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2023年11月

読んだ本の数:4冊

田辺聖子 十八歳の日の記録
田辺聖子/文藝春秋

一個人の日記に留まらない内容を含む、すごい記録だ。理屈はわかってもなかなか掴めない、ふつうの人がふつうに「お国のために」を疑わず生活している感じ。その感じがすんなり飲み込めた。で、劇的な8/15があって、けっこうあっさり切り替わってゆく。それは、生きてる以上はそれでもどっこい生きてゆくという力強さでもあるけれど。生きるだけで精いっぱいの証であるけれど。それでよかったのかなと悶々とすることは、後の世の民として必要なことだと感じる。ナチュラルに顔を出す女性蔑視はきついけど、これに比べたらマシにはなってるよね……。短篇小説はほんとにまだまだで、田辺聖子も最初から完成されてたわけじゃないんだなあというのがおもしろい。すごいエリート意識にたじろぐ。上級の学校にいくってそういうことだったんだな。
読了日:11月04日
https://bookmeter.com/books/19010702


文藝 2022年冬季号
河出書房新社

文藝賞のとこ。
【ジャクソンひとり】同じものをみても自分には違ってみえるであろう世界の可能性を提示される。このうわあーっという感覚は何かな。羞恥に近いかな。一・個・孤であるはずの「ひとり」を逆手にとって、マジョリティの雑な視線を疑似体験する。自分にとっての「小説を読んで面白いってこういうのだよ!」があった。よかった。
【ビューティフルからビューティフルへ】いろんな言葉を読んで蓄積している作家なのだな。コラージュの元ネタに気付いたり、作者の配置した暗合を解く面白さはある。けどそれは、大喜利や「ボケましょう」みたいな、いっちょうまいこと言ってやろうというノリに感じられて、べつに小説でじゃなくていいなとおもった。対談の細切れなやりとりの雰囲気(=作者)と作品とが間違いなく地続きだとかんじられて笑った。
読了日:11月05日 
https://bookmeter.com/books/20275073


文藝 2022年冬季号
河出書房新社

【魔女特集】「わかってやってる」「じぶんでなる」のがいいなあ。いいなあ。王谷晶氏はご無事なのだろうか。『魔女たちの世紀』を一生懸命集めます。
『山姥』よりも『仙女』がよりわたしのおもう魔女像に近いか。
読了日:11月18日 
https://bookmeter.com/books/20275073


ウィッピング・ガール トランスの女性はなぜ叩かれるのか
ジュリア・セラーノ/サウザンブックス社

タイトルと表紙ですぐに思いうかんだ、自ら命を絶ったあの人。わたしと同じ誕生日だったあの人。パズルのピースを手に入れた衝撃。
【第一部】そのこと、わたし、考えたことなかったな…が満ちている。それこそがシス特権なのだろう。著者のいうことの多くは、腑に落ちるよりもまずはショックが先。わかるけどわからないショック。情報として理解するけど自分の血肉になった気がしないショック。色々わかった気になって本当は全然見えていなかったショック。
読了日:11月23日
https://bookmeter.com/books/21084890



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