出し続けるウィルが辛そうで苦しそうで、あんなにも幸せだった夜からの落差が凄すぎて見ていられないくらい辛かったです。
そんなウィルを心配して優しく背中を撫でて声をかけるマイク。こんなにも噛み合わない優しさが逆に残酷でした。
「……帰らなきゃ」
「試合には来れないの?」
「行けない…」
堪えていた糸が切れたように、「クソっ!クソっ!くそっ!」とシャツを叩きつけ、悲痛な叫びを残して去っていくウィル。
ただ呆然と見送るマイク。ウィルが残していったシャツを拾い上げて抱きしめ、もう残っていない匂いを確かめるように嗅ぎ、幸せな時間を過ごしたベッドにウィルのぬくもりを求めるようにゆっくりと触れる。泣きそうで辛そうな姿に胸が痛みましたが、それ以上になぜウィルが去っていったのか理解出来ていないマイクのウィルとの距離、決定的なすれ違いがただただ悲しくなりました。
このシャツのシーン、6月23日の島・萩谷回ではウィルが叩きつけたシャツがウィルの足に絡まってしまい、一緒に去ってしまうハプニングが…。その時に萩谷マイクはシャツがない状態で、ウィルの去った後のベッドに目を向け、ウィルのぬくもりを探すようにベッドに触れる演技でウィルが去った悲しみを表現していました。それまではベッドに触れるシーンがなかったのですが、この回以降は見られたのでここでの演技が取り入れられたのかなと思います。
「You don't love me 」「Sick of myself」をそれぞれが歌いながらすれ違いが表現されているのも切なかったです。
「気付かない 君に恋焦がれてる僕を 愛せない僕のことを」
「別れるつもりだよね」「僕を捨てて」
八百屋舞台の上で歌う2人。離れた先から腕を伸ばし、マイクの方を一瞬見たウィルの視線にマイクの視線が重なることはなく、胸が締め付けられました。
【その6に続きます】
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