「あの出来事」を観劇して

読み進める前に佐賀の皆さんへ

この記事を読むのが辛い人もいると思います。
でも、どうしてもこの事件の事は風化させてはダメだと思ったから書きます。


今日は新国立劇場で11/13日から幕があいた
「あの出来事」を観劇した。

この舞台を知ったきっかけは事務所の先輩
小久保寿人さんが出演されると聞いたからだ。
しかも!南果歩さんと2人芝居。
そんな事もあり数ヶ月も前から楽しみにしていた。

南果歩さんはクレアという銃乱射事件の被害女性を演じ、先輩の小久保さんは銃乱射事件を起こした犯人を含めて1人11役を演じた。
素晴らしく良かった。
演技に関して語りたいと思う前に観劇し終わった今、私は佐賀のある事件を思い出す。

西鉄バスジャック事件

今から19年前の2000年に起こった事件だ。
西鉄バスわかくす号は佐賀市内に住んでいる人なら必ずと言っていいほど見た事があるバスだ。
事件当日は忘れもしない。
自分が育った町を通るバスがジャックされた。
小学4年生にとっては衝撃だった。
バスの中に同じ年代の女の子も乗っている。
当時17歳の少年が起こした事件だった。
佐賀から高速を使って福岡天神まで行くはずのバスがいつもと違う動きをしている。
テレビ局もこぞって生中継をしていた。
佐賀から広島の小谷サービスエリアまでの距離を走ったバス。
ニュースでは突入映像も流れていた気がする。
当時はいろいろな噂が飛び交った。

Wikipediaでは死亡者1名、負傷者2人とあるが
どれだけの人々が悲しんだことだろう。
現に私は今、この事件を思い出し内臓が飛び出しそうだ。
当時17歳の少年に何があったのだろう?

私は17歳の頃、わかくす号を使って通学していた。
高校3年間、わかくす号から見える景色を見てぽけーっとしていた。
当時の私はすっかりバスジャックのことなんて忘れていた。
あんな衝撃的な事だったのになんで?と今なら思う。

彼はどんな気持ちで乗ったんだろう?
あの景色をどう見たんだろう。
何が彼をそこまで掻き立ててしまったのだろう。
孤独がそうさせるのか?
なぜ孤独になってしまう家族、人がいるのだろう…
考え出したらキリがない。

だけど私は被害者でも被害者遺族、家族でもない。

このやるせなさの正体はなんだ?
この悲しみは?なんなんだ。

キレる17歳

最近知った言葉で観劇前に知った言葉だ。
1982年〜1986年に生まれた人たちが起こす事件が多かった為、こういうワードが出来たそうだ。
調べてみると特に1982〜83年の世代を指す言葉とあった。

・豊川市主婦殺人事件
・西鉄バスジャック事件
・岡山金属バット母親殺害事件
・山口母親殺害事件
犯人は5年後に大阪姉妹強姦殺害事件を起こす。
・大分一家6人殺傷事件
・歌舞伎町ビデオ店爆破事件

この年代の中で起った有名な事件として
酒鬼薔薇事件もある。

私はなんとなくだがこの事件をほぼ知っていた。

他所の国の話

海外の銃乱射事件をニュースで知って悲しむこともある。
どうして?なんで?同じ人間なのにどうして?
こんな言葉がぐるぐるする。

私はどこかで日本は大丈夫だと思っているのかもしれない。
現にこの作品を観るまでバスジャックの事はすっかり忘れていた。
想像力が足りなかったのだろう。
他所の国で起こったからこそ、日本でも充分に起こり得る事件なんだ。

何が出来るのか

たくさんの人たちが事件を起こそうと思って産まれてくるわけじゃない。
生まれ育った環境がそうさせるんだと私は思う。

個人的に出来ることとして
・人と話すときは目を見て話す
・最後まで話を聞く努力をする
・身近な人をまず大事にする、感謝する
・相手の話を聞く時に一緒に想像する

これだけじゃないけど…
現実的にこれらは出来るだろうと思った。
せめて私と身近で話すことがある人には孤独を感じて欲しくないなと思った。

芝居の底力

私は今日、「あの出来事」を観劇しただけだ。
なのにここまで心が動かされてしまった。
私に出来る事はないのか?と探した。
ここまで突き動かすことができる芝居の底力を
南果歩さんと小久保寿人さんの舞台で生きている姿を見て考えずにはいられなかった。
ここまで突き動かすのがプロなのだ。

芝居の役割を体感した1日だった。

全く、贅沢な人生だ。

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