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摂氏零度。寒かったよ、アルル!

『地球の歩き方』的アルル


「焼けつくような太陽にふきすさぶミストラル、華やかな民族衣装をまとった女と、カマルグ産の白い馬に乗って湿原を疾走する男たち。そんなプロヴァンスの魅力が激しくぶつかり合い、旅人の心を捉えて離さない。ゴッホが描いた『夜のカフェテラス』のあるフォーラム広場で、夕暮れのひとときを過ごしてみるといい。夜に場所を譲るのを拒否するかのような強烈な太陽がついに沈むと、“カフェ・ヴァン・ゴッグ”の黄色い壁が闇のなかの一条の光のように浮かび上がる。北国生まれのゴッホは、光も影も狂おしいまでの力強さで迫ってくるこの町の魅力に出合い、2年の滞在期間中に300点にも及ぶ作品を完成させた。」(『地球の歩き方 2018~19 南仏 プロヴァンス コート・ダジュール&モナコ』86ページより引用)

確か、1995年に買った『歩き方』の西ヨーロッパ編にも、アルル紹介のページには強烈な太陽のことが書いてあった。「もう11月だというのに、なんだこの太陽は。この光がアルルの正体だったのか」みたいな。探したが、その本は手元になかった。

そんな影響のもと、アルルへのイメージを作り出し、太陽の日差しにうつむきながら、とぼとぼと歩く自分をイメージし、アルルはゴッホの絵にある畑の中にある小さな村だと勝手に思い込んでいた。

以来、アルルという村へのあこがれとなっていまに至っている。そんなふうなアルルに出合いたい、と。

しかし、わたしが訪れたアルルは、寒かった。

訪れたのは2019年12月31日。街はよく冷えていた。

アヴィニヨンを朝8時3分に発つ汽車でアルルへ向かった。
ローヌ川の川霧だろうか。前の日と同じように霧が立ちこめている。アヴィニヨンからアルルへはローヌ川沿いを南に20分ほど行く。途中、一面、霧の田園風景から太陽が昇ってくるのが見えた。12月31日の日の出だ。


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到着が早すぎた。冬に朝早すぎるアルルは寒くて寂しすぎる。

牛乳配達か清掃のおじさん、足早に駅に向かって通勤する1人か2人しか出くわさない。街角にあった温度計はなんと摂氏「0度」を表示しているではないか。風はまったくないが、体が芯からぎりぎりと冷えてくる。

前日に訪れたプロヴァンスの村が日中おだやか(摂氏15度)だったので、コートではなくセーターの上にウインドブレーカーを羽織っただけで着てしまった。が、石の建物に囲まれたアルルの中世のまちなかは冷え切っていた。

午前10時ごろはぼちぼち、朝市のようなところにだけ人が集まっている。地元の人のようだ。冬のこの時期の観光客はお昼前から午後2時半ごろまでがピークなのだろう。2時半を過ぎると先ほどの混雑はウソのように静まりかえり、もとの寂しく寒い街に戻ってしまう。

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