雑記8(きまずさ)

最近美容院に行きだした。元々は近所の床屋に行っていたが、そろそろおしゃれをした方がいいだろうということになりはるばる東京へ髪を切りに行っている。

結果から言えばなかなかいい感じの髪形になった。これならもっと早くいけばよかったと思う。

いつもそうだ。毎度毎度考えれば絶対にやるべきなのに変なためらいが生じる。そしてあり得ない遅さでやりだして、そののんびり具合に後悔する。やるのは遅い癖に後悔は早い。

ただ、一点だけ問題がある。元々通っていた床屋だ。その床屋はご主人一人で営んでおり、月に一度ほど会う仲になってからもうずいぶん経つ。

そんな人間がある日を境に急に来なくなるのだから、多少驚いたのではないだろうか。もっとも、ああいった商売ではよくあることなのかもしれない。

その床屋のある場所が問題である。私はいつも最寄り駅まで歩いていくのだが、その道中に床屋があるのだ。何たる気まずさ。

もちろんう回路はある。しかし、今後もこの町で暮らしていくにあたっていつまでも迂回しているわけにはいかない。仮に5分余計にかかる道で週五日最寄り駅に向かうとしよう。一日につき10分余計にかかる(帰りも当然迂回するため)一週間で50分、一か月を3週間とすると一か月につき150分。一年で1800分。およそ30時間の損失となるのだ。実際最寄り駅に向かう回数はこれより多い。しかも何一つ解決していない。

では、迂回しないことにしよう。仮にばったり会ったとして、向こうがけろっと挨拶してくれれば一番。しかし、そうはいかないだろう。なにせ髪型が床屋でのオーダーと違う。浮気のしるしがこんなにはっきり出ているのにけろっと挨拶はできない。

最悪なのはお互いがお互いの心理状態を読みだしたとき。つまり、私が気まずいと思っているのを向こうが察し、フォローしようとしている・・・ということを私が察してそれに乗っかるという光景。最悪だ。

もういっそのことめちゃめちゃあほのふりをしてしまおうか。何も気づかぬように「こんちはー!」と元気よく挨拶をする。・・・これはおそらく気まずさの種類が変わるだけではないか。

もう最終手段は引っ越すことだ。すべての問題をそこに放置してどこかに逃げ出してしまおう。リスク回避だ。
問題があるとすれば、引っ越しには金がかかる。つまり、私は今う回路によって発生する時間を金で買うかどうかを迫られているのだ(しかも元々は私の時間だったのに!)。

美容院に行き出したばっかりに急に価値観を問われる問題にぶち当たってしまった。こじゃれてしまった頭を搔きながらのんびり考えるしかない。まあ、引っ越しはまた今度やろう。