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令和5年 司法試験 再現答案構成(刑訴)

捜査①

1 領置(221条)が令状を不要としている趣旨→遺留物の定義(占有者の任意に提出した物も含む)→本件の占有の移転の過程を説明し、遺留物該当
2 そのまま収集され中身を見られることのない期待を制約するので、比例原則が妥当する。
(1)目的=何らかの犯行道具の収集・保全
必要性=ビデオカメラの映像の流れ→甲が犯人と一致→甲のゴミには犯行に使われた道具が存在する蓋然性大+足跡以外に証拠はなかった→ゴミ袋を領置する必要性はあった。
 犯人は犯行直後に証拠隠滅のためにゴミにだすのが通常。収集されると消滅。緊急性あり=必要性が高度である。 
 制約利益=期待に過ぎない・他のゴミも取っていないので新たな制約はない。(2)相当であり、適法

捜査②
1 遺留物該当性→OK
2 プライバシーを制約するので、比例原則が妥当
(1)目的=甲と犯人との同一性を判断するためのDNAの入手
問題文3段落目前半写経→DNAが一致すると現代科学では甲が犯人であることが間違いない。
コップの裏側にマークをつけるという手段をとる必要性(問題文写経)
DNAによる一致以外に他に証拠はない
=目的のために領置を行う必要性大
 制約利益=DNAのプライバシーの認定(唾液は尿に近い点・DNAによって内心が知られるようなものでもないのでプライバシーとしては低い点・相当性は他のプライバシー侵害を無用に起こしていない点)
(2)適法

※感想
 ①は任意提出物、②は遺留物として論じるべきだった。意識的に比例原則に入る前に被制約利益を特定したことと、当該捜査手法を用いる目的を特定した。

設問2
※伝聞法則の趣旨から、伝聞証拠の定義・321Ⅲの論証は前提
1 実況見分①
(1)推認過程 
・争点=犯人性
・推認過程=連続写真により、被告人の解錠の物理的可能性を証明し、もって犯人性を推認する。
 実況見分①は、確かに検察庁で行われ、かつ、検察庁は明るい状況であると思われるから、甲が実際に行った深夜たる午前2時という犯行状況である真っ暗な状況とは異にする。そのため、再現性が低く物理的可能性を証明できないとも思える。しかし、V方玄関ドアと同じ錠を用意し、また同様のピッキング用具を用いて再現が行われた。そして、ドアをピッキング道具で解錠できるか否かは、人間の触覚の作用を用いておこなわれるはずであり、視覚の作用は影響しないので、明るさの点で再現性が劣るとは言えない。それゆえ、再現写真から、甲は開錠の物理的可能性を証明することができる。そして、このような非常に特殊な方法で解錠できるのは甲以外想定し難いという経験則を介して、甲が犯人に違いないということ(甲の犯人性)を合理的に推認することができる。
(2)そうすると、要証事実は、実況見分の結果であり、写真は調書と一体となって証拠能力が認められる。
 また、甲による説明は、Qが実況見分を行った動機・きっかけを示すもの(指示説明)であり、独立した証拠とはならない。
(3)321Ⅲでクリア

2 実況見分②
(1)推認過程
 ・争点=犯人性
 ・推認過程=被害再現状況→犯行の物理的可能性→犯人性?
 犯行の再現を検察官が行なっているうえ、犯行現場ではなく検察庁で行なっているため再現性は低く犯行の物理的可能性を証明することはできない。
 実質的な要証事実は、再現通りの犯行が存在したこと。それを証明し、もって犯人性を推認しようとする過程。
 →Vの知覚等が問題になる。さらに、再現は検察官らで行われているため、Vが検察官らに伝えそれを検察官らが挙動による供述をしている点で、検察官らの知覚等も介在している(=再伝聞)。
(2)伝聞例外=321Ⅰ③
 ・説明部分については、署名押印がないため、証拠能力を欠く。
 ・写真部分 
 確かに、写真は機械的録取方法により正確性が担保されているため、一般的に署名・押印は不要であるが本件ではどうか?
 →本件では例外的に写真であっても署名押印は必要(∵写真で解消される伝聞過程は録取過程の正確性。Vが検察官に説明した通りに検察官が正確に挙動により再現しているかという伝聞過程は、写真では担保しきれない。)
  したがって、写真も署名押印を欠くので、証拠能力を欠く。
(3)調書②は証拠能力を欠く。

※感想
 調書①はまだできたと思う。調書②は問題文を読み間違えて、被害者も検察官が再現したと思った。実際は、VとSによるものである。しかし、Sが再現している点で要証事実を犯行状況ととるのなら、写真であっても署名押印が必要な点は変わらないように思える。例外は321Ⅰ③にしてしまった。

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