ka na ta のショー2日目を観に行った話

ka na taという服屋さんのショーを観に行った。

「ブランド」とか「ファッションショー」とかいうのなんだかなと思ったので服屋(たぶん)さんのショウと称する事にする。

身体を許すまでの時間のような、また服の方に着られてないかとかそんな事を試されるようなそんな時間のような気もした。適切な言葉が見当たらないけど言葉を借りるなら「適切な言葉なんて無くなって」しまえばいいのかもしれない。以下内容についての想い出し等。

当日券を求め17時頃キチムへ向かうもcloseのフダが置かれていたので一時撤退。18時頃再びキチムへ向かいcloseを物ともせず(物ともしてたらごめんなさい)階下へ降りた女性についていき無事当日券を購入。

19時OPENとのみ書かれていたけどOPENというのは開場だろうか開演だろうかと思案しつ19時頃再びキチムへ。どうやら19時開場だったらしい。チケット代3500円にワンドリンクとカレーが入っていてなんだかそれだけで少しうれしい。コーヒーで手が塞がったのでカレーは食べられないかと思ったけれど、上演までは時間があるらしくカレーも食べる。ちょうどカレーを食べ終えたところで上演が始まる。

デザイナーさんがマイクを持って何処かに行った。姿が見えないまま舞台に置かれたスピーカーからトイレやシャワーの流れる音と声が聞こえてくる。

あるライブを境に特定のだれか のために 服をつくることをやめた

どうでもいいふくをつくってといわれて どうでもいいふく とは とおもいながら それもつくれたらいいなとおもっている

言葉はそのような形だったけれど声は悲痛でどこか寂しそうな感じがした。けれどもそのバンドのことはちゃんと好きだということも伝わった。でもやっぱり寂しそうだった。

次に2人のモデルさんのような人がやってきた。デザイナーさんもやってきてレザージャケットとワイドデニムを着ていた女の人に声を掛けた。
かたそうな服をきているね そういうとその女の人に着替えてみようかとワンピースを出した。

女性に目隠しをされながら目の前で着替えが行われたけど、それをまじまじ見るのは卑怯なような気がして僕は少し目を逸らしたりした。
でも少し痛みを伴うような空気があってそれからは目を逸らさないようにしたいとも思った。

ワンピースは女装してるみたい、スースーすると言っていた。デザイナーさんはスカートをあまり履かない女性の話をした。

一瞬僕の想い出が入るのだけれど、昔会ったあの子もそういえばそんな感じだったと思い出していた。けれどそうでないと思えば思うほど自分が女である事、もしくは男である事から逃れられないようなそんな気が少ししている。彼女は元気だろうか。僕の想い出終わり。

デザイナーさんが、服を着替える時に脱いだデニムパンツをポイしたと言うと、あれ高校生の頃から履いているのに と言い返されていた なんだか好きな瞬間だった。

しばらくして女性の目隠しが外された。「2人しかいないと思ってた」と言っていて、さっきも我々おったがな。と思いつつも僕らの見えないところで2人だけの空間があったのだろうか。

デザイナーさんと女性はその後「メソポタミアの歌」を歌っていた。よく分からなかったけどやたらとデザイナーさんの声に肉が入っていた。真相はきっとデザイナーさんの中にしかないのだろう。

さっき脱いだパンツをポイしたので僕もka na ta の服をポイした。と椅子に掛かっていたジャケットをポイした。仲直りだったのだろうか。少し笑えた。

次に女性と入れ替わりで男性がやって来た。容姿端麗でダウナーな感じがした。
ワンピースとジャケットのセットアップを着て、あるいて と言われていた。

服を脱ぐ時 おこってる?と言われて いや。 と返していた。

ある程度あるいた後、服になる前の楕円の布を被せられていた。
服になる前だから何かできる そんな言葉を聞いた気がする。

三人目がやってきた。三人目の女性は当日にスタッフが吉祥寺で歩いていた所を声を掛けて呼んだらしい。前の2人とは違って街で生活をしている一般の方。ターン出来るんだね。とデザイナーさんも呟いたように結構軽やかにターンを決めていらした。モデルをやっていたりするのだろうか。

3人は今度は好きに服を着ていいよと言われる。最初の女性はシャツとパンツのセットアップを男性と三番目の女性は恐らく同じパンツと色違いの同型のコートを着る。

この間待っていた4人目予定の人からの連絡が来る。4人目の人についてはここではあまり書くことは出来ない。そういえばその彼(彼女)はka na ta の服を着たことはあるのだろうか。どうかその人の幸せを願うばかり。

そうして最後の人がやってくる。服は友人と一緒に買ったりする。自分では買わない 似合わないと言われたことがある。

デザイナーさんは少し昔の服と着る人との距離が遠かった時の事を話して あなたが似合わないということはよくわからない と呟いた。なによりもやさしい声に聞こえた。
デザイナーさんが今日1番来ている人の中で服を着てもらうことに興味がある人だと言った。

最後の人が服を選ぶ なんでその服にしたの と聞かれて かわいかったから とこたえる デザイナーさんも反芻するように 何度か そうか とだけ呟く。

そうしてデザイナーさんは最後の人に選ばれたワンピースの上からジャケットを羽織らせる。
ちがうなあ と呟く 別のワンピースを着せようとする その人に合う服を探していた。

遅い時間ですけどもうすこし時間をください そうじゃないと服をつくっている意味がなくなってしまう。
そんな言葉が呟かれた気がする。

歩いてみたら
最後の人が歩く 歩幅が小さいね と言われる 小さいままでいいよ 走ってみたら 裸足で 外に出て
最後の人がワンピース一丁で外に裸足で駆けて行った 。いつのまにかシャツのセットアップからワンピースに着替えていた最初の女性と他の2人がメソポタミアを歌う 男性もメソポタミアを歌う 観ているお客さんも身体が閉じちゃうから一緒に歌おう と呼びかけられるも僕を含め歌う人は居なかった

がんばれ!と最初の女性にデザイナーさんが声をかける 最初の女性がメソポタミアを発する 歌かどうかはもはや重要ではない 少しだけ広がるメソポタミアの輪 強まっていくメソポタミアの輪
そうこうしている内に最後の人が帰ってきた。
真冬だけど扇風機がその人の前に置かれた。
扇風機の前で立ち尽くす女性の背中だけが見えた。
これでショーはおしまい。

ショーが終わってドリンクと軽食が頼めるようになって服も展示が再開された。
試着は出来るか分からなかったので また出来ても1着の試着がおねおね長くつっかえたら申し訳ナッシングなので、またのんびり試着してみて買うかは考えたい。
なんやかんやそうぽんぽん買えるぷらいすではないので自分の中では少し小さな家を買うくらいの感じだ。…家買ったこと無いけど。

さて、このショーの仮題は「オーディション」だった。

ショーに出ていた最初の女性の方は分からないけれど、男性の方は俳優で自らka na ta のモデルになりたいと志願したらしい。
そうだとするなら今回のショーはモデルオーディションだとも取れる。

街で声を掛けたという女性はオーディションをするされるという訳でなく生活で服を選べる人だったのだろうか。
もしかするとオーディションの必要なく日常的に服を着れる人なのかもしれない。

最後の人はどうだろうか、一見服からオーディションをされているように思えるかもしれないけど、本当は最後の人が服をオーディションしていたんじゃないだろうか。自分の身体との距離が合うかどうかの服を。どんな権威的な服だって着る人から選ばれなきゃオブジェになってしまうもの。
なんだかそれは服を選ぶ上で大事な事なのだけれど、ファッションの中にいるともみくちゃにされて忘れさせられてしまうようなそんな事だったと思う。
服を悩みながら選んで着る事を忘れないように。

もうしばらくka na ta の事を書くことは無いだろう。たとえ買ったとしてもただ服を買ったとしか言わないだろう。

功名心ではなくどの服からも見放されてしまったようなそんな人が探した先に見つけたようなそんな感じの方が僕はいいなとか思ったりしているから。

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