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間接購買部の立ち上げ方

GW、奇跡的に半日ほどひとり時間を確保できたのでかねてから考えていた間接購買部の立ち上げ方を書いてみました。

間接購買部がない会社が新たに立ち上げることって稀にあると思います。

間接購買部が今までなかった理由は間接購買部がなくても会社が回るからですよね。各部署で各々サプライヤーを探して使えば万事OKだからです。

まあでもそんな会社で、コストを削減したいか何かの理由で間接購買部が新設されましたとします。間接購買部を立ち上げなきゃいけない立場になったら何をすればいいのでしょうか。


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Day1から取り掛かることを大雑把に言うと下記になります。

1. ストラテジーを立てる

2. ユーザー部署とのコミュニケーション

3. プロセスを整えオペレーションを開始する

それぞれ詳しく見てみます。

1.ストラテジーを立てる

新規に間接購買を立ち上げる初期メンバーがは「当面やるべきこと」を深堀してまとめる必要があります。「ストラテジーを立てる」という言い方をすることが多いです。かっこいいですね。

ストラテジーについて下記のことは押さえておきたいですね。

1-a. そのストラテジーは誰に向けたものなのか。

1-b. そのストラテジーにはどんな情報があればいいのか。

1-c. ストラテジーを立てるための情報収集


1-a. そのストラテジーは誰に向けたものなのか。
私見ですが、CFOに向けてストラテジーを描いた方がいいです。

・なぜCFO向けにストラテジーを描くのか(理由1)
間接購買の会社にとっての存在意義を掘り下げると、支出をコントロールすることによってボトムラインをコントロールすることになります。(出費を抑えて利益を上げたい!ってことですね)

ボトムラインを一番コントロールしたいのはCFOのはずなので、CFOにどうやって支出をコントロールするのかを見せておくことが大事です。そういう意味では間接購買は「社内をかき回せるファイナンス部員」的な役割を課せられています。

・なぜCFO向けにストラテジーを描くのか(理由2)
まともにやるべきことをやっていけば、購買とユーザー(購入しているモノ・サービスを使用している部署)の意見が対立することはよくあると思いますが、そのときに購買がCFO(とできればCEOも)と足並みをそろえているという大義名分を得ておくことはとても大切です。

1-b. そのストラテジーにはどんな情報があればいいのか。

ひとつ目は現状把握です。現状の支出の見える化です。
ファイナンス部でカテゴリごとの支出額は見えているはずなので、購買としてはもう少し解像度を上げる必要があります。

具体的には下記を明確にしていきます。
a.どの支出がmust-haveでどの支出がbetter-to-haveか
b.どのカテゴリがサプライヤー変更しやすいか(購入額のわりにサプライヤーの力が弱いか)

ふたつ目は、今後のプロジェクト(キャッシュアウトの予定)をまとめることです。こちらもファイナンスで把握しているかもしれませんが、改めて将来のキャッシュアウトを見える化し、それにどう対処するのかをまとめるのは貴重です。

みっつ目は、それらの現状分析をもとに、どの領域のコスト削減を進めていくか・どう進めるか・どのような時間軸で進めるかをまとめることです。


1-c. ストラテジーを立てるための情報収集
情報源は下記になります。

1. 購買データ
ファイナンスから取れます。購入している物品・サービスのカテゴリ、購入部署の情報が入っていればOKです。

2. 契約書
各部署が持っている・もしくは総務部で一括管理しています。何を購入しているか等を把握します。

3. 購入部署からヒアリング
この物品・サービスがなぜ必要か、なぜこのサプライヤーから買っているか、サプライヤー変更可否などは購入部門からヒアリングする必要があります。ここは一つ目のハードルになる場合があります。購入部署(ユーザー)が購買へ非協力的である可能性があるからです。ユーザーとのコミュニケーションの戦術は次の章で書きます。

4. 既存サプライヤーからのヒアリング
現状購入している物品・サービスの情報、およびサプライマーケットの理解のために既存サプライヤーからの情報収集は非常に大切になります。
ただしこちらもユーザーが非協力的な場合(例えば連絡先の情報を共有してくれない等)があります。
こちらについてもユーザーとのコミュニケーションの戦術が大切になってきます。


2. ユーザー部署とのコミュニケーション

ユーザー部署の協力を取り付けるのは間接購買部を立ち上げる人の大きなミッションの一つになります。まずはユーザー部署の思っていそうなことを下記に挙げてみます。

・サプライヤーは自分たちで決める (購買が決めるとは露にも思ってない)
・購買を入れると工数が増える
・コストカッターが品質や自分たちのニーズを無視してサプライヤーを決めていくのは阻止しなければならない
・面倒なアドミン作業はすべて購買にやってもらおう
・購買を入れるメリットって何? 購買だからできることってないでしょ?

このようなネガティブな感情を持っている(かもしれない)ユーザー部署を説得して購買部を立ち上げて新しい仕事の枠組みを回すには、下記のポイントを押さえてコミュニケーションしていく必要があります。

2-a. 大義名分
2-b. ロジカルにメリット提供
2-c. 感情面をケア(不安の払しょく)

ひとつひとつ見ていきます。

2-a. 大義名分
ユーザー部門がぐうの音も出ない「間接購買を立ち上げなければいけない理由」のことです。

一つ目はコンプラです。
ユーザー部署とサプライヤーの1対1の関係だとこっそり悪いことができてしまうので、それを防止する仕組みとしての購買間接部門の介入です。
ただ、これだけだと足りないです。コンプラ守るだけなら購買部門を形だけ入れておけばOKで、購買によるサプライヤー選定などの積極的な関与は必要ないからです。

そこで必要になるのが、CFO・CEOのバックアップです。
「会社として」コストのコントロールが必要で、それを購買部門に委託するという形を作れれば大分やりやすくなります。

2-b. ロジカルにメリット提供
上記に挙げた点のひとつ、「購買を入れるメリットって何? 購買だからできることってないでしょ?」に答えるのって難しいです。購買が提供できそうなメリットを挙げてみます。

・競争環境を作ることによるコストコントロール
個人的にこれが一番の購買の専門領域と思っています。まあでもユーザー部署に伝わりづらいですよね。

・交渉力
購買が交渉のプロというのは事実と言えば事実ですが、交渉って「交渉力」によって左右されることはほぼなくて交渉相手との関係性やどれだけ競争環境を作れたかによって決まるので、短期的にはユーザー部署が交渉したほうが成果が出るケースが多いです。競争環境も関係性を作れていない段階で購買が交渉で何かできることは少ないです。

・サプライヤーのマーケットの知識
ユーザー部署のほうが知識があるケースが多いです。少なくとも短期的には新規の購買部は知識で劣ります。

・プロジェクトマネジメント
直接購買の場合、プロジェクトマネジメントの役割を購買が担っているケースは多々あり、そこで購買の存在意義が発揮されるケースがあるのですが、間接購買の場合そういう貢献の仕方は不可能な場合が多いです。間接購買の場合「広く浅く」が基本になってくるので、ひとつのプロジェクトにどっぷり入るのはなかなか難しいためです。
どっぷり入れてもせいぜい2~3個のプロジェクトと思うので、このメリットはどの部署にでも使えるものではないですね。

・購買プロセスの改善
今まで部署ごとにバラバラでやっていた業務を購買に集約することによって全体の工数を減らせるのは会社にとって大きなメリットですが、ユーザーにとっては今までのやり方を変えて購買を一枚噛ませなきゃいけないということで改善どころか手間が増える印象を与えてしまいます。

いろいろ考えたのですが、ユーザー部署がもろ手を挙げて購買部を受け入れるようなメリットってないですよね。マトモな大人だったらしぶしぶ受け入れてくれることが多いとは思いますが。

2-c. 感情面をケア(不安の払しょく)
そこで大事になってくるのが、感情面のケアです。

やるべきことが主に2つあります。

ひとつ目は購買部門のスタンスを明確に説明し、ステレオタイプを壊すことです。壊すべきステレオタイプは「コストカッター」のイメージですね。
ユーザーに不便を強いてコストカットを強行することがコストカッターのイメージかと思いますが、コストを削減することが大切でありゴールのひとつであるのはもちろんであるものの、むやみやたらに進めるのではなく無理なものや変える必要のないものは変えないというスタンスを明確にしましょう。

ふたつ目は責任分担とプロセスの合意です。
変化を起こすとは変化の影響を受ける側は不安になるものですが「次どうなるか」が明確になれば不安はだいぶ払しょくされます。

プロセスを詳細に定義することによって不明確な部分がなくなります。またプロセスを明確にする過程で責任分担も明確になるため「俺の仕事が取られるのでは」というような不安も払しょくされます。

3. プロセスを整えオペレーションを開始する

プロセスの責任範囲を明確にすることは、コミュニケーション面でなく実際のオペレーションでも非常に大切です。

特に「引き受け過ぎない」ことがとても大切です。

間接購買の立ち上げでいきなり間接購買が大量のリソースを得られるわけではない(一人でスタートするケースも多いはず)ので、ユーザー部署が購買に関わるアドミン処理をすべて丸投げしてこようとした場合は何としても阻止しなければいけません。

(そして、「アドミンやるんじゃないんだったらなんで購買部作るんだよ」という不満は多かれ少なかれ出てくるでしょう)

成熟した企業や大企業でも多いのは、間接購買が日々の承認やら発注やらに忙殺されて戦略的・本質的な仕事をできないまま日々が過ぎることです。

そんな風にならない仕組みを最初から仕込んでおく必要があります。


あとはプロセスが複雑になりすぎないよう気を付ける必要があります。購買がプロセスに介入することで多かれ少なかれユーザー側の手間が増えるので、不必要な手間を押し付けるプロセスはできるだけ避けたいものですね。


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つらつらと書いてきて気づいたのですが、これ別に間接購買部を立ち上げるときだけでなく、悪い状態の間接購買部の改善を試みるときも同じアプローチですね。

こういうことって忘れやすいのでエクセルでチェックリストを作成して仕事するのもいいかもしれませんね。

以上です。