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雨降ってジ・エンド

 今回の文章はES書いてる時にササーと記憶を辿って思いつくままに書いたやつだから、文体がいつもと違うしなんか薄いけど、気にしないでください。
 中学時代、各学年200人近くの生徒数の中で10番以内の成績を取り、素行も良くも悪くもなく、サッカーのクラブチームに入っていたため部活動にも所属していなかった。など様々な理由から、普段学校生活で怒られる機会はほとんどなかった。そんな私が唯一大きく指導されたことが一度だけあった。それは二年、いわゆる中2の修学旅行に遡る。が、その前に説明しておくべきことがある。
 今でこそ小学生にも広く普及されている(という噂の)携帯電話だが、当時の田舎町では学年のおおよその生徒は携帯電話を持っておらず、持っているのはほんの一部のお金持ちかつ心配性の親を持つ、いわゆるいいとこの子か、イケてるギャルたちくらいなものだった。今思えばなぜ中学のころ田舎のギャルは携帯を持ってたのか。それはともかく、例に漏れず私も携帯電話を持っていなかった。が、「パズル&ドラゴンズ」のリリースなどによる空前の携帯アプリブームにより飛躍的に普及したiPod touchなるものは持っていた。しかし、ロードを必要とするオンラインアプリやメールなどはWi-Fi環境下でしか使用できないため、帰宅部だった私は学校が終わると一目散に家に帰り、パズドラをやり込んだ。その頃、私がもう1つハマっていた、というか夢中になっていたのが、何を隠そう、学校の“イケてるギャル”とのメールだった。健全な思春期中学生男子にとってこれは日々の疲れやストレスを癒すご褒美と言わざるを得ない、というのは言わずもがなである。
 先に述べたほんのわずか情報から推測される私のイメージは成績優秀、真面目、とかそんなものだと思うが、私はサッカーをしていた。そして私は長距離走は速かった。小学校時代は足が速いだけでモテるというのはいかにも真実で、この場合多くの人間は短距離走をイメージすると思うが、私が速いのは長距離走だ。小中学時代は100mや50mはクラスの平均タイムに限りなく近かった。おそらく近似値を取っていたと思う。(近似値がなにかはよく知らないが。)そんな私がいかにして、周囲の人たちに短距離も速いと思わせたのか、だが、当時は本当に意味が分からなかったがなぜか、鬼ごっこや普段の遊びやサッカーの試合中自分の足が遅く感じる場面はほとんどなかった上に、むしろ自分でも速いと実感することが多々あった。足の遅さがバレることはなかった。これは高校に進学しサッカー部に入り、30m走(10m、20m地点でのタイムも測定する)を行い判明したことであるが、私は短距離走の平均的なタイムからは想像できないタイムで10mを素早く走ることが出来たのだ。足が遅いのが恥ずかしかったため、体育のタイム測定で本気で走ったことはなかったが、その超短距離における俊敏性と長距離走でのただ単純な根性パワーで私は足が速いというイメージを獲得することが出来たのである。そんな小学校時代のなごりで中2の私は“イケてるギャル”とメールすることが出来たわけである。
 説明があまりにも長引いたが、ついに修学旅行での話である。学校の決まりにより学生は携帯電話含む電子機器の一切の持ち込みは禁止。だが人生で一度の中学修学旅行。一端の男なら修学旅行くらいは悪いことをしようじゃあないか。ということで、思いつく限りの極悪を企んだ(Wiiでスマブラ、iPod touchの持ち込み)。私の家にはWiiもスマブラもあったので、スーツケースをパンパンにしていざその日を迎えた。旅行先は東京か京都大阪だったと思うが、まったく思い出せない。当時中学生の私にとってどこに行って何を見るだ、どこで遊ぶだなどは全く重要ではなく、夜の友達と過ごす時間や移動時間がかけがえのない時間なのだ。“バスじゃモロ最後部な奴ら”だった私は“信用しても大丈夫な奴ら”と一番後ろの席でiPod touchを出し合いダウンロードしてきたエロ動画を見てはしゃいだり、別にそんなに聴きたいわけでもない音楽をイヤホンを共有して隠れて聞いたりした。その後、色々観光したんだろうがすべて忘れた。そして夜、iPod touchを取り出し、メールを確認。しようとするがWi-Fiに接続されていないことを知る。読み込めない。ここだけの話、もう時効というか恥ずかしい賞味期限のようなものが切れたので言いますが、Wi-Fiの仕組みを全く理解していなかった私は自宅に置いてあったモバイルタイプでもなんでもないただ普通の自宅用の無線LANルーターをリュックに忍ばせて持って行っていた。幸い誰かに持って来たことがバレる前にその異変に気付いたため難を逃れたが、ルーターは目の前に存在するのにWi-Fi環境がないことは依然変わらずだった。恐る恐る忍び足でロビーにWi-Fiを聞きに行くもその宿泊先にはWi-Fi設備は備わっていなく、“イケてるギャル”に連絡できないぞ、どうしたものかと頭を抱えていた頃、風のうわさで隣のクラスの男がポケットWi-Fiなるものを持って来ているということを聞き、なんとかWi-Fiを接続することに成功した。本当に運が良かった。彼はなぜか固定用Wi-Fiのルーターを持って来たバカな私と違って、モバイルWi-Fiルーターを持って来ていたのだ。用意周到な男め。それはともかく、その晩眠りに落ちるまで、少し離れた棟にある女子部屋にいる“イケてるギャル”と連絡を取った。おそらくいい夢を見たと思う。同部屋の友達が私のいびきに不満を打ち明けるほどぐっすり寝ていたらしい。
 問題は次の日の朝に起きた。朝食のためクラスごとに集合する時間になってもすやすや寝ていた私の部屋の生徒を起こすために来た先生が私のよだれまみれになった枕元のそばで私が握りしめながら寝ていたiPod touchを見つけ没収した。かなり怒った態度だったと思う。ただその時は取り上げるに留め、いつ怒られるんだろうという恐怖を抱きながらとうとう最終日になった。帰りの新幹線だったか特急列車だったかは定かではないが、発車してすぐに呼び出され、とんでもない強面の先生(に見えた)にトイレなどがあるデッキの部分に呼び出された彼は私のiPod touchをポケットから取り出し、「これでなにをしてたんだ?」「他にこういうことをしていた奴を教えろ」などと詰め寄ってきた。だが、当時クローズZEROというヤンキー漫画原作の映画に大きく感銘を受けていた思春期真っ盛りの中学生男子であった私は、ものすごく怖かったが絶対に言わなかった。その後彼は、絶対に喋らない私を脅すようにパスコードを解かせメールを自ら確認した。そのとき、申し訳ない気持ちになったが先生はなぜかやれやれという顔をして、私に席に戻るよう促した。やがて学校につくと、母親が呼び出されていて、一緒に先生の指導を聞いた。おそらくなぜこういうことをしてはダメかとかそういう話だったと思うが、まったく頭に響かないような内容だった。そのあと母親抜きで先生と話したとき、私がメールをしていた“イケてるギャル”も実は他の先生に携帯の持ち込みがバレていて、彼女はすぐに誰と連絡をとっていたか吐いたということを聞き、14,5年しか生きてはいなかったがそれまでの人生で一番やるせない気持ちになった(記憶がある)。もしかしたら私がギャルに関して拒否反応を示すようになったのはこの一件からなのかもしれない。
 学校からの帰り道は母の車に乗って帰った。母はこういうとき、私を責めない。教育上それが良いのか悪いのかは分からないが、おそらく母もなにが悪くて呼び出されたのかわかっていないだろう。それどころか、私とともに先生に深く頭を下げたあとで車に乗ると、こどものような笑顔で開口一番、「なんでWi-Fiのルーター持って行ったの?」と聞いてきたのを覚えている。私は耳を真っ赤にしながら大笑いした。

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